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「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」第3話〜C様宅〜

本日のお客様はC様。

C様は家事代行サービスを利用するのは初めてで、お問い合わせメールにはたくさんのご質問が書かれていました。

疑問点は事前に聞いていただけると、お互いの共通認識ができるので助かります。
すべての質問にお答えして、お見積書をPDF添付して待つこと1週間。

「他のハウスクリーニング会社にも問い合わせて一番対応が良かったので」と、お掃除のご依頼をいただきました。

C様のご希望メニューは、お部屋の片付け+お部屋まわりの簡易クリーニング。
お困りごとは、「18㎡ワンルームにひとり暮らしだけど、物が多くてどこから手をつけていいか分からない」でした。

ひとり暮らし男性のお客様の場合、基本的にパートさんと2名で伺うようにしています。でも、C様ご希望の週末はどうしても他の現場が重なってしまうため、私ひとりで伺うことになりました。

「ピンポーン♪」
インターフォンを押し、ドア前で笑顔で待機すること約50秒。

もう一度「ピンポンピンポーン♪」
ダブル押ししても反応がなく。

「コンコンッ!」
強めにノックをすると、

「ガチャッ」
ようやくドアが開きました。

「すみません、セールスかと思って」

ドアの向こうから現れたC様は、芸能人の誰かに似ている爽やかイケメン。

でも、そのC様の爽やかな笑顔に似合わない臭いが……
生ゴミを数日放置したような異臭がプーンとお部屋の中から漂ってきます。

(これは…ゴミ屋敷の予感……)

そう感じましたが、汚れをキレイにするのが私たちのお仕事。
こちらも笑顔で名刺を渡してご挨拶しました。

「どうぞ!」

中に案内されましたが、靴箱のない小さな玄関には靴が散乱していて、足を踏み入れる場所がありません。

「失礼します!」

C様の靴をササッと並べ、持参したスリッパを履いて室内へ。

玄関から真っ直ぐお部屋に通じる廊下には、たくさんの段ボールが積まれていて、カニ歩きで通るのがやっとの状況。

段ボールの壁をなんとか通り抜けた室内は、カーテンを閉め切り薄暗い雰囲気。

ベッドには洋服が積まれ、テーブルの上や床には小物がゴチャゴチャと置かれています。

「片付けが苦手で……」

申し訳なさそうにつぶやくC様。

ゴミ屋敷とまではいかないものの、事前に伺っていた荷物量をはるかに超えています。

「大丈夫ですよ!でも、先に荷物を整理しないとクリーニングできないので、お見積りを修正させていただきますね」

室内を見渡して、片付けに1日半。
クリーニングは2名で伺って1日。
合計2日半のお見積り内容に了承を得て、作業開始!

片付けはC様にもご協力いただき……

・いる or いらない
・すぐ使う or あまり使わない
・洗う or 捨てる

などを基準に、大まかに仕分けしていきました。

私はC様がより分けたものを、テキパキ袋詰めしたりバシャバシャ洗ったり。
廊下に積み上げていた段ボールもすべて開封し、ざっくり棚に納めました。

7時間ほどかけ、ようやく床が見えるまで片付けることができました。

「続きは明日の午後に伺います!」

口数が少ないC様でしたが、

「ありがとうございます!真っ直ぐ歩ける廊下は、内見の日以来です!」

まぶしい笑顔で喜んでいただけて、私もがんばったかいがありました。

そして翌日。
他のお掃除現場の後、着替えてC様宅へ向かいました。

私たちのお店では、お掃除屋さん=汚れているイメージを払拭したくて、現場ごとにシャツや靴下などを着替え、訪問するよう心がけていました。

約束した時間に伺うと、今回はピンポン1回で出てくださったC様。

昨日で片付けはだいぶ進んだものの、やはりお部屋の匂いが気になり……
C様の許可を得て、ずっと締め切っていたという窓を開け、換気するついでにカーテンを洗濯機へ。

その間にC様に取捨選択していただいた捨てるものを、ゴミ袋に分別しながらまとめていきました。

合計13袋の大量のゴミ。
私たちのお店はゴミの回収は行わないので、収集日までベランダで保管していただくことに。

散乱していた物が整然と並べられ、広くなったように感じるお部屋。
その片隅にポツンと置かれた、みかん箱サイズの段ボールがひとつ。

「この箱の中のものはどうされますか?」

「それは……使わないけど、どうしても捨てられなくて」

「思い入れのあるものは無理に捨てなくて大丈夫ですよ。ただ、段ボールで保管すると中身が傷んだりG(ゴキブリ)の棲家になったりするので、良かったら長期保管できる収納ケースを見にいきませんか?」

片付け終了後、C様を車に乗せ一緒に近くのショッピングモールへ。
蓋もしっかり閉まる半透明の収納ケースを購入し、C様をご自宅へお送りして事務所へ戻りました。

そして翌週。
C様宅のクリーニング最終日。

ご依頼されたのは簡易クリーニングとはいえ、入居して3年間ほとんどお掃除をしていなかったお部屋なので、その日はパートさんも連れて2名で伺いました。

「どうぞ!」

素敵な笑顔で招き入れられたC様のお部屋からは、もう悪臭はしませんでした。

パートさんはイケメンのC様にメロメロの様子。
いつもより高い声で会話するパートさんを軽く肘でつつき、C様に本日の予定をご説明。

「承知しました!16時には戻るのでお願いします」

前回までの作業を通じて信頼していただけたようで、お部屋のお掃除をする間、C様は外出されました。

ベランダに積んでいたゴミも数袋に減っていたおかげで、窓も外してスムーズに洗うことができ、作業は順調に進んでいきます。

室内の掃除機がけをパートさんに頼み、私がユニットバスのお掃除をしていたその時!

「キャーーーッ!」
ドアの向こうから叫び声が聞こえてきました。

何事かとゴム手袋を外して見に行くと、掃除機を手にしたパートさんが震えながらクローゼットを指差しています。

「どうしたの?大丈夫?」

パートさんに声をかけながらクローゼットを見ると……
C様と一緒に買いに行った、あの半透明の収納ケースが置かれています。

そして、うっすら中身の見える箱の中には……
G(ゴキブリ)と思われる大量の茶色い物体がビッシリ!

「キャーーーッ!!」

お客様の中には、爬虫類や変わったペットを飼われている方がいらっしゃいます。
C様がG(ゴキブリ)愛好家だったのかどうかは知りませんが……

今でも半透明の収納ボックスを見ると思い出します。
箱の中でうごめく茶色いGを……

「キャーーーッ!!」


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