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PSYCHO-PASS 究極のスマートシティのかたち2~シビュラシステムがもたらしたもの

さて、今回は前回の記事の続きとなる。包括的生涯福祉支援システムとはいったい何なのか、それによって何がもたらされたのかについてだ。

前回は、PSYCHO-PASSのおおよその世界観とシビュラシステムの確立までを取り上げた。なお、シビュラシステム=包括的生涯福祉支援システムであるのでここで補足しておく。

▼前回の記事:PSYCHO-PASS 究極のスマートシティのかたち1~シビュラシステム誕生と確立

シビュラシステムができて何が変わったのか 制度編

このシビュラシステムがもたらしたものとして、アニメ1期で槙島聖護の言葉から引用するならば、

科学の叡智はついに魂の秘密を暴くに至り、この社会は激変した。

といっている。このアニメ3期からも「魂を数値化」というワードが使用されていることからも、感情・心理状態・生体情報を数値化するという理解でいる。

さて、シビュラシステムが確立されたことで大きく変化した部分として学術的な部分では、精神医療技術があげられる。シビュラシステムのもっとも核となる部分であり、後の「犯罪係数」の定義にも関わってくる部分だ。この犯罪係数を事前に見える化することにより、ドローンや、巡回ロボットといったカメラでリアルタイムに危険人物を報せるシステムがアニメ1期時点で確立されていた。

制度に関する部分では、警察制度廃止と大学制度廃止だろう。警察制度は、このシビュラシステムにより、常に街行く人をスキャンチェックし続けられる高速処理が可能な演算システム、街じゅう至る所に設置されたカメラ、巡回ロボット、警備ドローンといったシビュラの目(アニメ中ではそのように呼んでいたのでそれにならう)からは逃れられないとされている。そのため、危険人物の可能性がある人間は街での簡易スキャン後、数値データがすぐに厚生省公安局へ検知される。

大学制度はシビュラシステムによる職業適性考査導入により廃止されたものと考えられる。職業適性考査後は、その職業に就職するための専門学校(アニメ中では研修所)に入り、すぐに社会で働くことができる人物を育成するという仕組みになっている。

シビュラシステムができて何が変わったのか 生活編

人々の生活は、まず食生活の部分で大きく変わった。ハイパーオーツによる徹底された食事管理が行われる。健康であることも日常的な簡易スキャンによって自分で確認することが可能だ。

健康診断ももちろんシビュラシステムを介して行われる。健康診断データも蓄積され、前回時と比較されるシーンがアニメ内では描かれていた。今でいう、スマートミラーの最終形態のようなものが家のなかにあるようなイメージだろうか。そして、子供の頃に行う●歳児検診といったものもすべてシビュラシステムが判定する。そのため、小さい子供の段階で「犯罪者」の素質がある=潜在犯という診断を下される子は、職業適性考査時にそのデータから職業が制限されるのだ。

さらに家の中には、常にアバターが常駐し「今日の天気・気温」から、「今日着るべき服装」「食べるべき食事」「行き先」といった一日の行動予定を教えてくれる。これらは自分の意思が介在しなくとも、すべてシステム指示通りに行えば自然と善い方向へ導いてくれるというものだ。果たしてそれに対して何の疑問も抱かない人間がいるのだろうか、と当初は思っていたがアニメではそのようなことを行う人間は、犯罪者以外いない。

つまり、犯罪がない世界をシステムの徹底した厳密な監視と、強制的に見える化すること、そして失敗しない方法を選ばせることで「平和で、精神が常に安定した世界」を作り出したのがこのシビュラシステムだった。

シビュラシステムができて何が変わったのか ~新たな機関編

さて、安定した世界を作り出したことで人々の生活は果たして本当に幸せになったというのだろうか。システムによって監視され、心のなかを見える化された日本において、疑問をもつ人たちが現れる。そういったシステムに逆らう人間は、もちろん政府側からすれば危険な存在として扱われることになる。

このPSYCHO-PASSの世界では、そういった人物を取り締まるための機関「厚生省公安局」が設置され、彼らには危険人物を取り締まる役割を与えられる。そして彼らが持つのは、銃ではない「ドミネーター」といわれる銃型の装置だ。これは、有事の際、監視官と執行官といわれる役職の人間だけが扱えるもので、正式名称は「携帯型心理診断・鎮圧執行システム・ドミネーター」という。

なお、シビュラシステムへのアクセス・リンクが不可能な場所や状況では使用できない。つまり、ある電磁波防御などが施されたシーンでは稼働しないのだ。使用時は、生体認証機能によりロックが解除される。使用登録されていない場合はトリガーがロックされ、発砲できなくなる。(この生体認証されるのは、おそらく網膜のように見えるが、詳しくは取り上げられていない)

ドミネーターについては以下参照してほしい。

執行用に発射される光線は集中電磁波であり、
確保・制圧が選択された場合は基本モードのパラライザー(麻痺銃/ノンリーサル)
対象の犯罪係数が300を超えると排除の判断が下され、エリミネーター(殺人銃/リーサル)
さらに人間以外のドローンなどによる危険が及ぶと自動的に脅威判定が更新され、最大威力であるデコンポーザー(分子分解銃/デストロイ)に設定される。
パラライザー以外の使用回数には制限があり、フル充電時にモード切り替えなしの状態で、エリミネーター4発、デコンポーザーは3発までとなる。

ドミネーターがもたらしたものは、これ以外にもある。芸術家が登録制度となったり、犯罪係数が高い者は強制的に矯正センターに収容される。犯罪を犯していなくとも犯罪をおかす可能性がある段階で、強制的に監禁状態となり、投薬などの処置が施される。病院という概念は、ほとんど矯正所に近いものになっていた。治す、ではなく直すなのだろう。

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