歩行分析からトレーニング指導
1.歩行の特徴
歩行動作を観察するには重心、床反力、筋活動を理解することが必要となり、動作を観察する上で基本となります。
今回は歩行動作の特徴と歩行動作の問題から考えるトレーニングの見方についてお伝えしていきます。
重心移動|上下
歩行中、重心の上下動が起こる。
運動エネルギーが大きい状態でLR(ローディングレスポンス)を迎え、低くなった重心は運動エネルギーによりMstに向かって上昇していく。
つまり、位置エネルギーと運動エネルギーにより重心の上下動を行っている。
筋はその重心の上下動を制御しているため、随意的に収縮させて歩いているわけではない。つまり「つま先を上げて歩きましょう」、「胸を張って歩きましょう」という言葉がけの意味を考えて指導する必要がある。
上下動が大きくなれば加速度が加わることで必要以上に制御することになり、膝が曲がった状態で接地を迎えると重心が下降する力は強くなり、その衝撃は大きくなる。
重心移動|左右
立脚側に向かって重心が移動する。
料理に使うボール(骨盤)の中に丸いボール(重心)を入れて歩くとこの現象を理解しやすい。
丸いボールが入った料理のボールを持って歩行すると、丸いボールは動くがその中から飛び出すことはない。
しかし、その状態で片足立ちになろうとすると丸いボールは飛び出してしまう。
つまり歩行は片足立ちの連続ではなく、不安定な状態で重心が左右に揺れながら移動している。
以上の特徴を考慮し、荷重下でのトレーニングを歩行における重心移動の観点から動作分析をしていく。
2.Loading Response
✔︎股関節伸展により重心を前上方に移動させるフェーズとなる。
股関節伸展筋群の遠心性収縮から求心性収縮の切り替えにより、股関節が伸展し重心を前上方に移動させる。
大殿筋により大腿を後方に引き、ハムストリングスにより股関節伸展させ重心を前方に移動させる。
それには足関節周囲筋による下腿の固定が必要になる。
※下腿の固定が出来ないと膝が前方に偏位する。
下腿を固定し、股関節伸展で重心を前上方に移動させる動作が重要なフェーズとなる。
※膝が前方に偏位し、股関節が伸展できないと腰椎前弯、膝関節屈曲、足関節底屈によって重心を前方に移動させるため、腰痛やハムストリングス、下腿三頭筋の硬化を招くことになる。
▶︎トレーニング|デッドリフト
下腿を固定(やや踵荷重)、股関節を屈曲させ大殿筋とハムストリングスの遠心性収縮を行う。
重心を下げる際の足関節の過背屈に注意する。
後足部での安定性が低下していると足圧が前方に偏位し、膝関節が屈曲しやすくなる。
伸展相では骨盤後傾、股関節伸展を行う。膝関節伸展・腰椎前弯に注意する。
3.Mid Stance
✔︎重心が立脚側に移動する。
✔︎内転筋と外転筋の遠心性の制御により重心移動をコントロールする。
LR〜Mstにおける内転筋の遠心性収縮から求心性収縮の切り返しにより重心の外側移動を制御している。
さらに重心が外側に移動することで外転筋の遠心性収縮により骨盤側方移動を制御している。
▶︎トレーニング|ステップアップ
足底全体で足圧を感じながら片足立ちとなる。
内転筋の制御が不十分であると重心が過剰に外側移動する。
アシストトレーニング|内転筋・外転筋トレーニング
4.Terminal Stance
✔︎重心を前方に送る。
✔︎MP関節を支点に股関節が伸展しする。
✔︎腸腰筋の遠心性収縮により制御し、その力を利用し下肢を振り出していく。
MP関節伸展が不十分の場合、足関節底屈で重心を前方に送り出すことにより、上方への力が強くなり腰椎伸展が起こりやすくなる。
またTstでの股関節伸展は重心が前方に移動することの結果による受動的な伸展となるため、上述の通り地面を意図的に蹴って歩いているわけではない。
▶︎トレーニング|カーフレイズ
MP関節を支点に踵を上げる。股関節伸展可動域の改善も合わせて行う。
5.Initial Contact
✔︎Tstで送り出された重心を逆脚で衝撃吸収するフェーズとなる。
ここでは膝関節を屈曲させ衝撃吸収する。
前後の大腿四頭筋とハムストリングスの同時収縮による膝関節を制御する。
▶︎トレーニング|フォワードランジ
6.ロッカーファンクション
身体を前方に進めるには3つの回転軸(ロッカーファンクション)が必要になる。
歩行をフェーズごとに分析しトレーニングに対応していく方法をご紹介しました。
トレーニングが何のためのトレーニングなのか。
移動がどのようなメカニズムで起きているのかを考えながら指導していく必要があると考えます。
平 純一朗|タイラ ジュンイチロウ
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