三方良しの漆染め
古来より、漆(うるし)は日本人の生活や文化に欠かせないものでした。
食器や神社仏閣の建造物、仏像などの素材として使われていますよね。
しかし、日本で使われている漆の約97%が輸入によるもので、国産はわずか3%です。
国宝・重要文化財の保全・修理に国産漆を使うことが決められています。
その国産漆の約7割を生産しているのが岩手なんです。ご存じでしたか?
廃棄されるウルシノキを再利用
ウルシノキは、漆塗りに使う樹液を採った後は切り倒され、その木材は活用があまりされていませんでした。
切り倒されて廃棄されてしまうウルシノキをなんとか活用できないだろうか。
漆の産地として有名な岩手県二戸市の組合では、ウルシノキの活用法を模索しています。そこで、京屋染物店では、廃棄予定のウルシノキを染物の原料として買い取っています。そのお金は、次世代の職人を育成したり、漆の苗を植えたり、山を整備したりする費用に活用されています。
ウルシノキで染める
京屋染物店では、岩手県のウルシノキを使って染物をしています。
漆器や神社仏閣の修復などに使われている漆塗りは樹液を使用したものですが、染色では木の部分から色を抽出します。
ウルシノキが持つ色をじっくり煮出し、落ち着いたブラウンに染め上げています。
漆の需要が高まる一方、樹液を採りきった後のウルシノキ自体は木材としての活用があまりされていませんでした。「この土地にある資源を無駄なく使いたい」そんな思いから、ウルシノキを製材するときに出る木屑を染めに使用しています。
漆には抗菌作用があると言われますが、ウルシノキで染めた布にも抗菌作用があることがわかっています。ウルシノキの木部を使用するため、かぶれの心配はありません。
好循環の流れ
私たちが取組む漆染めは、良いことだらけだと思っています。
廃棄される木材を再利用
木材販売の利益で、漆の生産環境を整える(苗植え、職人育成など)
漆染めの商品が生まれる
商品が売れるほど漆文化が継承され、産業も自然環境も良くなる
漆業界や産地の発展の一助になる
生産者もお客様も笑顔になり、自然環境も良くなる。そして、日本の文化継承と岩手の漆産地の発展の一助にもなる。
この好循環の流れを、漆染め商品を手にして使っていただいている皆さんと共に作り出せることを本当に嬉しく思っています。
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