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宝石箱

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小川洋子「凍りついた香り」

私が20歳のとき、父は自ら死を選んだ。 なぜあんなに真面目に誠実に生きてきた人が、あんなに寂しいところで一人で死ななければ行けなかったんだろう。 私は今でも分からない。 父はおそらく過労死だった。 亡くなる2年ほど前に管理職に任命され、毎日5時に出勤し19時頃帰ってきていた父は、 亡くなるまでの2年間は朝4時に出て日付が変わる頃帰ってくるようになったらしい。 人は酷い精神的打撃を受けると、火傷のように身体が痛くなることを初めて知った。 火傷のようにずっと痛い、苦しい。

邪推も肉体も、一瞬でぐしゃりと潰れる

「降りろ!」 日頃穏やかなあしながおじさんからは想像できないような、強い口調だった。 私は何が起こったのかもわからないまま、ひりひりと痛む手で自身の右わき腹のあたりをまさぐった。 ***** 11月初旬にあしながおじさんと別れてから、何の音沙汰もなく、1ヶ月が経とうとしていた。 月に1、2回会うための約束以外、日常的に連絡を取り合うことはしない私たちの距離は瞬く間に遠くなった。 30日のうちの29日が。 31日のうちの30日が見えない相手は、もう、知らないひとだ。

ありがとう、と、ごめんなさい。

ずっと言えなかった本音がある。 買ってくれたあなたへ。 ありがとう。 …そして… ごめんなさい…。 ------------------------------------------- わたしは、2006年から自分が作った作品を販売することを仕事にしている。 本当に、たくさんの方々のおかげで続けていくことができている。 仕事にさせていただいている以上、 魅力を感じて お金を支払ってくださる方々がいるから 続けていくことができる。 だから、毎回、その時の精一

その言葉に色をつけるとしたら 何色だろう あるいは君は今日 何色の言葉を吐き出すのだろう 僕が昨日 塗りつぶした言葉は 明日にはきっと 別な色に変わってる いっそ無色透明でいられたら楽なのに 無味無臭でさえいられない僕らは 懲りずにまた言葉を紡ぎ出す 空虚を塗り潰すように

この街を出て行くんだ。

「俺さ、卒業したら、この街を出て行くんだ」 いつもの放課後。いつもの暗くなった公園。 隣でブランコを漕ぐ優也が、前を見ながら言った。 「……何それ」 「何で?」とか「どうして?」ではなく、私の口から出てきた言葉はそれだった。 卒業したら、街を出て行く。 物語によくありがちな台詞に、現実味が湧かなかった。 「両親が、この街にいるのは危ないって。どんどん治安が悪くなってるから、最悪な事態が起きる前にって」 「何それ」 てっきり、夢とか何かがあって、それを叶える為に出

幻想  エレクトリック・ドラゴン

冬が好きだ。 空が澄んで星が冴えるように 私の五感も澄み冴える気がする。 暖かいリビングのハンモックに身を委ねながら オルゴールの音を浴び、 万華鏡の色に溺れる。 音には色があると思う。 色には音があると思う。 聴こえない音を聞きながら色を見るのも 見えない色を視ながら音を聴くのもいいけれど 音の色を探し 色の音を求めなくてはいられないこの渇きが唯一残った飢餓だから 私はこれを趣味と呼ぶ。失くしたくない愛おしい飢餓。 今宵もオルゴールの奏でる色と模様を万華鏡の中に出

再生

自作万華鏡 その1

作品名【lunar corona】~cry for the earth~ オブジェクトには、ムーンストーン、オパール、その他貴石をふんだんに使い、 「光冠(lunar corona)」(月の周りに出る虹色の光の環)をイメージしました。 いつも思う。本当はもっと綺麗なのに、内部を撮影する事は難しすぎる。 万華鏡の内部を他人とシェアする事は不可能に近い、と。 実物はもっと柔らかい光で、うまく月を表現できたのですが。

再生

自作万華鏡 その2

作品名【Perfect】~michael & zadkiel~ オブジェクトには、サファイア、ルビー、タンザナイト、ペリドット、コランダム、シトリン、アイオライト、ブルートパーズ、他沢山の貴石をふんだんに使い、金に糸目をつけず(笑) 【友人に贈る為】に作ったのですが・・・・・ 友人には「もし、イメージの6割以上を再現出来たらあげるね」と言って居たのに。。 やはり難しい。4割もイメージを再現出来はしませんでした・・・・ また、内部映像を撮影することも難しく、もどかしい想いです。 実は3本作ったのですが、撮影すると色が全く違ったものになるので、 撮影&シェアは断念しました。 よろしければ、他一本の映像もご覧ください😊 3本目もシェアしたかったのだけれど。。。残念っ 【lunar corona】 https://note.com/middlenote/n/ndd35c8b91146

ポテチを食べた後、口の中が痛かった。嗚呼…人はこうして、食べる度に必ず粘膜を傷付けている。そう言えばSEXも粘膜の傷付け合いなのだ。人は愛を確かめ合う度必ず粘膜を傷付け合ってる。私を傷付けない様にと念入りに削られた君の爪を想う。ごめん、それでも私は傷付いている。君を傷付けながら。

コールまで。

今日はクライアントの青木錦之介さんの大切なレコーディングの日。 彼が寝坊する予感しかなくて 鬼のようなウェイクアップコールをする為に眠るわけに行かない。 今日の投稿が多いのは寝てしまわない様にする為だ。 いつも忙しさと反動の眠気で何も書けないので丁度良い。 起こしたい時間までくだらないことを書いてみよう。 ・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・ 錦之介さんに依頼される「カラオケ練習の見守りセッション」の前には腹ごしらえをする。 その為によく彼を連れて行くお気に入り

どうして、という言葉を飲んで。

何度も繰り返した「どうして私ばかりこんな目にあわなければならないのか」という言葉を、私は最近使わなくなった。 幸せになったわけではない。ただそんな言葉をいったところでなにも変わらない事を知っているから、吐かなくなっただけだ。 何度も繰り返し、その感情を華麗にかわしては、無視し、いつの間にか無感情の状態になったけれど、むしろ、前より辛く強固な感情の固まりになってしまった気がする。 「どうして、」というところで、言葉を止めるかわりに「純粋で何一つ偽りがない、しかし汚れた悲し

感性という麻薬

私のなかの とても美しい絵画は 現実には ラクガキにしかならない 私のなかの とても美しい映画も 現実には 学芸会のようなものだ 感性という麻薬が イタズラに心をみだしてくる あの夕陽も 温もりも 涙も すべてはまぼろしなのに 私はなぜか 駆け出したくなってしまう 真っ白のキャンパスにぶつかって トマトのように潰れてしまえば 芸術になれるだろうか。

『青林檎』

僕が「青いね」っていうと 君も「ええ……青いわ、とても」っていう 僕は――「海」を見て 君は――「血」を見て そう言う 僕が「もう帰ろうか」っていうと 君も「ええ、還りましょう」っていう 僕はひと気のなくなった暗い浜辺で 君はただ、遠い空を眺めながら そう言う もう一緒には居られないのに…… ふいに潮騒が大きくなる ボートの底で仰向けに寝かされていた君が 永遠に黙り込んだ 最後まで僕を許しながら笑って けして許さなかった君 これで、おあいこだ 僕はコートのポケ

かわいいものほどサディスティックな、支配欲、性欲、犯したい、 独占したい、という感情が刺激され掻き立てられる。自分向きのサディスト #かわいい

「世話をしたくなる衝動に駆られるが 実際には単なる写真でそれが叶わないため 欲求不満が募り攻撃的な反応を示してしまう」 「対象を傷つけまいと慎重になるあまり 逆の行動をとってしまう。 ペットを世話したい子供が うっかり強く抱きしめ過ぎてしまう。みたいな」 かわいいものほど サディスティックな、支配欲、性欲、犯したい、独占したい、という感情が 刺激され 掻き立てられるのではないか? かわいいものほど大切に扱うべきと頭で分かっていても 研究結果では