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「やりたいことは絞らなくていい」全部に本気で向き合う覚悟、ありますか? #羅針盤のつくりかた

やりたい仕事はたくさんある。
それなのに、一つのことをプロフェッショナルまで極めることこそが「良い働き方」なのだろうか。

ラブソルの大学生メンバーである私ほのかは、時々そんなふうに考えることがあります。

平成29年3月に発表された「働き方改革実行計画」を受けて、複数の本業をもつ「複業」をする人が増えてきました。本業を持った上で、空き時間に別の仕事をする「副業」ではなく、それぞれの仕事を本業として並行する働き方です。

一つのことを極めて仕事とする人には、憧れる。
一方で、それがうまくいかなかったら、「好き」だけでは続けられなくなってしまったら…

できることなら、やりたい仕事を全部やりながら生きてみたい。
そんなふうに「理想の働き方」を考える中で、ある女性にお話を伺いました。

元宝塚歌劇団で、現在は経営者、パフォーマー、振付師、プロデューサーといくつもの顔をもつ貴千 碧さんです。

貴千 碧(たかち・あお)
元宝塚歌劇団 月組男役。ダンスを得意とし、在団時はダンサーとして活躍。現在は経営者、パフォーマー、振付師、プロデューサーとして活動。三和食品三代目代表となり、自身プロデュースの「喜昆布」を製造販売。

複数の仕事を前に、一切妥協せず向き合う貴千さんに、仕事への向き合い方や考え方に迫ります!

他人の尺度ではなく、自分の尺度で動きたい


ーーいつもパワフルに仕事に向き合っていらっしゃる貴千さんに、お話を伺えるのが楽しみです! 貴千さんは宝塚歌劇団を退団されてから、佃煮屋さんをはじめ、いくつか仕事をされていますよね。

わぁ、嬉しいです! 祖父が興した佃煮屋を三代目として受け継ぎました。他にはプロデューサーとしてダンスの振付をしたり、パフォーマーとして舞台に立ったりと、いろいろさせていただいています。

ーー「佃煮屋」と「パフォーマー」と聞くと、全く異なる世界のような気がします…!

実は、すべて繋がっているんです。パフォーマーやプロデューサーとしての私を知ってくれているお客さまが「喜昆布」を知ってくれたり、その逆があったり。違うジャンルが結びついて、お客さまがだんだんと増えていって相乗効果がありますね。それに、幅広く世界を知っている方が面白いし、楽しいじゃないですか。

ーー「楽しい」と思えるのが、貴千さんらしいですよね。逆に、「疲れたな」と思う時もありますか?

ないんですよ! 全く疲れない。もちろん、体力的にキツいなとか、疲れたなと感じることはあります。でも、マインド面において疲れることはないですね。

ーーえぇ! それはすごいですね…。

人から「大変そうだね」と言われることはあります。それは他の人の尺で大変さを測っているだけで、実際はそんなことない。だから、自分に暗示かけるように「疲れた」とか「大変だ」と思うことはやめようと思っています。私、鳳翔 大さん(元宝塚歌劇団)に「釈迦」って呼ばれているんです(笑)。

ーー釈迦…! 私も、今やっている仕事がどれも楽しくて。ついつい寝る時間を惜しんででも仕事をしたり、本を読んだりしてしまいます。友人からは、「大変でしょ、やめときなよ」と言われることもあって。でも、自分ではそんなに大変じゃないんですよね。

うんうん、大変か大変じゃないかは他人が決めることではないですよね。自分で自分のキャパを知っておいたら、大丈夫じゃないかな

「とにかくがむしゃらに頑張る」は、もうやらない


ーー貴千さんの全ての仕事に対して一切妥協せず、全力で向き合う姿勢に憧れます。お仕事をされる上で、貴千さんがどんなことを考えているのか、気になります!

宝塚歌劇団を退団して、今年で6年目になります。退団して3年は、「とにかく頑張る」マインドでいました。とにかく動こう、ご縁をつくろうと。振り返ってみれば、ほとんど無償の、少し気持ちが乗らない案件も「いいよいいよ、やるよ」と引き受けてきました。でも、それって自分のことを大切にしていないなと気づいたんです。そこから、日常生活も含め、「自分の魂が喜ぶことしかしない」と決めました。

ーー「とにかく頑張ってみる」、すごく分かります。私もよくやってしまうので…。

とにかくがむしゃらに、全てやっていこうとしていたころ、ある方に「ちゃんと数字を出していきなさい。ただ頑張るのは、高校生までだよ。」と言われたんです。本当にその通りで…、例えば「何か食べたい」と思っている人よりも、「うどんが食べたい」と思っている人の方が早くうどんに辿り着けます。それと同じで、「何月何日までに何人集客する」と明確な数字を出している方が、絶対に目標に近づけるんですよね。

ーー目標を立てる時は、明確な数字に。

あとは、正しい方向に向かうことですね。「努力をしたら報われる」と言う人がいますが、正しい方向に努力しないと、無駄になってしまいます。うどんが食べたいのに、一生懸命オムライスを探しても、当然辿り着けない。それなのに、「努力しているから大丈夫」と考えてしまう人はいます。

ーーいつかたどり着く…、みたいな。

そうそう。でも、その「いつか」は来ないです。「正しい方向に向けて努力する」みたいなところを考えられるようになって、宝塚音楽学校の受験生へ指導する際も、「もっとターンをできるようになりたい」と思うなら、どこをどうしたらできるようになるのかという紐解きをノートに書くように伝えるようになりました。その方が確実に目標に近づけますから。

ーーうわぁ、本当にその通りですね。「とにかく頑張る」から、数字を追って正しい方向に努力をするようになって、変化したことはありますか?

私は、ゴールを決めたら辿り着くタイプみたいです。降りる駅が決まれば、乗る電車が分かるみたいな。だから、やりたいことに対してちゃんとゴールを決めて、そこに向けて正しく修行をするようになりましたね。

ーー修行! 確かに、私も目標に辿り着けなかったなということがあったのですが、振り返ってみると、違う方向に努力していたり、ゴールが分かっていなかったり、ということがほとんどですね。

宝塚歌劇団を退団してOGになった子たちも、時々彷徨ってしまうことがあります。宝塚歌劇という箱から外の世界に飛び出した瞬間、「自分のやりたいことってなんだろう」と考えながら、ずっとぐるぐる回っている、みたいな人もいると思います。将来とか人生とか、遠い未来で考えてしまうんですよね。そうじゃなくて、何ヶ月後にこれをしようとか、今年はこれをやろうと、プロセスの途中でいいから終着駅を決める。そうしたら、どの電車に、どの線に乗ればいいのかが分かってくるんじゃないかなと思います。

ーー目標や、やるべきことを明確にする。それも、必ずしも終着駅じゃなくていいんですね。
そうですね。宝塚歌劇団を退団して、やるべきことを的確にやっていかないと通用しない世界に来たと強く感じました。

全部に本気で向き合う覚悟があるなら、やりたいことを絞らなくていい

ーー先ほどお聞きした、「自分の魂が喜ぶことしかしない」という考え、すごく素敵だなあと思いました!

自分が本当にやりたいこと、嬉しいことだけをしようと決めてからは、気づいたら苦手な人がいなくなっていたんですもう、一対一でご飯を食べに行ける間柄の人しか周りにいないんです。自分と考え方が似ている、あるいは近い人って大事ですね。あと、スピード感が同じ人。

ーーラブソルで働いていて、同じスピード感で仕事ができる人って大事だとすごく感じます…!

分かるなぁ…。私から見ても、代表のゆかさんとみかさんの生き方は、憧れなんですよね。オフィスはあるけれど、それ以外の場所でもパソコンを持ってどこでも仕事をする。何かを犠牲にしているような感じはなくて、どれも楽しみながらされていますよね。そんな働き方が目標です。それに、私も旅やラグジュアリーホテルが大好きで。

ーーそうなんですね!

ラグジュアリーホテルは、得られるものが多いんです。訪れている人たちの振る舞いを見られたり、ゆったりとした時間の流れを感じられたり。実は昔、インテリアの仕事をしたいと思ったことがあるくらい、インテリアも大好きで。ラグジュアリーホテルは、私の好きが詰まっている空間なんです。そういう場所で仕事をしたり、時間を過ごしたりするゆかさんやみかさんに近づくためには、どんなマインドでいたらいいんだろうと思っていました。

ーー分かります! 両親に連れて行ってもらうホテルで、同じように感じることがありました。ちなみに、私は今、20代前半なのですが、お仕事が大好きなラブソルのみんなと働いていて、仕事の楽しみ方が分かるようになってきたんです。でも同時に、楽しすぎてやりたい仕事が多く、どれか一つに絞らないといけないのかな? と悩んでいて…。

えぇ! 絞らなくていいんじゃないですか? 大谷選手だって、ピッチャーとバッター、二刀流じゃないですか。何か一つを完全に極めることができていたら「私、これできます」と言えるけれど、そんな人ばかりじゃないですよね。これからは、大谷さんみたいな働き方だと思います。

ーーいろんな仕事を全力でされている貴千さんがおっしゃると、説得力があります。

もちろん、やりたいことが全部中途半端になるんだったら、考えた方がいいかもしれません。一度には難しいと思うので、優先順位をつけてやるとか。この考え方がいいのかは分からないですが…、私はどれも仕事とは思っていないんです。人間って、生きているうちの半分は仕事して、半分は寝ているんです。そう思うと、人生の半分を占める時間の使い方は重要だな、と思っていて。壁にぶつかっても良いから、進んでいきたい。準備をすることは大切だと思うんですが、そこに時間をかけてしまってはもったいない。それなら、やってみながら準備も進めていきたいなと。壁にぶつかっても良いから、進んでいきたいんですよね。

ーー仕事が生活の一部になっているような気がしますね!

そうなんだと思います!  息をするように仕事をしたいなと。

4月22日(土)・23日(日)に宝塚市立文化芸術センターキューブホール内にて、「貴千碧パブリックショー2023 in Takarazuka」が開催されます。

お話するだけで元気がでる貴千さんのパワーを、ぜひもらってください!

<日時>
4/22(土)11:00〜18:00 4/23(日)10:00〜17:00

<場所>
宝塚市立文化芸術センター
キューブホール内にて
兵庫県宝塚市武庫川町7番64号
(手塚治虫記念館横)

<入場無料>

▶︎
貴千碧さん SNS
Twitter / Instagram

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取材・執筆:野元 萌乃佳
編集:柴山 由香
撮影:池田 実加
バナーデザイン:小野寺 美穂


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