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「何もない」はありえない。相手への期待から生まれる、本当に推せるコンテンツづくり #羅針盤のつくりかた

誰もが創作をはじめることができ、「クリエイター」となりうる時代。

SNSの普及が進み、かつてに比べ「コンテンツ」と呼ばれるものが増えてきました。コンテンツと一口に言っても、音声、文章、動画…、とかたちはさまざま。

私たちユーザーは、PCやスマートフォンをはじめとする機器を使い、クリックやタップをするだけで簡単にコンテンツを楽しむことができます。

中には、ユーザーを想って熟考された、受け取ることでプラスになる上質なものもあれば、そうではないものも多くあります。内容よりもPV勝負、強い収益化を狙ったような制作者の意向が強すぎるもの。そういったものを受け取った際は、違和感を抱くこともあります。

誰もが「クリエイター」になれる時代だからこそ考えたい、「本質的なコンテンツ」とは何なのか。

これまでに、幅広くコンテンツづくりに関わり、愛してこられた方がいます。現在は、フリーランスのSNSコンサルタントなどとして活躍されている、みずのけいすけさん。2021年には、#こたつラジオというTwitterのスペース機能を使った音声コンテンツを始め、すでに100回を越えています。

<Profile>
みずの けいすけ
愛知県瀬戸市出身。フリーランスのSNSコンサルタント。新卒で入社した広告会社から、マイナビ勤務を10年経て、note株式会社(旧:株式会社ピースオブケイク)に3年勤める。2021年にフリーランスとして活動を開始。のべ500社以上の情報発信をサポートしてきた経験を活かし、法人のメディア運用や、SNSの活用法をアドバイスする。平日朝8時から、Twitterスペースを使用した、雑談がメインの音声コンテンツ #こたつラジオを配信。

ラブソルの広報・マーケティング分野を強化すべく、よいコンテンツとは何か? と考える、ラブソル大学生メンバーのほのかがお話を伺いました。

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環境は変えながらも、変わらぬWEBコンテンツへの想いは

ーーみずのさんは現在、フリーランスとしてnoteのコンサルタントをされていますよね。フリーランスになるまでのみずのさんがどんなことをされてきたか、とっても気になります!

これまでに会社勤めは3社、全部で15年になります。新卒で入った広告会社では、企画の仕事をしていました。それからマイナビに10年、note株式会社に3年勤めて、2021年の春にフリーランスになりました。

マイナビで働いていた頃に関わっていたのはWEBコンテンツ。この頃はDeNAさんの「MERY」とか、キュレーションメディアが盛り上がった激動の時代でした。

ーー3社経験されてこられたのですね!転職する際の軸や、企業選びの決め手は何でしたか?

明確にありました。
僕は、広告ではないWEBコンテンツづくりがしたかった。大企業のメディアとなると、PV勝負みたいなところもあります。広告で稼ぐことでメディアが成り立っているから。

でも、それだと広告主の意向が色濃く出てしまうことになるし、広告表示のために、ページビューを増やすことがよしとされてしまう。読み手のことを一番に考えて、ものをつくるのは難しい環境なんです。そこで、広告に縛られずWEBコンテンツに関われる場所はないかな? と考えました。

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僕、「ほぼ日」さんが好きなんですよね

ほぼ日さんは、メディア広告じゃなくてECで成り立っています。例えばほぼ日手帳やその周辺の文房具などを販売して。自分たちで何が良いか、何を公開するかを決めて、収益にしていく。広告に左右されるのではなく、独立して、自分たちがやりたいことができるっていいなと、ずっと憧れていました。

憧れてはいたけれど、僕にはできないと思っていたんです。

でも、転職活動をしていたとき、その当時の同僚のご家族がnote(当時:ピースオブケイク)で働いていると聞いて。noteって、広告バナーが出てこないし、何度も「次ページ」をタップすることもない。そもそもPV勝負じゃないから。クリエイターや読み手に寄り添っていて、「本当に伝えたいことをつくれる」noteで働きたいと思いました。

そこでWantedlyからダメもとでポチっとエントリーしてみたら、入社することになりました。

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ーーすごい! 転職を重ねながらも、やりたいことは明確に決まっていたのですね。

そうですね。実際は何度か、転職活動は失敗しているのですが。noteは、たまたまタイミングが良くてご縁があったのだと思いますね。

ーー私は、今はまだ大学生で、就職活動も未経験です。情報が溢れすぎている時代で、逆にどう働く場所を選んでいったらいいのか、大変だなと思っています。みずのさんが考える、就職活動で大切なことがあれば、教えてください。

そうだなあ、学生のうちに大人とたくさん話しておくことですかね。学生から見て、仕事のどこにやりがいがあるとか、しんどいとかって分からないじゃないですか。だから、大人と雑談をするって、実は大切だと思います。

大人のツボを知っていると、面接やプレゼンで話をするのも、少し楽になるんじゃないかな。学生のうちに、大人とふつうの話をする経験って、意識して作らないと、なかなかないじゃないですか。

ーー確かに…!

マイナビで働いている頃、就活シーズンに学生さんとの面談で、「親でも、誰でもいいから大人にインタビューしてごらん」と伝えていました。

会社のホームページやオフィスが綺麗だとか、そういうものももちろん大事だと思います。でも、どこにやりがいがあるとか、何がしんどいとか、会社の中で働いている人が何を考えているかって、実はあまり分からない。そういうのを想像できるようにするためにも、いろいろな人と話をするって大切だと思いますね。

ーー大人との雑談。確かに私もラブソルで働くことで、仕事に対するイメージが変わりました。仕事って義務感でやるものというか、しんどいものと思っていたら、ラブソルメンバーは楽しそうに働いていて。

そうそう。話をすれば、どんどん質問も出てきますからね。

その方がなぜその会社に入ったのかを聞くのもいいけれど、もっとやわらかいことを聞いたらいいと思う。働いていてよかったと思う瞬間とか、そういうのを集めて欲しいですよね。大人って意外としょうもないことで悩んでいるんだとか知れるし(笑)。

自分がやりたい仕事についての解像度を上げていくのはもちろんだけど、一見、自分とは遠いと思う職に就いている人の話を聞いてみるのもいいと思います。悩みややりがいを集めておくと、いい就職活動ができると思いますね。

ーーなるほど! みずのさん自身は、学生時代どのような就職活動をされていましたか?

僕の学生時代の就職活動に点数をつけるとしたら、100点満点で、5点くらいかな…。

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ーー5点!? 低すぎませんか…?

いやぁ、ひどかったですね(笑)。僕は、どうしてもコピーライターになりたくて。

コピーライターの糸井重里さんに憧れていたので、広告会社の制作職ばかり受けていました。でも、全くだめで。秋採用も終わって、4年生が終わりかけの12月下旬にやっと内定をいただきました。とにかく視野が狭かったですね。

今振り返ってみると、もっと広い職種を受けておけばよかったなと思います。

ーーどうしてもコピーライターになりたいからと、ギリギリまで。なかなかできないと思います。

周りの人はハラハラしていたと思います(笑)。当時、就活イベントとかに行きたくなくて。今考えてみると、行けばよかったと思いますね。行って、自分の目で見て考えたらよかったなと。

ーー人から聞くのと、自分の目で会社を見るのでは違いますよね。新卒で入社してからは具体的にどのようなお仕事をされていましたか?

制作部門に入れていただいたので、ラジオCMの文章を書いたり、企業のキャンペーンやイベントをしたり。大きな案件を一つ受けるというよりは、複数の業種の案件を受け持っていましたね。

社会人1、2年目の頃は、企画書を書いて、徹夜して、ダメ出しされて…。思い出すと涙が出てくる、そんな時期でしたね。大変だった。

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ーー広告関係のお仕事は、業務が多岐にわたっているイメージがあります。

そうですね。出来るまでやる、そんな感じ。当時は、時間通りに仕上げたり、資料を作ったりするのがどうすればうまくいくのかが本当に分からなかった。5時間打ち込めばいいという仕事ではないから、難しいところですよね。でも、自分が関わったものが世に出るというのは、面白かったですね。

ーーわかります。クリエイティブに携わっていると、決まった時間働けば完成するというわけではなかったりしますよね。世に出る嬉しさもわかります!

自己肯定感高まる切り返し「よきよき」。”聞き出す力”の源

ーーみずのさんは企画の立て方とか、コンテンツの関わり方をどこで学んできましたか?

実際にやりながら…かな。これじゃだめだって言われながらですね。本を読んだりもしましたが、やっぱり実際にやってみないと分からなくて。人の仕事も観察しました。2、3年目くらいまで本当に生意気で、使いにくい、だめな新人だったと思います。当時の自分が後輩だったら、いやです(笑)。

ーー生意気な新人…! お話を伺っていると、みずのさんの話し方はやわらかく、穏やかなので、尖っていたイメージはなかったです。

そうですよね(笑)。まあ、誰にでもそういう時代があると思うなあ。

ーー「こたつラジオ」を聞いていると、穏やかな口調に加えて、「よきよき」とか「いいね」などのポジティブなことばを口にされている気がします。

言う言う。

ーーもしかしたら、決して滑り出しがよかったとは言えない社会人のスタートだったかもしれないのですが、こうしてポジティブな言葉をかけられるようになったのは、何かきっかけが?

これはね、昔からそうなんですよね。その人の中にあるもの、話を打ち明けてもらえることがすごく嬉しくて。信頼してくれている証拠というか。だから、何を話してくれても、まずは「いいね」って思う

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あと、ほぼ日さんのコンテンツを学ぶ講座、「ほぼ日の塾」という取り組みに参加したことがあって。そこで学んだことに、「アイデアを受け止めることも大切」という考えがありました。

アイデアを出した人は褒められるけれど、実はそれを受けとめたり、拍手をしたり、相槌を打ったりする人の存在も大切。例えば、会議で誰かがすごくいいアイデアを出すとするじゃないですか。そこに「それ面白いね」とか、「素晴らしいね」って受けとめる側もいることで、成立するというか。受けとめる側もクリエティブに関わっているのだ、ということを教えてもらいました。受けとめてもらうことで話が進むし、認めてもらうことって大事なんだなって。

ーー確かに、一生懸命出したアイデアを、頭ごなしに否定されたら辛いですよね。まずは受けとめてよ! と思っちゃいます。

いちど受けとめてもらえたら、アイデアを出す側もどんどん出せますからね。アイデアを出すことを止めない、遮らないというか会話を止めないほうがいいことがあった、という経験を多くしてきたからかな。

ーー私も「こたつラジオ」に出演したとき、みずのさんに「よきよき」と言われると嬉しくて、どんどん話せました! 「こたつラジオ」では、みずのさんとの面識の有無は関係なしに、ゲストの話を深くまで引き出されていますよね。コツはありますか?

相手に期待することかな。その人の中には、絶対に何か面白いものが入っていると思っています焦っても出てこないから、じっくり信じて待つ。相手に安心して話してもらえたら、必ず出てきますからね。

ーー期待する、信じて待つ…。すごく素敵な考え方ですね。

昔、僕が対話する様子を観察して、まとめてくれた人がいて。その人によると、僕は「アイメッセージ」をよく使っているそうです

ーー「アイメッセージ」。

主語を自分にして、肯定する。「私は」こう思う、と伝えることですね。

誰かの発言に対して、「自分は」こう思ったと伝える。良い悪いのジャッジをするのではなく、「私はこう受け止めました」と。「個人的には」とか「私は」とつけることで、発言に対して誠実さが増します

決して、ざっくりとした感想を言うことが悪いわけじゃないんだけど、主語をきちんとすると、伝わりやすくなるんですよ。相手は見透かされているとか、刺さっていないとか、わかっちゃいますからね。自分の発言は自分で責任をとる、ということですね。

ーー自分の発言は自分で責任をとる、なるほど!

やっぱり嘘をつくとバレる。相手の話を受け止めず、流しちゃっているのって、バレるからね。

「誰でも創作をはじめ、続ける」ために

ーーnoteでは、文章コンテンツに長く関わってきたと思います。そのご経験の中で、フリーになられてから「こたつラジオ」という音声メディアを始められたのはなぜですか?

生活の中に雑談が足りていなかったからですね。会社をやめて、フリーランスになった途端、同僚や仲間がいなくなる。そうすると、必然的に人と喋る時間が減ってしまって。だから、ラジオというきっかけを作って、人を誘って、話をしようと思いました。「ちょっと電話させてください」よりも、「ラジオやっているので出てくれませんか」の方が誘いやすいですしね。

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ーー確かに!

オファーがくるってちょっと嬉しいですよね。あとは、断りやすくしたいのもあったかな。Zoomしましょうよと言われたら、良い話なのか、悪い話なのか分からない。ある程度関係性ができているならいいけれど、初対面の人には勇気がいりますよね。ラジオは公開されているので、すくなくとも悪い話ではないと思ってもらえる。

ーーなるほど! 「こたつラジオ」は、先日100回を超えましたね。平日、毎日ほぼ同じ時間からやられていますが、継続するのって大変な気がします。何かコツはありますか?

コツかあ…。別の趣味に置き換えると、例えば、フットサルが楽しくて続けられているんだとしたら、通いやすいところにコートがあった、という感じですかね。さらに、ちょうど誰かが道具まで貸してくれて、と条件が揃っていたような。つまり、運が良かったんですよ。

別の言い方でいえば、始めるコスト、続けるコストってあると思います。でも、僕は音声で発信することに対して、何のコストもかからなかった。喋るのが得意で、楽しめたから。でもそれは人それぞれ。音声より文章の方が低コストだという人も、もちろんいます。その人に合った媒体がありますよね。

ーーなるほど…。人によって続けられる媒体が違うのは、わかる気がします。

うん、自分に合った発信媒体ってあります。あと、継続しやすくするためには、どこで発信していくかを整理するとよくて。約束や、宣言をしたらできる人もいる。

ーーラブソルでも、公式noteをメンバー交代で継続して書いているのですが、約束というのは大きい気がします。個人のnoteだと続かないけれど、ラブソルという会社で、メンバーと約束しているから私も継続できているというか。

noteは、なんとなく書いていると続かないことが多いんですよ。頻度、ターゲット、内容を最初に宣言してしまうのが良いかもしれない。書き続けていくと、だんだん方向性がブレちゃうことってあるので。

他にも、ターゲットだったら新規向けなのか、既にいるファン向けなのか。それによって書いていく内容も変わります。例えば、本屋さんだったらどこのコーナーに置くかを考えるのはすごく大事で。専門書なのか、雑誌の平積みなのか。会社やチームなら、メディアを始める時に社内で深く話し合っているはずですから、それをそのまま出せばいい。

ーーなるほど…! ラブソルの公式noteにも生かせそうなことです。いつもどんな内容にするか、社内でもミーティングになるので…。

そうなんだ! そういうプロセスも出していっていいと思いますよ。書き手がどんなことを考えているかって、意外とバレていないので。悩んでいること、困っていることを伝える。そうすることで共感できますからね。温度とか、表情を出してもらえると、読み手としては推しやすくなります(笑)

フリーランスのSNSコンサルタントとして。まずは、「売れたい」

ーーフリーランスになって、もうすぐ1年になりますね。会社員のときと比べて、働き方などは変わりましたか?

今は、フリーランスは合っているなと感じます。これからはどうなるか分からないですね。僕、もっと売れたいんですよね(笑)。もっと仕事をしたい。そうなると、一人でやるのには限界があるじゃないですか。

ーーチームでやるのと一人でやるのでは、依頼を受けることができる規模も違いますよね。

そうそう。フリーランスは一人でできる自由さもあれば、限界もあるなと。当面はいただいているお仕事をがんばりますが。もっと売れたい。芸人みたいだけど、売れたい(笑)。

ーーみずのさんは、何で売れたいですか?

オウンドメディア、コミュニティ、イベント企画・運用、モデレーター、コンサル…、なんでも。全部やってきたから。

今、一番面白いと感じているのはnoteを「書く」こと。オウンドメディアの編集に関われたら良いなと思っています。これまでは読む側だったけど、編集や執筆をするのが今は面白い。企業の中って、面白いことがたくさんありますからね。

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ーー社内の人間が気づけない良さってありますよね。みずのさんのような立場の人がいてくれたら、「こういうところ、よきだよ」って教えてくれそうな気がします。

中間の立ち位置っていいなと思っています。中の人だけど、外部の人間。その境界線に編集者がいるといいですよね。中の人たちが気づいていない良さを、「なんでここ書かないんですか? 」って聞くのも楽しい。読者は新鮮に受け取る人の方が多いですから。

ーーみずのさんと一緒に働けたら、楽しそうだなあってわくわくしちゃいました!

嬉しいなあ。チャンスがあれば、ラブソルさんとご一緒したいです。ラブソルさん見ているとね、僕も混ぜて! って思う。入れて入れてって(笑)。自分がどこで役立てるか、どんなことができるか考える時間って、豊かですよね。

取材・執筆・挿絵イラスト:野元 萌乃佳
編集:柴山 由香
バナー制作:小野寺 美穂

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