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フライングサンタ

土曜日の朝、9時過ぎに目を覚ました。
隣で寝ていた息子、福太郎はもうずっと早くから起きていて、いつまでも寝ている私をなんとか起こそうと、お腹に飛び乗ったり、私の手のひらに小さな爪を立てたりと悪戦苦闘していた。

重たい体を起こし、福太郎に頬ずりする。
子供の肌の柔らかい心地よさに驚く。
毎日頬ずりするたびに律儀に驚く。

幼児の肌の滑らかさ、柔らかさというものは、大人の想定を毎回ちょっとだけ超えてくる。
もう驚かないぞと心に決めてほっぺを撫でても、やっぱりびっくりしてしまう。

この感触を一生忘れたくないと願ってみてもそれはきっと不可能で、だから私は飽きもせず毎日頬ずりを繰り返す。
子供の肌の感触がどことなく切なさを秘めている気がするのはそのせいかもしれない。

息子を寝室に残し、パジャマから部屋着に着替えるためリビングのドアを開けると、夫が社労士の勉強をしていた。

「ええーー!偉いーー!」声に出したい気持ちをぐっとこらえる。
夫へのプレッシャーになってしまうかもしれないのでそ知らぬふりをし、ふとテーブルに視線を移すと、何やら赤い袋でラッピングされた四角い形の大きなものがどん!と置いてある。

「あれ?あれなんだっけ??」
声を上げ近づく。
「私になんか届いた?そういえばなんか買った気がするけど、何買ったっけ?」
寝ぼけた頭で考えるが寝起きで頭が働かない。
ラッピングのリボンにメッセージカードが付いていることに気付き、開く。

『メリークリスマス!たいたいちゃん! 夫より』

振り返るとそ知らぬ顔をして勉強していた夫がにんまりと私を見ていた。
「え!?なんで?今??」
実は明日夫と二人で街へ繰り出し互いへのクリスマスプレゼントを購入する予定だったため、なぜ?と、今?で私はハチャメチャに混乱した。

「えええっ!ありがとう!!」
思ってもみないタイミングでのサプライズプレゼントがこんなにも心躍るものだったなんて。

プレゼントを持ち上げてみるとずしっと重い。
はやる気持ちで、でも丁寧にラッピングを解くと、中からティファニーブルーの大きなジュエリーボックスが顔を出した。

「ええーーーっ!めっちゃ可愛いじゃん!色も超素敵!」
そう言うと夫は得意げに言った。
「ティファニーブルーはたいたいちゃんのテーマカラーだからね!」
え?いつそうなった?

断っておくと、ジュエリーボックスの色がティファニーブルーなのであって、ティファニーのジュエリーボックスではない。

メインのプレゼントは明日街で購入する予定なのでおそらくこれはお手頃価格のもののはずだ。
だけど、ティファニーブルーに金の金具が映えて、それはとても高級そうに見える。
いつものことながら、夫はどうしてこうセンスがいいのだろう。

「それにしてもまた、大きいサイズの買ってくれたもんだねぇ!」
私が持っているジュエリーなんて超少数なのだから、トラベルサイズでも充分なのだが、夫が選んだものはなかなかに大きめで、こんなに収納あってもどうしよう…という感じなのだ。

それはね、と夫が本日二度目の得意げな表情をした。
「小さいサイズもあったんだけど、あえてそのサイズにしたんだよ。俺がいつかこのボックスをジュエリーでいっぱいにする決意を込めて!」

どこの王子やねん!!

私が特に嬉しかったのは、このセリフを休日の朝から、私が寝ている間も勉強している夫の口から出たという点だ。

同じセリフをソファーで寝そべり鼻ほじしながら言われたら逆に頭に来ていただろう。
「夢ばっか見てんじゃねぇ!単発バイトでも今から入れやがれ!」って。

ジュエリーボックスの中身がスカスカでも構わない。
ただただ真摯に生きる姿を見せてほしい。

そしたら私がなんとか夫と息子くらいなら食べさせていってやる。
ほっそいほっそい大黒柱だけど。
夫の大きな決意の裏で私も小さな決意をする。

ジュエリーボックスがキラキラで埋め尽くされる日が来ることを夢見てこれからも私、がんばる!
とりあえず週明け仕事がんばる!




サポートいただけたら、美味しいドリップコーヒー購入資金とさせていただきます!夫のカツラ資金はもう不要(笑)