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100年前の「スペインかぜ」で何が起きたのか

本noteを無料で公開してほしい、との声をいただき、全文公開することにしました。今回初めて本マガジンを読む方は、医療に関係ない編集者の一考察にすぎないことを頭に置いていただければ幸いです。

こんにちは!

ちょうど100年前の今頃、スペインかぜが世界で大流行していました。初期は、風邪と似た症状で、健康な人はすぐ回復したそう。結構今と似ているところも多いです。しかし世界で5000万もの人命が失われました。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、と言います。
今日はこのスペインかぜで「何が起きたか」を見てみましょう。

今感染症関係の書籍は価格が高騰中。そこで、今日は誰にでも簡単に見られるWikipediaを見てみます。日本語版は情報が少ないので、英語版です。情報の正確性についても議論があるでしょうが、とりあえず、これが正しいと仮定して思考を進めてみましょう。

スペインかぜは2回戻ってきた

スペインかぜは、最初春に流行し、秋と翌年春、2回戻ってきています。
私が「どの国のどの政策が良いのかは、今はまだわからない」と書き続けているのは、これが理由です。

スペインかぜは、1918年3月にアメリカなどで流行開始。その後、5、6月にヨーロッパで流行しました。

この時は、「ただの風邪」に似ており、患者は老人が多く、健康な人は、軽症に済んだようです。

ところが、8月にフランスや、シェオラオネなどで流行った時は、このウイルス、致命的な形に変異します。

The second wave of the 1918 pandemic was much deadlier than the first. The first wave had resembled typical flu epidemics; those most at risk were the sick and elderly, while younger, healthier people recovered easily. 
出典) https://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_flu

問題はその後です。10月、変異した毒性の強いタイプが秋になって世界中でまた流行します。ここでたくさんの人が亡くなるのですが、その後、急激に症例数は減少します。


さらに翌年、1919年の春から秋に、まだ波がきます。この時は、医師・看護師の感染者が多く、医療崩壊してしまったそうです(これは英語にはなく、日本語のWikipediaに書いてありました。ただ英語のWikiに貼ってあるグラフから、1919年に春の小さい波が読み取れます)。

スペインかぜの流行の発生地については、科学者の間で何十年も論争が続いているそうです。

つまり、この病気の実情、まだ掴めてないのです。
世の中は「わからないこと」で溢れてる。

免疫はあった方がいいのか?


では、一度かかると免疫が得られるのでしょうか?

スペインかぜのとき、最初にかかった人は免疫が得られ、死亡率が減りました。コペンハーゲンでは、致命的でない第1波にさらされ、たくさんの人が罹患しました。そのため、危険な第2波では助かったと言われています。コペンハーゲンの合計死亡率はわずか0.29%(第1波で0.02%、第2波で0.27%)だったそう。

The fact that most of those who recovered from first-wave infections had become immune showed that it must have been the same strain of flu.
This was most dramatically illustrated in Copenhagen, which escaped with a combined mortality rate of just 0.29% (0.02% in the first wave and 0.27% in the second wave) because of exposure to the less-lethal first wave.
出典) https://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_flu


英国が最初に「冬にウイルスはまた戻ってくるから、大勢の人を感染させた方がいい」と対策を立てたのは、この免疫を付けようとしたのが理由ではないか、と私には見えます。日本もそうかもしれません。

しかし今回は、中国や日本で、2回かかっている人がいる報告もある。
また、病気には、デング熱など2回めに重症化するものもある。
だから、やはり、なんとも言えないかも。
だから「答えを教えて!」と医療者を責めても仕方ないと思う。

ただ、一つ良い話があるとしたら、ほとんどの疫病は過去に収束していることです。スペインかぜは、1、2年程度で収束し、人々は普通の生活に戻りました。

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いかがでしょうか。

歴史を学んで見えるのは、短期的な「勝ち負け」を論ずることには、あんまり意味がないってこと。変異するかもだし、しないかもしれない。それが「Unknown」ってことなんだと、理解しています。

今回は、WHOが初期に楽観論に傾いており、驚きました。私には、この病気、どうも世界のあちこちで振る舞いが違うように見えます。すでに変異しているという研究者もいます。

若年層の感染が多い国、女性の感染が多い国(ルーマニアなど)もあるようです。データの取り方や検査の優先順位、国による政治的な事情もあるので、何が幸いするかは、まだわからない。どの国も本当のことを言ってるとは限らない。

歴史は「今あるエビデンスだけ見ててもダメだよ」と教えてくれているようです。息子がよくホームスクールの先生たちから「科学を学ぶなら、哲学や倫理、歴史を同時に学べ」と言われるわけは、この辺にあるかもしれません。

それではまた。

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