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くも蜘蛛クモ

私は蜘蛛が苦手だ。

小学生の頃、四国にある祖父母の家の窓に、子供の手のひらほどの大きさの蜘蛛が蜘蛛の巣を張っていた。
その蜘蛛の卵から子蜘蛛が無数に出てくる姿を見てしまってから苦手になった。
軽いトラウマである。
それだけではない。
祖父母の家に泊まった日の朝。
カサカサという音で目覚めると、目の前に巨大な蜘蛛がいた。思わず悲鳴をあげた。
大きなトラウマである。

私は田舎に行くと、虫への免疫はつくほうだと思っている。
自然が豊かなため、東京では見たことのないような蛾がいたりする。夜になると、明かりを求めた小虫が窓いっぱいにはりついていたりする。
気持ち悪い柄の蛾にはさすがに驚くが、小さな虫で騒ぐようなことはない。
ただ蜘蛛は違う。
大きかろうが小さかろうがキモい。
先ほどの二つの経験をしてしまったから。




社会人となった今、賃貸マンションに住んでおり、車も所有していてマンション敷地内の駐車場に車を停めている。
建物の軒下が駐車場になっていて屋根がある為、とてもありがたく感じている。
ただひとつ問題があった。
夏になると蜘蛛がどこからともなくやってくるのだ。
私の車の右隣にはでっかいミニバンが停まっている。
そのデカミニバンの屋根と駐車場の天井をつなぐように毎年最低3匹の蜘蛛が巣を作る。
右隣なので私が車を降りるときに頭上に蜘蛛の巣がある状況になる。最悪である。
それに加え、デカミニバンのご一家は土日しか車を使わないらしく、車通勤でほぼ毎日乗る私はいつも蜘蛛に怯えながら乗り降りをするハメになっている。
(土日にデカミニバンが駐車場から出ると蜘蛛の巣は崩壊するのだが、次の日には元通りである。)

雑な絵ですみません

ある日の通勤中、運転していると目の前に何かが垂れてきた。
まさかの蜘蛛である。例の駐車場蜘蛛が侵入していたらしい。私は悲鳴をあげた。窓をあけ蜘蛛を弾き飛ばす。いざとなると苦手な蜘蛛に触れれるらしい。叫びはしたものの、咄嗟に対処出来た自分を褒めたい。

そんなことがあった後、同じように蜘蛛に悩んでいた会社の後輩と喋る機会があった。
その子はついに蜘蛛よけスプレーを手に入れたとのこと。それをかけたら蜘蛛はいなくなったらしい。大容量蜘蛛よけスプレーなので使いきれないからと快く貸してくれた。今までにないくらいの感謝を伝え私は蜘蛛よけスプレーを手に入れた。
土日のデカミニバンの外出中を見計らい、蜘蛛の巣が作られるであろうところをめがけこれでもかとスプレーを吹きかける。
デカミニバンの戻りを待っているであろう蜘蛛達数匹がいたものの気にはしていられない。
蜘蛛は身を捩らせていた。申し訳ない気持ちはあったが、毒性はないスプレーだったのでどこか違うところに逃げるだろうと言い聞かせスプレーをかけ続けた。逆に蜘蛛にやられてしまう夢でも見たら嫌だなと思うくらい蜘蛛は身を捩らせていた。(その日はしっかり快眠だった。)




スプレーを使用した次の日から蜘蛛の姿は見なくなり夏が終わった。
そして冬が来て2023年を迎えた。
今年の夏もやつは現れるのだろうか。
そうしたらまたスプレーを借りよう。
そもそもなぜデカミニバンの持ち主は蜘蛛の巣を気にしないのか。
どうして隣の私が退治しなければならないのか。
思うことはあるものの、私にはスプレーという武器がある。今年も存分に頼ろうと思う。


おわり




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