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森のくまさん、5歳児を狂わす

実家の両親から新米が届いた。
郷土が誇る「森のくまさん」である。

チープさを感じるイラストとネーミング

いつも使用している可もなく不可もない量産型炊飯ジャーがピーピー音を立てて炊き上がりを知らせると、あからさまにいつもの米とはわけが違いまっせと視覚に訴える輝き。

そこにはたっぷり水を吸ってふっくら内側から発光する美しき白米。

ふっくらつやつやのお米を口に運べばふんわりじんわり甘みが広がりそりゃもううっとり夢心地。

さすが父をコシヒカリ、母をヒノヒカリにもちおいしい熊本の水と豊かな土壌で育った米である。
「森のくまさん」だなんて間抜けな名前で人を油断させておきながら、その実力は一級品。決して侮るなかれである。

愛息「福太郎」は森のくまさんの新米を一口食べてその虜になってしまった。
カレー?シチュー?ハヤシライス?
余計なもので新米を汚さんでくれとばかりにこれら好物を一切合切拒否するようになってしまったからさあ大変。
我が家の小皇帝が「ぼくはもう白米以外は食べません」宣言を即日発令。

唯一彼が白米にかけて良いと認めたもの、それは「御飯の友」という小魚を骨ごと粉末にした渋いふりかけのみ。

渋くて大変よろしい

「御飯の友」はふりかけの始祖と言われているこれまた熊本の製品で、私も子供の頃から親しんでいる味ではあるが、正直息子のようにこれほどまでに熱狂したことはなかった。

味はおいしい。
子どもウケを狙った商品ではないからこそ、変な甘さなどの雑味が一切なく、徹頭徹尾小魚!これぞまさに御飯の友。

味だけにとどまらず見た目が渋い。
パッケージに子供の喜ぶキャラクターもいなければ、ふりかけの色は茶色一色(に黒い海苔少々)。

それもそのはず、このふりかけは大正初期に熊本の薬剤師が県民のカルシウム不足を補う目的で考案されたものだという。
名前も「ごはんのとも」じゃなくて「御飯の友」だもの。御飯だもの。
子供にゃ読むことすら適うまい。

子供に媚びない、おもねらない孤高のふりかけなのである。

それにしても、地味なパッケージの「Ca カルシウムたっぷり」というキャッチフレーズに大人になった今、これほど勇気づけられる日が来るとは思いもしなかった。

おかずを頑なに拒否し、炭水化物を鬼のように食む子供をもつ親にとってこのフレーズはたった一つの心の支え、拠り所である。

「彼は炭水化物だけを摂取しているのではない。小魚を骨ごと摂取しているのだ。カルシウムたっぷりなのだ」
心の内で呪文のように唱えつつ毎食白ご飯に茶色いふりかけを振りかける日々。

そんな渋ちんのふりかけをつやつやふっくら光る森のくまさんに振りかけて息子に出すと、椅子の上から身を乗り出して転げ落ちるほどの興奮状態になり、冗談じゃなく延々と食べ続ける。

熱々ふわっふわの甘いご飯にジャクジャクした歯ざわりも楽しい香ばしいふりかけ。
食欲の秋も相まって、そりゃ止まんないわ。

2回ほどおかわりをするとさすがにこれ以上はあんまりだと我々大人が待ったをかける。

福太郎、机をパシパシ叩いて不満を伝える。
「ご!!!!ご!!!!!(もっとくれ、もっと白米をくれ)」

最終的に小皿に一口分のご飯を乗せ、ふりかけをかけずに〆の白米とする。
メインはふりかけご飯、〆は白米だ。(狂ってやがる)

「今日のご飯はこれでおわり!お・し・ま・い!」
「ごーーーー!!!(遺憾の意)」

毎食ご飯を止めさせるのが地味にとてもしんどい。


ちなみに、あんまりにも幸せそうにご飯を食べる息子を見ているせいか、今日の私のお昼ご飯は炊きたての森のくまさんwith御飯の友。

なるほどこりゃ止まらんわ!

サポートいただけたら、美味しいドリップコーヒー購入資金とさせていただきます!夫のカツラ資金はもう不要(笑)