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領域と教科、これまでは!?

ここでは、戦後の小学校指導要領に領域(教科外活動)と教科がどのように位置付けられてきたのか見ていく(表1)。現在は、教科外活動は領域と呼ばれているため、ここでは領域と示す。


表1 領域と教科の変遷

1.1947年 学習指導要領 一般編(試案)の制定

児童中心主義・経験主義の時代
小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、音楽、図画工作、家庭、体育、自由研究で編成されている。元来、学習指導要領は、教師のための手引きとして作成されたもので、画一的な教育は意図されていない。ここでは、教育課程を教科課程と呼んでいる。

2.1951年 学習指導要領 第一次改訂

児童中心主義・経験主義の時代
これまで教科課程と規定されていたものが教育課程に変更される。教育課程は、小学校では、教科と教科以外の活動、中学校では、教科と特別教育活動に区分されるようになる。教科の過程だけでなく、教科外の過程の重要性を意識して改定されてる。

3.1958年 学習指導要領 第二次改訂

学問中心主義・系統主義の時代
道徳が新設され、全国一斉学力テスト(1961年)が実施される。
学習指導要領が教育課程の基準として、法的拘束力をもつとともに、文部大臣(当時)が告示するようになる。基礎学力、特に国語との算数が重視され授業時数が増加される。

4.1968年 学習指導要領 第三次改訂

学問中心主義・系統主義の時代
特別活動と学校行事を統合して、特別活動が新設される。
系統主義に拍車がかかり、理数系の教科で、教育内容の現代化が図られる。つめこみ教育の典型と言われる教育課程で、学習についていけない子どもたちを多く生み出すことになる。

5.1977年 学習指導要領 第四次改訂

ゆとり教育の時代
受験戦争の激化が、落ちこぼれ、校内暴力、陰湿ないじめ、不登校などを生じさせ、教育荒廃現象が目立ち始める。高度経済成長期のつめこみ教育の弊害から、教育の機長転換が図られる。能力主義の反省からゆとりある学校生活が目標に掲げられた答申(1976年)が出される。

6.1989年 学習指導要領 第五次改訂

ゆとり教育の時代
幼稚園との連携を意識して、小学校低学年で社会科、理科を廃止して生活科が新設される。新学力観(関心・意欲・態度の育成を重視する学力観)が登場し、個性を生かす教育がクローズアップされる。つめこみ教育の打破が主張され、教科の学習内容をさらに削減した教育課程になる。

7.1998年 学習指導要領 第六次改訂

ゆとり教育の時代
小学校3年生以上に、総合的な学習の時間が設置される。
年間授業を実施する標準週を35週するものの、総授業数の減少により、時間数が35の倍数とならない教科が生まれ、固定時間割が組めなくなる。個性重視の新しい学力観に基づく教育が一層進められることになる。

8.2008年 学習指導要領 第七次改訂

確かな学力重視の時代
小学5、6年生で「外国語活動」が必修化される(2011年:35時間)。
PISA調査(2000年)が各国で話題になり、日本は読解力の低下が問題とされ、学力不安や基礎・基本を定着させることを重視する論説が増えてくる。ゆとりから確かな学力にシフトする中で、歯止め規程の見直し、総合的な学習の時間の時数の減少などが行われた。

9.2017年 学習指導要領 第八次改訂

資質・能力重視の時代
特別の教科道徳(2015年)、小学5、6年生で「外国語」が新設される。
育成すべき資質・能力の三つの柱を踏まえた「カリキュラムデザインのための概念」が図式( 図1)で示される。資質・能力、カリキュラムマネジメント、主体的・対話的で深い学びというキーワードが盛り込まれた。変化する社会の中で、学校が社会と連携・協働する社会に開かれた教育課程が方向付けられた。

図1 カリキュラムデザインのための概念図  

10.参考資料

学習指導要領一般編(試案)
小学校学習指導要領(抄)等


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