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福祉 is…


 

 「Punk is attitude. Not style.」 
 大好きな言葉の一つ。イギリスのパンクバンド、The Clashのフロントマン、ジョー・ストラマーの言葉です。 

 The Clashが活躍したのは70年代後半。私は生まれておらず、リアルタイムで聴いていたわけではありません。しかし、メッセージ性の強いその音楽は、当時、思春期真っ只中の私の胸を鋭く貫き、今も貫いたままです。

「白い暴動」 1977

 The Clashはパンクというジャンルのロック・ミュージックを世に響かせていました。当時は、市民のものだったはずのロックが、様々な権威を持つようになり、市民のもとから、離れてしまいそうな時期だったようです。それに反発するように現れたのがパンクです。既存のロックを破壊し、新たなロックを創っていくという気概に溢れたものでした。
 しかし、権威のあるメインカルチャーにとってかわるようなカウンターカルチャーが生まれても、いずれ、それがメインカルチャーとなり権威を持つようになり…と、いつの世も歴史は繰り返していきます。マイノリティがマジョリティになるだけで、分断の構造は変わりません。パンクも緩やかに「パンクとはこうあるべき」という思考に固められ、いつの間にか枠組みに囲まれていきました。

「London Calling」 1979

 しかし、The Clashはそんな世の流れに抗うように、ヒップホップやレゲエ、ダンスミュージックやジャズにワルツまでも自らの音楽に取り入れていきます。  
 「それはパンクじゃない。」思考の固まったパンクファンにバッシングを受け続けるクラッシュ。そんなバッシングにジョー・ストラマーが放った言葉が、

「Punk is attitude. Not style.」

 訳すと「パンクは姿勢。スタイルじゃない。」となります。
 つまり、姿勢がパンクであれば、どんな音楽をしていても、ましてや音楽をしていなくてもそれは「パンク」となるのです。

 「Punk is attitude. Not style.」つまり、「パンクは姿勢。スタイルじゃない。」という言葉と、それを体現し鳴らされる、The Clashのパンクは、思春期の私の胸を鋭く貫き、30代半ばの今の私のことも、優しく包み込んでくれます。

 私はパンクをしていませんが、「福祉」の仕事を選び、働いています。
 福祉は広範囲、横断的で全ての人のためにあるはずです。しかし、狭い範囲で複雑に分断され、本来の意味、目的が失われているように感じます。
 就職活動では、職種の枠として、福祉職と限定され、若者に興味を持ってもらうためなのか、FUKUSHIと、ローマ字にされていたりします。安直に、福祉制度という制度全般を指し、それを動かし、サービスを提供する側が、「福祉とはこうあるべき」「福祉じゃない」「福祉に当てはまらない」なんて言ったりもします。 
 人々のもとから離れ、分断され、権威を持たされてしまった残念な状況です。

 そもそも、「福」も「祉」も「しあわせ」を意味する漢字です。
 つまり、福祉は「しあわせ」のこと。幸せになりたくない人がいないように、福祉に関係のない人はいないはずです。

 人が動くと書き、働くと読みます。
 行動を起こすことを働くことだとすれば、福祉の仕事は、「しあわせのために行動すること」となります。特別な仕事ではありません。どんな仕事も、福祉の仕事です。そして、私の仕事は「福祉」です。

 音楽ジャンルを横断し、分断を優しく包み込み、人々の胸を貫いていったThe Clashのパンクは、その活躍から40年以上経った今でも、世界中の人に愛され、道標となっています。
 私もそれを見習い、「福祉 is attitude. Not style.」の精神で、「福祉は、幸せのための行動、つまり姿勢。制度や枠組みといったスタイルじゃない。」という気概を忘れないようにしていきます。

2021.9

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