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コロナ禍の台風対策と新リスクコミュニケーション〜その時、何が起こっていたのか

台風には、ある程度慣れている(?)はずの九州でも、コロナ禍での対策はいつもと少し違った傾向がありました。まだまだ本格的な台風シーズンは続きます。今回の台風10号で見えてきたことを健忘録としてまとめておきます。

① ホテルが満室に

宮崎市内のホテルは、ほぼ満室となりました。九州全域の中心部では、同じような傾向があったようです。史上最強台風が来るという恐怖心に加えて、万が一の際に「密」が心配される避難所を避けて、GO TOキャンペーンも活用しながら宿泊をする方が増えたとのこと。また、立体駐車場も愛車を避難させる方々の利用によって「満車」となりました。

② 避難所は「定員」人数を見直し

コロナ感染症の影響で「密」を避けるために、避難所の定員は、いつもより少人数に絞っている場所がほとんどです。今回の台風10号では、上陸前から、こうした「避難所」を予防的に利用する住民が増え、高齢者のみならず小さなお子様のいるご家庭など多くの方々が利用しました。これ以上受け入れが困難な場合には「満員」を記載するウェブページを各自治体は準備していますが、ネットリテラシーの低い高齢者などには「避難所へ行ったけど入れない」などの混乱も見られました。

③ 「対策」特需

あまり良くない表現かもしれませんが、一部に「対策特需」とみられる買いだめ傾向がありました。スーパーやホームセンターなどでは、2日前から買い物客が殺到し、水などの備蓄品が売り切れとなりました。3月以降におこったマスクの買い占め騒動や、一部食品の品切れ騒動の記憶も新しく、また、買い物での「密」を避けるために早めに購入をする人が増えたためではないかと思われます。

総じて、今回の台風10号では、いつもにも増して市中の警戒心が高く、数日前から熱心に対策をしていた印象です。なぜこんなに”動いたのだろう”と考えていましたところ、友人(持留さん/株式会社Glocal K)のFacebook投稿で腹落ちする投稿がありました。

台風10号は、市民の備え方が大きく変わった象徴的な台風だったと思います。実際、私も立体駐車場に車を停めにいきましたし、街中では、養生テープが貼られた窓ガラスをいたるところで見かけました。「メディアが大きく騒ぐから市民の行動が変わったのだ」と皆さん思うかもしれませんが、そこには背景があります。

 去年くらいから、気象台や国交省の記者会見の表現が「今すぐに、ただちに」「あなたの大切な人を守るために」などと①言い切る②具体的に言う 表現を使っていることにお気づきでしょうか?

 リスクコミュニケーションも仕事のサポートの対象としたいと思っているので、報道現場を離れた今でも役所など防災担当者の方々とのディスカッションに入っているのですが、皆さん「危機感をどのように伝えて、どう共有するか」ということにいまものすごくエネルギーを割いています。例えば地方整備局が気象台と一緒に記者会見をやることで「これはただ事ではない」という雰囲気を作り出し、会見でも「使われる」表現を駆使してメディアに少しでも多く取り上げられることに成功しているのです。

今回は予想を超える被害は出ていませんが、市民が台風にここまで備えられたのは行政の皆さんと鉄道などの民間、そして市民とメディアのコミュニケーションが成立したからだ、と考えることもできるのではないかと思います。
「スーパーから水が無くなるのはメディアのせいだ」と批判もあり、「ではバタバタ買わないために日常からどうすればいいか」の問題提起もすることもメディアの役割だと思います。

どうやら、リスクコミュニケーションの変化が効果的に危機感を醸成した、その結果としての事前回避行動を促す効果と、コロナ禍での行動変容が合間って、今回の台風10号に対峙する上での傾向を生んだと分析するのが正しいようです。気象台や地方整備局が、メディアに揚げ足を取られることを過剰警戒するのではなく、あくまでも「命を守る」という使命感に本気で挑んだ成果が出ているように感じました。

最後に、徹夜で路線の復旧にあたられた鉄道職員、高速道路のNEXCOをはじめとする道路事業者、奇跡的なスピードで停電復旧をしていただいている電気事業者、避難所を守る行政関係者、医療機関、災害支援の消防関係や地域名の自衛団、その他、文字通り、決して自己主張することも無いたくさんのプロフェッショナルな仕事の「おかげさま」に守られて、台風一過の青空を見上げることができました。

改めまして、心より感謝したいと思います。

まだまだ台風シーズンは続きます。
みなさん、くれぐれも早めの対策を。


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