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『本日は、お日柄もよく』言葉の力を借りて、小さなことでくよくよしなくなった話 @saayoo345

おはようございます。コンテンツ事業部のさよです。

今週はラブソルnoteテーマウィーク!「私を変えた一冊」として、こちらの本をご紹介します。

原田マハさんの小説、『本日は、お日柄もよく』。

出会ったのは今から6年前の2014年でした。

当時、28歳。アパレル業界で働いていた私が、この本を通じてスピーチライターという職業に出会い、漠然とではありますが「言葉の力ってすごいな。こんな仕事をしてみたいな」と思ったきっかけの本です。

<あらすじ>
OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された! 20万部突破の、目頭が熱くなるお仕事小説。(amazonより引用)

この本に心を鷲掴みにされた理由は2つあると思っていて、1つは「伝える内容は同じなのに、言葉の選び方・組み立て方・話し方でこんなにも響き方が違うのか」と衝撃を受けたこと。

そして、この小説に書いてあるたった一節に、当時抱えていた悩みをさーっと溶かしてもらえたことです。

「言葉のプロってめちゃめちゃかっこいい」

一気に読み終えた最初の感想が、これでした。

この小説ではスピーチライターという職業に出会った主人公がその技術に惹かれて弟子入りし、教えを受けていく姿が描かれていくのですが、もう主人公と同じ気持ちで私も学んでいった、くらいの経験でした。

どちらかというともともと口は立つ方で、喋ることは苦手ではないと自覚していた私。しかし、「喋る」と「伝わる」は全く別物なのだな、ともやもやを抱えていた時期に出会えたことが、大きかったと思います。

例えば、仕事のシーン。

当時アパレルで営業をしていた私は、セレクトショップのバイヤーさんに仕入れてもらえるように、自社の服の魅力を日々伝えていかなければいけない立場でした。一生懸命やっているのだけど、なぜだか伝わっていない気がする。

楽しい世間話や正しい商品説明はできるのに、今ひとつ熱が届かない。というか、相手にアクションしてもらえるほどは響いていないなと、もやもや。

例えば、恋愛のシーン。

「なんだか噛み合わない微妙な空気」が流れた時に、なんとか自分の素直な想いを伝えて良い方向に向けようにも、言葉の意味が違う形で相手に伝わってしまうなと、もやもや。(こっちは、まあその恋愛絡みなのでなかなか言葉の力でというわけにはいかないですけども…笑)

それまでの私は、「私の考えをそのまま音にして発すること」が言葉を扱うことだと思っていたので、スピーチライターという仕事を通して「本気で人に想いを伝えたい」場面では、これだけ考え尽くされるべきものなのかと衝撃を受けました。

と、同時に、「かっこいい!」という憧れが、芽生えたんでしょうね。

この本の中に、スピーチの極意 10箇条 なるものが書いてありまして、その中の数点を今でもパク…参考にしています。

もちろん私にはスピーチをする場面なんてほとんどないのですが、「まず聞いてもらう空気」をつくるために大切なことは、日常生活でも活用できたりするんですよね。

「どうせ幸せになるんだから、今は落ち込むだけ落ち込もう」

この本に心を鷲掴みにされた2つ目の理由として、この小説に書いてあるたった一節に、当時抱えていた悩みをさーっと溶かしてもらえたことと書きました。

それが、多くの方から名言だと評されるこの一節です。

困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している

ちょうどこの言葉に出会った時、仕事もプライベートも、なんだか歯車が合わないなとジタバタしていました。

私自身は私史上一番辛くて悲しい想いでいっぱいなのに、世界は何事もないかのように進んでいく。そんな当たり前のことに、生きることへの違和感と嫌悪感でいっぱいになってしまっていた時期。

はっとしました。

なんか、自分だけが不幸な気持ちでいたけれど、そんな自分だって時間が経てば自然と移り変わっていくではないか、と。

この言葉がきっかけで、ぐぬぬ…と息を止めて耐えていた状態から、ふーーっと息を吐けるようになったというか、すごく楽になったんですよね。

「どうせ、大丈夫になるんだから。今は悲しさを飽きるまで感じておこう」と。

まさか、本に書いてある言葉に救われるなんて。これを気に、ちょっとつまづくことがあっても「まあ明後日くらいには元通りだろう」なんて不用意に落ち込まなくなったから、不思議なものです。

「私も、こんな風に言葉を使えるようになりたい」

そんな風に思わせてくれたこの本との出会いから半年後、私はライターになりました。

言葉は技術。高められるもの。

そうと知ったから、その時はまだ何の技術も持っていなかったけど、一歩踏み出せたのかもしれません。

「かっこいい」し「やってみたいな」とは思ったけれども、こんな事になるとは。人生とはわからないですねぇ。

今振り返ると、この本から学んだことはもう一つあって、「自分を信じる」とか、そういうことのような気がしています。

辛いことがあっても、未来の自分は乗り越えられているはずだと信じる。目を逸らすのではなく、どうせ過ぎ去っていくことだから、ちゃんと向き合う。その結果、未来の自分を嫌いにならなくて済む。

すねない自分でいられるようになったことも、この本のおかげかな、なんて思っています。

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ちなみに、この小説のなかでとっても大事なシーンとして描かれている、結婚式でのスピーチシーン。

いつか誰かのスピーチを頼まれたら、この小説の要素をたっぷりパク…参考にして感動するスピーチをしてみたいと密かに願い続けているのですが、今のところまだその出番がありません。(え)

さて、その夢が叶う日はくるのでしょうか。

来るべき日まで、言葉の技術を磨き続けていこうと思っています。

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