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義理と人情で何が悪い

まだ知名度は高くないですが、深夜テレビ番組のレギュラーを持っている女性タレントがいます。彼女との付き合い(もちろん仕事の)は、私がブログサイトの運営会社にいたとき、公式ブロガーを依頼したのが始まりでした。

先日久しぶりに会ったので、私が前職を去った後、公式ブログはどうしているのか聞いてみました。すると、公式ブログは継続しつつ、アメブロでもブログを開いたと言うではないですか(余談ですが、アメブロの公式ブログはある程度以上の月間PV数が条件です。彼女はまだそこまで行っていないので素人と同じ扱い)。「毎日2つのブログに投稿するのは正直きついです」と笑顔で話してくれました。

えらいと思います。「公式」ブロガーになれたとしても、ほとんどの場合ギャラは出ません。オリジナルのブログデザインを作ってくれるのがギャラ代わりです。ブログサイトはタレントが連れてくるファンでページビューを増やし、タレントはブログサイトの集客力を利用してファンを増やすという、バーターなのですから。 

「もうアメブロだけでもいいんじゃない?」と私が水を向けると、彼女は「書ける限りは両方書きます。だって前からあるブログは私が初めていただいた公式ブロガーのお仕事ですし、いい加減なことをしたら声をかけてくれた呼び屋さんに申し訳ないです」。
不覚にも涙が出そうになりました。

公式ブロガーの契約などカンタンなもので、いちおう期間は設定してあるものの、タレントが書かなくなったとしても「書け」とは言えません。そもそも無報酬なのですから、やめられたらそれまでです。私が担当していたブログサイトは大手ではなかったので、公式ブロガーも無名の新人タレントを使うことが多かったのですが、ちょっと人気が出るとすぐにアメブロに鞍替えされたものです。「お世話になりました」の挨拶もなしに。

物分かりのいい大人を気取るなら、「自分に合った場所にステップアップするのをためらってはいけない」と言うべきかも知れません。「さっさと過去を忘れ去ってしまえるくらいでないと売れない」でもいいでしょう。
ですが、自分を育ててくれた人や場所を大事にするタレントを、私はやはり大事にしたいと思います。 

映画評論家のおすぎは、病気で体が不自由であった時期に福岡のラジオ番組の仕事をもらったことに恩義を感じ、元気になってからもその仕事を続け、東京から福岡に毎週飛行機で通っていたのは有名な話です。ほかにも、武道館コンサートをするほどのビッグネームになりながら、アマチュア時代に世話になったライブハウスに定期的に出演するミュージシャンの話などを聞くと、胸が熱くなります。

そういうことを言うと、「落ちぶれたときの保険だろう」などと陰口を叩く人がいます。それでもいいじゃないですか。人に大事にされたことを忘れないタレントこそが人から大事にされるのでしょうし、そういう感覚を失ったら人を楽しませる仕事などできないとも思います。それは芸能界に限ったことではないでしょう。

そういうわけで、女性タレントが必要な案件があれば、私の頭にはまず冒頭の公式ブロガーの彼女の名前が浮かぶわけです。


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