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label Xのこれからについて好き勝手言うワークショップで見えてきた、label Xのこれから

Xジェンダー当事者のための会員制自助サークルlabel Xは、2023年2月に設立 10周年記念講演会を開催した。その中で、「label Xのこれからについて好き勝手言うワークショップ」を行った。本記事ではワークショップで出された意見を眺めつつ、label Xの進むべき方向性について考えてみたい。

全体像

ワークショップは6チームに分かれ、それぞれのチームでlabel Xとしてやってみたいことやできたらいいと思うことなどを「好き勝手」に話した。その中で出された様々な意見を大きく以下のように整理してみた。

  1. Xジェンダーとして安心して暮らせるようになりたい

  2. 楽しいことをして人と繋がりたい

  3. Xジェンダーが受け容れられる世の中にしていきたい

以下、ひとつずつ内容を紹介していく。

1.Xジェンダーとして安心して暮らせるようになりたい

情報の集約・発信

まずは情報の集約と発信に関連した意見を紹介したい。これは現状の世の中で種々の生きづらさを抱えたXジェンダー当事者が知恵を出し合い、少しでも生きづらさを解消していきたいという意図と考えられる。

  • 信頼できる情報を集めたデータベース

  • Xジェンダーのお役立ち情報を集約したアプリ

  • Xジェンダーに特化した学会

なお信頼できる情報を集めるという意味合いも含め、label X公式noteでは様々な情報を発信しているので、興味がある方は是非バックナンバーを参照して頂きたい。

居場所作り

次にXジェンダーとしての居場所作りに関連した意見を紹介する。これはXジェンダーであることが全面的に受容されるコミュニティが欲しいという希望を表したもので、label Xの本質的な存在意義でもある。

  • label Xの事務所、地方支部

  • Xジェンダーのシェアハウス

  • ジェンダーレス実験特区(社会実験的共同体)

  • メタバース上でのコミュニティ

現在のlabel XではSNSやDiscordを用いたWeb上のコミュニティが形成されているものの、リアルな拠点が欲しいという意見が目立った。一方でメタバースの世界ではアバターを使うことができるので、より自由に、より自分らしい表現ができ、コミュニティとしての可能性が大いに広がる。

避難場所の確保

Xジェンダーとしての生きづらさに加え、様々な事情で生きていくことが苦しくなる人もいる。そんなときにとにかく逃げ込める場所があってほしいという切実な意見も出された。

  • LINE公式アカウントからの相談受付

  • スクールカウンセラー配置

  • シェルター、駆け込み寺

2023年現在、label Xでは性別違和の悩み相談室を設けており、会員、非会員問わず利用できるので、興味がある方は下記サイトを覗いてみてほしい。

2.楽しいことをして人と繋がりたい

イベント関連の意見は非常に多く出された。一人では勇気が要るようなことでも、集団になることでハードルが低くなることが多い。Xジェンダーのコミュニティの中で、同じような感覚を共有して盛り上がりたいという気持ちは多くの人に共通しているようだ。

  • 集団になることでジェンダーバリアフリーな形で楽しめるイベント     (パーティー、お買い物ツアー、スポーツ大会、サウナ貸し切り等)

  • 声の性別にとらわれないカラオケ大会

  • 海外のノンバイナリー団体との交流

  • label Xの中でのサークル活動

label Xでは様々なジェンダーの人が入り交じりながらも、シンプルに友達としてみんなと一緒に遊ぶということが可能で、これは大変貴重なことであると思う。

label Xとしては現在行っている交流会を継続するとともに、上記のような特色を持ったイベントも少しずつ増やしていきたい。

3.Xジェンダーが受け容れられる世の中にしていきたい

ジェンダーバイアスにとらわれないファッションの発信

ファッションは個人の在り方を時にさりげなく、時に大胆に世の中に発信することができる方法である。ジェンダーバイアスにとらわれない在り方をわかりやすく表現することにより、人々の感覚としてジェンダーの垣根をなくしていくことができると考えられる。

  • Xジェンダーらしい正装を発信するファッションショー

  • YouTubeチャンネルによるファッション発信

  • ジェンダーバイアスにとらわれないアパレルブランド

label Xでは昨年LGBTQ+の希望に対応したオーダーメイドスーツを手掛ける会社への取材を行った。今後も様々な視点で取材や働きかけを行い、ジェンダーバイアスにとらわれないファッションの流行を仕掛けていきたい。

Xジェンダーとして学び、働きやすい社会の実現

個々人の生活という側面では、仕事を持って金銭的に自立することが重要であることは言うまでもない。しかし、Xジェンダーとして企業に就職しようとすると、残念ながら非常に大きなハードルがつきまとう。そのような課題に対する意見も出された。

  • Xジェンダーが働く場づくり

  • Xジェンダー向け支援(研究、留学、就職等)

  • ジェンダーに配慮する意向がある企業への提案

Xジェンダーの認知普及

仲間うちで支え合うだけではなく、やはり最終的にはXジェンダーとして生まれてくる人が、当たり前のようにXジェンダーとして生きていける世の中を目指していきたい。その最初の一歩がXジェンダーという概念を広く知ってもらうことである。

  • Xジェンダーの日制定

  • Xジェンダーのことを伝える媒体(冊子、絵本、CM等)

  • 学校、団体、企業等での講演会

  • バイナリーな性教育を変えていくための文科省への働きかけ

  • Xジェンダーの理解に対する認証制度とコンサルタント

Xジェンダーという言葉が日本で使われ始めてからまだ20年そこそこ、label Xが設立されてからまだ10年である。label X会員でも、多くがXジェンダーという概念に辿り着くまでに紆余曲折を経ていると推察される。このリードタイムを短くすること、また世の中がXジェンダーという概念を受け容れる素地を作ることが急務である。

Xジェンダーを公平に扱ってもらうための公的制度変更

Xジェンダーの認知普及が進むための要が、公的制度での取り扱いである。公的制度にXジェンダーを想定した配慮があってはじめて、Xジェンダーの人権が公的に保障されると言っても過言ではない。

  • 戸籍の性別情報削除

  • 公的書類の性別欄に「X」のオプション追加

  • 現状バイナリーな性同一性障害のガイドライン、特例法の性別変更要件の修正や撤廃

現在の日本の公的制度は男女のバイナリーな概念の上に成り立っており、Xジェンダーの存在は想定されていない。しかし、時代は多様性を認める方向に大きく動いている。Xジェンダーを含めた多様な存在の扱いを公的制度改革の俎上に載せてもらうために、声を上げ続けていきたい。

さいごに

今回のワークショップでは「label Xでこんなことをしたら面白そう」というイメージを言語化した。それにより、現在直面している生きづらさの解消から、Xジェンダーとして当たり前のように生きられる未来の実現に向かっていく大きな流れが見えてきた。ワークショップはlabel Xの将来像を共有する、非常に価値のある取組みになったと思う。

あるべき未来に向かっていくその道筋は、当然簡単なものではない。しかしそのときそのときの「こんなことをしたら面白そう」「やってみたい」「やれるかもしれない」を積み重ねていけば、自ずと向かうべき方向性に向かっていけるような気がする。

全ての原動力は会員ひとりひとりの気持ちである。一人ではとても無理そうなことでも、label Xの中で呼びかければ一緒に動いてくれる人が必ずいるはずである。

label Xはあなたの「こんなことをしてみたい」を待っています!


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本記事はXジェンダーのための会員制コミュニティlabel X(ラベル・エックス)の公式note記事です。

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記事執筆者:やすよ


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