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#41 近所のおばあちゃん。

自分はとてもばあちゃん子だった。

ばあちゃんは80をすぎたらボケてしまって、自分の靴がわからなくなって家のどこから見つけたのかわからないクロックスを履いてて驚いたことがあった。1番上↑にある写真みたいに、近所の百貨店で靴を買ってあげたらすごく喜んで履いてくれた、すぐ忘れちゃったけど。あれ、高かったんだけどな。


今日は地域のイベントが3年ぶりに開催されるということで、この地域に住んで初めてのことだったしちょうど家が目の前なこともあり朝からじっくり見ることにした。

【これは何時からなの?】
【このひと(交通規制のひと)たちは誰?】
【いつもはあそこの奥さんが出店を出しててね】

唐突に話しかけてきたのはここに嫁いで60数年。
ほんの少し前まではご両親の介護で20年ばかし離れてたという近所のレジェンドだった。
少し耳が聞こえなくて、同じ話を少しだけくり返す。
足が痛くて50日家を出てなかった、とカレンダーを見ながら思ってた、そんなどこかの祖母を思わせるレジェンドだった。

爆弾を撃ち込む戦闘機のパイロットと防空壕から目が合った話や、旦那さんの仕事を手伝いたくて二級建築士を取得した話、免許返納直前に車で富士山まで行った話、いろんなことを話してくれた。
その中で自分のことも少し聞いてくれたから地元の話をしたら、昔旦那さんと旅行したことがあると言ってくれた。
地元の名産を食べてとても美味しくて、でももう少しつゆをかけて欲しかったからハシゴした2軒目の店員さんには多めにかけてと頼んだなどという話をしてくれた。

おばあちゃんはかわいかった。

『あなたのおばあちゃんもこんなでしょ?』
と何度か聞かれた。
亡くなったとは言えず、うちのばあちゃんもそうですよ、と答えた。
おばあちゃんはお孫さんのことも話してくれた。たくさん心配なぶん、たくさんかわいいし幸せになってほしいと言っていた。今やってるアルバイトの心配もしていた。
『あなたのおばあちゃんはあなたのこと心配してない?』
たぶん心配してると思います、と答えた。
『素っ気ない振りしてても、あなたが帰ってくると聞いたら朝目が覚めてからずっと玄関の物音に耳を傾けてるでしょ?』
帰る身だからわかんないですけどそうなんじゃないかなって思います、と答えた。
『絶対そうよ。孫ほどかわいいものないんだから』

地域のイベントで涙が流れるところだった。

ばあちゃん、帰るの楽しみにしてくれてた?
ばあちゃん、誰よりもかわいかった?
ばあちゃん、今も心配させてる?

ごめんね、またばあちゃんとなんでもない話をしたくなった今日だった。でも、近所のおばあちゃんに地元の名産をあげたくもなった。これはおせっかいかな。

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