見出し画像

【私小説14】祖父と動物の事の続き

小学生の頃、私は同じ小学校に通ういとことよく遊んだ。
今では誰かが死なないと会うことはないが、当時はしょっちゅういとこが遊びにやってきた。その日も我が家の庭で1歳年上のいとこ、ようちゃんとおままごとをしていた。庭に遊びに来ていた三毛猫にまるで犬にするように紐を着け、飼い猫役をやってもらっていた。2人と1匹で泥で作った晩御飯を囲んでいた。そして、事が起こった。私たちが三毛に紐を着けたままその場を離れた際に、祖父が三毛を見つけ、理由はわからないが三毛を鉄の棒で殴った。私が三毛に紐を着けたせいで、三毛はうまく逃げられなかった。それが玄関から見えた。急いでその場に戻ると、三毛は口から血を流し、今生の全てを呪うように目を開いていた。紐をとってやると慌ててどこかへ走り去った。三毛とはそれっきりだ。
 
私が三毛に紐を着けたせいで、多分三毛は死んだ。
その前後の事はよく覚えていないのに
この日の三毛の顔を思い出さない日は一度もない。
むしろ年を取れば取るほど思い出す頻度は増え、元々の動物好きに加えて罪悪感から犬猫の保護活動をするようになり、今では肉も食べなくなった。
何故あの日、私は祖父を殺さなかったのだろう。
 
今現在、うちにも保護した犬猫がいる。でもうちの犬猫を私自身が殴り殺したり、首を絞めて殺している絵が毎日頭に浮かぶ。
それを振り払うと今度は三毛が現れる。口から血を流して。目を見開いて。
私は自分が犯した罪に一生苦しんで生きていく。
私が三毛に紐を着けたせいで、三毛はそれ以上に苦しんだのだから。
私が本当の本当に心の底から笑う日はもうきっと来ない。
世界が色づく日はきっともう来ない。
 
トラウマっていうのは思い出の奴隷になる事だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?