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タレント事務所の受注体制

最初に芸能人のキャスティングの仕事をしたとき、スケジュールや料金の交渉窓口はマネージャーでした。芸能人のマネージャーというとなんとなく「付き人」と同じように思っていたのですが、そのマネージャーはタレントのスケジュール管理はもちろんのこと、最終的に仕事を受けるか受けないかの判断を下す権限まで持っていたので驚いた記憶があります。あ、事務所社長がマネージャーを兼ねていたわけではないですよ。そのマネージャーはまさに「管理者」であり、「タレントという商品を売る」現場責任者であったわけです。

いっぽうで、一般企業のように営業部門があり、タレントの受注を統括しているタレント事務所もあります。そういうところは基本的に大手です。我々弱小のキャスティング事業者としては、どちらかといえば、そちらのほうが付き合いやすくはあります。「営業部門」は基本的に「仕事をする」前提で話をしてくれるからです。たとえば、こちらの目当てのタレントが無理でも「代わりに新人で面白い子がいるんですが」といった提案をくれることもあります。マネージャーが窓口だとそういうことはなかなかありません。というか、売れっ子タレントのマネージャーは(偏見かも知れませんが)最初から「断りモード」のことが多くて。

マネージャー個人がすべてを仕切る体制になっていると、どうしてもマネージャーの好き嫌いが仕事に反映してしまう(ような気がします)。昔からのコネのある取引先が優先され、コネの弱い者はワリを食いやすくなります。出演可否を取るだけのことに2週間以上も待たされたり、ひどいときは返事をもらえないこともあります(これがわりとよくある)。事務所側もそれではイカンということで、システム的な受注体制を持つようになったのではないかと想像しています。

個人(マネージャー)が仕切る体制から、営業部門が組織的に対応する体制への変化。それは、いわば料理人一人が切り盛りする飲食店がファミリーレストランになるようなものです。効率化がはかられ業務の質が標準化されるとともに、客の間口が広くなる。その代り、社員がサラリーマン的になり味気なくなるというマイナス面も出てきます。

芸能事務所というところは体育会的な泥臭い組織ではありますが、時代の流れに逆らえないということはあるでしょう。ともあれ、その変化はウチのような、飲食業界に喩えればファミレス客のような業者にはうれしい限りであります。

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