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10回以上のピボットを経験してきた僕が考える、起業家の人生とは何なのか。

最初に申し上げると、これは一般的なベンチャービジネス論や経営ノウハウではありません。僕自身のひたすら泥臭い、田舎の中小企業の経営者という経験を通じて学んだことのアウトプットです。ましてやスタートアップ界隈の起業家には全く役に立たないエントリ(記事)であることを最初に申し上げておきます。

しかしながら、もしかしたら、「そうじゃねーだろ」と、反面教師的な学びであれば得られるかもしれませんので、どの世代も気軽に読んでいただけたらと思います。

話は32年前に遡ります。
僕は、18歳で家を飛び出してアメリカへ行きました。

もちろん、海外への憧れもあったのだけど、本当の理由は、閉鎖的な田舎の生活から離れて、とにかく一番遠いところへ”逃げたかった”という理由です。

それからというもの、たくさんの事業を経験しました。いい機会なので、半生をざっくりと振り返ってみようと思います。

18歳 渡米、飲食店やアスファルトをひくアルバイトなどを経験、アパート前でガレージセールの定期開催
19歳 ビンテージ古着/デニム、アンティーク家具などのバイヤー 
20歳 (帰国してアルバイト三昧で起業のタネ銭を稼ぐ)
21歳 地元宮崎に雑貨店をオープン
22歳 雑貨店→ビンテージショップ/アパレルへ業態転換
25歳 駅前の商業施設へ出店
28歳 事業に失敗 全店舗閉店 

28歳 寿司職人へ転身 修行の日々
32歳 タリーズコーヒーFC加盟/九州1号店として宮崎市内にオープン
35歳 沖縄出店に失敗、撤退
38歳 タリーズインターナショナル(シンガポール)アジア展開のディレクター

40歳 宮崎を「口蹄疫」が襲う(会社存続の危機)
41歳 食品製造加工分野への参入 「すしマヨ」発売
42歳 九州パンケーキミックス発売
43歳 台湾への出店を皮切りに、海外に進出
45歳 東京や福岡への出店を目指すが、のちに撤退
49歳 ホールディングス体制へ移行
50歳 秋、世界戦略商品を発売予定 ←今ここ

客観的に振り返ると、3つくらいの大きな括りがありました。

① なんでもやってみよう期
② 食産業へ転身して店舗展開期
③ 食品加工分野への参入期

むちゃくちゃ大雑把に振り返りましたが、道程では騙されたり、借金の返済に苦しんで死にたくなったり、書けないようなこともたくさんあります。そして、これからの10年間は、「世界」への挑戦を戦略的に進めていくという、事業家人生の締めくくりのフェーズとなります。

僕が起業した当時と今の最大の違いは、言うまでもなくインターネットの有無です。おかげでビジネス書も簡単に手に入りますし、勉強会やセミナーも活発です。玉石混合ではありますが、Youtubeや、News Picksなどのビジネス動画コンテンツも数限りなくあります。誰かの成功法則をトレースして、思考をハックして「参考にする」ことができるのはとてもありがたいことですね。

これから起業しようとする方々は、是非とも知識を得てから一歩前に踏み出すことをお勧めします。なんなら、尊敬する起業家に思い切ってSNSで連絡を取ってみてください。10人に一人くらいは親身になって話を聞いてくれるはずです。あわよくば、メンターになってくれる、出資して成長をサポートしてくれる、なんていうラッキーなことも起こるかもしれません。

しかし、一つだけ誰も教えてくれないことがあります。それは...

これから先の君の人生に何が待っているのかということです。

いったん借金をしたら、当たり前ですがそれを返すために利益をあげなくてはなりません。借金は利益を上げなければ減らないのです。”当たり前”と書きましたが、これをよく理解していない起業家は本当に多いと感じます。昔の僕がそうでした。成長資金だと自分を納得させつつ、実は借金を返すために「資金調達」という名の下に更に新しい借金を重ね、そしてやがていつの間にか、数十年かけても抜け出せない嵐の大海原に漕ぎだしていることに気付いて唖然とし、突然恐怖します。

悲観することはありません。むしろ、恐怖を感じてからが本物と言えるかもしれません。なぜなら、それは「攻」「守」バランスの良い経営にとっては恐怖心を知るということは不可欠な要素だからです。

恐怖を知るとは、「これ以上進んだら死ぬぞ」という領域に踏み出さない予知的能力を経験値や知識から身につけるということです。冬山を攻める冒険家でも、ビッグウェーブを攻めるサーファーでも、そして一流の経営者は、みんなこの鋭い肌感覚を身につけていて、死ぬかどうかの一か八かのギリギリの勝負を避けています。生死に関わるようなギャンブルはしないということです。

「起業家って一本アタマのネジが飛んだおかしなやつらが、ひたすら新しいことを考えてノーブレーキで挑戦しているんでしょう」と思っている方には意外に聞こえるかもしれませんが、恐怖心が麻痺したギャンブル野郎は必ず破綻します。孫正義さんだって、イーロンマスクだって、前澤さんだって、みんな緻密な計算のもとに行動しています。最善の道を進む舵取りを学ぶ=それが経営です。それでも「うまくいかないことがある」ことをみんな知っていて、その時のリカバリー能力とピボット能力、危機回避能力に優れた起業家が生き残っているのです。

それではそろそろ本題です。
「起業する」とは、一体なんなのだろう。

おおよそ30年をかけてたどり着いた答え、それは「生き方を学ぶこと」だと思っています。なんだか荒業を行う修行僧のように聞こえるかもしれませんが、その通りですw 「哲学」や「宗教」にも似た、精神修行がそこにはあります。

実は、「経営」とは仏教用語です。経営の「経」は、布を織るときの、縦糸の事を意味しています。仏教で言う縦糸とは、「何のために生きているのか」「自分自身をどう生かすことが人生か」など、菩薩に至る道を歩む生き方に縦に筋を通すと言う意味だそうです。「営」は、その筋を日々の行動に現すことです。

起業家は、「自分はなんのために存在するのか」「自分の事業は、世の中にどんな貢献ができるのか」をビジネスを通して探求し、ひたすらサービスを磨き、描き出そうとする豊かな未来に思いを巡らしています。より良い道を探し、選択と決断を繰り返すこと。その行為そのものが「経営」と言えるのです。

「利益」の目標がない事業は存在しません。仏教では利益=「りやく」と読みます。「りやく」とは、神さま仏さまから与えられる“恩恵”と考えられていますが、他人を益すること、周囲から喜ばれることなどの“善行”という原因が引き起こすよい結果こそが“恩恵”なのです。

・世の中に必要な人間になろうとすること⇒“原因“
・世の中に必要とされる人間になれた⇒“結果“

世の中に必要とされる事業を創り出す

それこそが起業家の使命です。

起業家そのものが世の中から必要とされる存在になった時に、または、生み出したサービスが地域社会や世界から必要とされるものになって、初めて利益の循環がもたらされるのです。

そう考えると、2020年は、コロナで一気に吹き飛んでしまった利益と赤字に落ちてしまったサービス、店舗、全てを、すっかり変わってしまった(ように見える)景色の中で、「我は世の中から必要とされているのか」ということを今一度しっかりと原点に立ち返って自らの組織に問い直し、見直すタイミングが来たのだといえます。

頑張ってきたことが、自分の力の及ばない外的要因によって立ち行かなくなった時、僕らは心をどこに置けば良いのか。

人生は諸行無常です。つまり、この世の現実存在(森羅万象)はすべて、すがたも本質も常に流動変化するものであり、一瞬といえども存在は同一性を保持することができない、のです。

起業家がその人生を通して学んできたことに無駄はありません。不確実性に立ち向かっているからこそ得られる人生訓は、あなただけの唯一無二のストーリーです。逆境に立ち向かった体験の数だけ深みを増した物語を、僕ら起業家同志は語り合い、戦った者しかわからないであろう共感をシェアして友情を深めていきます。

どんな世の中になろうと変わらない普遍的なものが一つだけあります。
それは、自分の人生は自分だけのものであると言うことです。

辛いことも、乗り越えたらよい思い出に変わるもの。どうせ起業家という人生を選択したのであれば、いつかは、「君がいてよかった」「あなたの会社があってよかった」と言っていただけるような、世の中に役にたつ存在になりたいものです。



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