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ハフポストの女性論は全体的に低レベル過ぎる

毎年恒例ジェンダーギャップ指数の時期になり、ハフポストの記事を見たのだが、全体的にレベルが低すぎてさすがにうんざりしている。

「女性の活躍や家庭とキャリアの両立について質問してくるのは日本だけ」外国語の文献を撫でる程度に読んだ私ですら、そんなわけねーだろと突っ込まずにはいられない。英語の女性論では、仕事と家庭の両立に成功した女性をSuperwomanと呼び、これは社会学・フェミニズム用語としてWikipediaに項目が立っている

In sociology, a superwoman (also sometimes called supermom) is a Western woman who works hard to manage multiple roles of a worker, a homemaker, a volunteer, a student, or other such time-intensive occupations.

この語はたいてい「普通の女はSuperwomanになれない」=「仕事と育児の両立は無理」という意味合いで使われる。このようなSuperwoman論はは米アマゾンで女性キャリア本トップの売り上げであるSheryl Sandberg. "Lean In: Women, Work, and the Will to Lead"でも、Anne-Marie Slaughterの有名なコラムでも、ハフポスト自身が取り上げたニュージーランドのアーダーン首相のコメントでも触れられている(記事中にある「周囲のサポート」の一つは旦那が主夫だという要因)。仕事と家庭の両立問題は、少なくとも英語圏の女性において、2019年の今でもホットな話題であり続けている。

こんなことは普通に英語圏の女性論を読んでいれば分かることであって、これで「はっとする」のはあり得ないとしか言いようがない。まずハフポスト日本語版に掲載された記事を読めと言いたい。



ジェンダーギャップ指数の記事もひどい。

今年の順位の下降は、教育分野も大きな引き下げ要因となっている。教育は91位(2018年は65位)で、小項目では中等教育への就学率が128位(同1位)まで転落したことが、全体の順位を大きく変動させた。

変動させねえよ。少し考えれば分かることだと思うが、中等教育への就学率が昨年1位→今年128位に急落しているのだが、1年でそんなに変わるはずがなく、単にGGIの計測法では天井を打っていて見た目上順位が激変しやすいだけである(後に集計ミスであることが指摘されている:一目見れば分かるものだったので自分も反省している)。

教育と健康の分野で日本は比較的好成績だが、他の多くの国も高得点を獲得しているため、少し差が開いただけで、スコアが大きく転落することになる。

こちらについても問題があり、GGIの教育・健康スコアは天井を打ちやすく、問題を十分捉えているとはいいがたい。生まれの性比の比重が重すぎる(一人っ子政策時代の中国のような男児選択的産み分けを検出するためだが、自然性比の違いに鋭敏すぎる問題がある)ことや、女性が家政短大等に進んで性役割分業を強めていることを「女性の高等教育が充実している」等として算出してしまうようなケースが多いからである。

国連UNDPの人間開発指数では、特に健康・教育に特化した指標であるジェンダー開発指数(Gender Development Index; GDI)やジェンダー不平等指数(Gender Inequality Index; GII)においてGGIでまあまあなスコアを取っている国が下位に沈んでいるのは珍しくない(日本は最上位グループ)。


最近もハフポストで取り上げた「なでしこ寿司」が炎上したが、「お泊りもアリ」とまで宣伝していた秋葉原の疑似キャバクラを、数多くの女性寿司職人を無視して「唯一の女性寿司職人」として取り上げ、編集者の考えたストーリーにそぐわない不都合なファクトを丸々無視し、女性の敵とすら思える店を女性のリーダーであるかのように仕立て上げていた。それがあまりにも露骨、あまりにも稚拙なため炎上したわけである。


ハフポストの女性論は、言論空間を異常に狭く設定し、総合的な比較をせず、ある記事単独で《正義》的なものを語るためにそれ以外の言説を丸々なかったことにする例が多い。《正義》ポーズをとるために「あーあー聞こえない」とやっているかのようである。社会学で蓄積のある女性論、あるいはハフポスト自身が以前掲載した女性論を無視するのも常習的であり、ここまでくると女性論を意図的に貶める女性の敵として告発せざるを得なくなる。

こういうことを続けている限り、ハフポストの女性論は、それに賛成して現実を変えようと行動するたびに「あれ?ハフポストの言っていたことと違う」という引っかかりが生じ、永久に現実の男女格差を埋めることにはならないだろう。まあ、言論をメシの種にしている人からしたら差別が解消せず永久に記事を書き続けられることそれ自体が目的なのかもしれないが。


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