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防災気象情報の見直しについて感じたこと

1.はじめに

防災気象情報とは

そもそも防災気象情報という用語をご存じない方がいるかもしれませんね。これは、主に気象庁が発表している予報や情報のうち、自然災害に関するものの総称になります。
大雨注意報とか洪水警報などは、よく耳にしますし、土砂災害警戒情報や記録的短時間大雨情報などもニュースで取り上げられる機会が増えているでしょう。
防災気象情報は、災害発生に結びつく状況を的確に伝え、避難をはじめとする様々な防災行動を支援するために発表されています。

避難情報と警戒レベル

似たような防災に関する情報として、「避難情報」があります。これは、市町村が発信するもので、現在は高齢者等避難と避難指示の2つが運用されています。(過去には避難勧告や避難指示(緊急)などもあり)
さらに、災害発生の危険度と、とるべき行動を住民が直観的に理解できるようにするため、5段階のレベルで示されるのが、警戒レベルになります。避難情報と組み合わせて発表されるようになっています。

警戒レベルごとに住民等がとるべき行動
■レベル1:災害への心構えを高める
■レベル2:自らの避難行動を確認
■レベル3:危険な場所から高齢者等は避難
■レベル4:危険な場所にいる人は全員避難
■レベル5:命の危険 直ちに安全確保!

内閣府防災担当「避難情報に関するガイドライン」より

見直しの経緯

台風が襲来したときなどは、前述の防災気象情報、避難情報、警戒レベルなどの様々な情報が発信され、「情報の数が多すぎる」、「名称が分かりにくい」などの指摘が相次いでいました。そこで国では、2022年に「防災気象情報に関する検討会」を設置し、議論を重ねてきました。
そして、本日(2024年6月18日)、検討の成果として「防災気象情報の体系整理と最適な活用に向けて」という報告書が公表されたのです。

その報告書を一読して感じたことを述べていきたいと思います。

2.報告書の概要

重要部分は次の2点になります。

➀警戒レベル相当情報の体系整理――シンプルでわかりやすい情報体系・名称に整理

これまで防災気象情報は、次の図のとおり、同じ警戒レベルにもかかわらず、河川の水位情報の有無により、「氾濫警戒情報」だったり「洪水警報」だったりと異なった情報が発表され、わかりにくさの一因になっていました。
また、土砂災害についても警戒レベル2に相当する情報がないことや、レベル3では「大雨警報(土砂災害)」、レベル4では「土砂災害警戒情報」といったように、名称が統一されていないことから、状況を理解しにくいと言えるでしょう。

現行の防災気象情報体系

そこで、次のように警戒レベルに合わせた名称に統一することで、分かりにくさを改善すべきと提案しています。

防災気象情報体系の改善案

➁気象情報の体系整理――情報の性質を把握できるよう分類して提供

これまでいくつかの種類の「気象情報」として伝えていた情報は、極端な現象を速報的に伝える情報である「気象防災速報」と、現在及び今後の気象状況等を網羅的に伝える「気象解説情報」に分類して提供すべきと提案されました。

「気象防災速報」として現行の情報を整理する例
「気象解説情報」として現行の情報を整理する例
※何に着目した情報なのかがわかるよう、括弧内にキーワードを付す

このほか、ホームページ等に掲載するコンテンツの活用推進や、防災気象情報を受け取った者が、自ら考え主体的に行動することができる社会の実現を目指し、様々な手法で普及啓発活動を推進することが提案されています。

3.報告書を見て感じたこと

○○危険警報という名称について

注意報・警報の名称と警戒レベルとを整合性を持たせるため、新たに「○○危険警報」という名称が提案されています。
大雨の場合を例にすると、レベル2:大雨注意報→レベル3:大雨警報→レベル4:大雨危険警報→レベル5:大雨特別警報という順に緊急度が高まっていくことになります。
警戒レベルとの整合性は重要な点なので、これまで空白だった部分を埋める新たな情報を考案せざるを得ないのでしょうが、従来の警報が安易に扱われてしまう心配がないでしょうか。上位に新たな警報が組み込まれたことにより、「単なる警報」は、それほど危険ではないと思われてしまうのではないかということです。
これは、特別警報が採用されたときも危惧されたことです。実際に、「特別警報が発せられてから避難を考えればいい」と誤解した人も多数いたようです。
情報の名称を決めるのは難しい作業だと思います。近年は外国からの旅行者などに配慮する必要性も増しているので、外国語訳をどうするかという点も無視できないでしょう。
それならば、むしろ名称にはこだわらず、警戒レベルを主体的に表現した方が分かりやすいのではないでしょうか。

この検討会では、私と同じような意見もあったようです。「将来的に警戒レベルが社会に十分に浸透した際に」という前提で、次のようなものも提案されています。

シンプルな名称案として提案されているもの

私は、現在でも警戒レベルがある程度周知されていると思えるので、この案に移行することに賛成です。

防災気象情報の目的を再確認すべき

防災気象情報は、実際の防災行動につながらなければなりません。
そのためには、今回の見直しのように、情報体系を整理したり分かりやすい名称を考案することは重要でしょう。
しかし、それを受け取る側の努力も不可欠ではないでしょうか。
防災気象情報を受信したとき、現在はどのような状況なのかを理解し、今後どのような事態が予想されるのかを想像できないと、自らの命を守ることは不可能です。
自治体から発せられる避難情報に過度に依存することなく、主体的な防災行動が求められているのではないでしょうか。

また、防災気象情報を伝えるマスメディアも、単なる伝言ではなく、どうすれば住民が理解しやすくなり、適切な防災行動につながるのかを研究していく責務があると思います。

今回の見直しが、情報の発信・伝達・活用に変革をもたらし、被害軽減という実を結ぶよう願ってやみません。


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