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世界で一番ホッとするコーヒー(入学式をひかえて)

令和元年、次の2月で75歳になる母がコーヒーの焙煎を自宅でやり始めた。
コーヒーに詳しい僕に頼ることなく、自分で調べて楽しそうにやっている。


キッカケは今も続けている介護の仕事先のお客さんがコーヒー大好きで、
自宅で焙煎をやっていたのを知ったからだ。

そんな母が80歳になる頃をボクは思い描く。



「世界で一番のコーヒーを用意するわね」

友人を家に招いて、そんなことを言っている。

前の晩に丁寧に自分で焙煎したコーヒーを挽いて、淹れて、
友人が買ってきてくれたお茶菓子を食べながら一緒に楽しむ。
たわいもないおしゃべりをして、わずかな時間を過ごす。


母はいつからか何度も同じ話をするようになっていて

「実はこのコーヒー、息子の農園で採れたコーヒーなのよ」

と自慢げに友人に話し「その話、もう3度目よ!!」と言われ
「そうだったかしら?」と母は惚ける。

ふたりはケラケラ笑いあう。


「コーヒー屋になって良かった」と言えるように

人はホッとするとき、どんな気持ちだろうか?

不安から解き放たれたとき、緊張がほぐれたとき、
一仕事終えたとき、誰かの笑顔に出会えたとき…

ホッとするとき、その人は120%幸せな気持ちだ。

母のような倹約家でも「1日100円だから」と気軽に買えて、
有機栽培で育てているから安心して友達に振舞えて、ちょっと
多く焙煎しすぎたときは「沢山あるから持っていきなさいよ」と
お世話になった職場の人や近所の人にもおすそわけができる。

買うときも、淹れるときも、贈るときも、きっと母はホッとする。

ボクのコーヒーに関わる誰もがホッとする、
そんなコーヒーを世に送り出したい。

育てる人も、楽しむ人も、皆の幸福感が120%で、中間マージンを排除した
エコシステムをもつコーヒー屋をやる。そう、目指すは産直コーヒー屋だ。

入学宣言

今の自分の無知・無能を認め、これからは腕のいい専門家の方々(コーヒー農家・鑑定士・インポーター・ロースター・バリスタ・コーヒー愛好家)を繋ぎ合わせる交渉力と人間的魅力、コーヒー業界の当たり前に風穴を開ける影響力を身につけるべく令和元年十二月二十日、田端大学に入学しました。

これから季節外れの入学式に行ってきます。

投げ銭は僕が面白がっていることに突っ込ませていただきます。