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外タレを呼んだ話

一度だけですが、外国人タレントを呼んだことがあります。
世界がパンデミックに覆われる前の最後の年末、大手通信会社のプロモーションの会員制クリスマスパーティーが某所で行われ、そこに出演するアーティストをキャスティングさせていただきました。 

そのアーティストというのが韓国人の男性ボーカリストだったのです。私にとって外国人タレントのキャスティングはこれが初めて。ビザ申請ですとか、入国に必要な事務手続きはタレント事務所がやってくれましたが、ライブ会場に関する申請書類は私が各方面に聞きながら苦労して作りました。
メモが残っていたので、書類の記載事項をお見せします。ご参考まで。

・会場住所
・会場代表者名
・会場の母体となる運営会社名
・会場の母体となる運営会社の代表
・会場の母体となる運営会社の住所
・会場図面(舞台図面、控え室図面、客席図面)
・常勤職員名簿(5名以上)
・申立書 

最後の申立書のみ規定の書面で、それ以外は分かるように書面で出せば良いということでした。申立書とは何かというと「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」の「興行」に該当する箇所について認めるもの。漢字が続いたのですっ飛ばした方もいるかも知れませんが、平たくいえば「私たちは人身売買や売春はやっていません。暴力団関係者でもありません。れっきとした興行のお仕事です」ということの証明です。

細かい点では、「会場には13平方メートル以上の舞台があること、9平方メートル以上の控え室があること」といった基準もあって、それを証明するために会場の図面が必要になります。さらに職員の名簿は常勤スタッフを5人以上。それも名前だけでなく現住所に入社日、本籍地まで書かねばなりません。なぜそこまで? と愚痴をこぼしたくもなりますが、それだけ外国人を使う場にはトラブルが多いということでしょう。そんな手間のかかる書類作成ですが、会場の方は嫌な顔ひとつせず書いてくれました。プロです。 

そもそもなぜこの外国人アーティストを呼んだのかというと、事務所の強いプッシュがあったからです。今「彼」に力を入れているので特別料金で出演させていただきますと言われ、何人かの候補歌手と一緒にクライアントに提案すると「この彼でいきましょう」とあっさり「彼」に決定。私の本音は「外タレなんか扱ったことないし、参ったな」でしたが、事務所の協力もあってなんとか実現にこぎつけました。

ライブ前日、会場の照明・音響の技術者、アーティスト、バンドメンバーの顔合わせとリハーサルがありました。外国人タレントといっても日本の事務所に所属しているので、マネージャーさん始め関係者は全員日本人です。
このときのマネージャーさんはライブの技術的な打ち合わせも見事にこなしてくれました。音響機材など私にはちんぷんかんぷんでしたが、マネージャーさんが一つ一つ確認し、テキパキと指示を出してくれたので一安心。バンドは事務所が集めてくれたギター、ベース、キーボードの日本人ミュージシャンで、初顔合わせなのに一発で音合わせ完了。リハーサルで鳥肌がたちました。この人たちもプロ。プロの仕事に参加するのは本当に楽しい。

当日はトラブルもなく、大盛り上がりでライブは終了。
嬉しかったことがひとつ。ステージに出る前にバンドメンバーが円陣を組んで「気合入れていくぞ!」とかやるじゃないですか。メンバーとマネージャーさんが輪になるのを私が後ろで見ていたら、マネージャーさんに「呼び屋さんも、さあ、こっち来て」と輪の中に入れてもらったんです。
憧れていた一体感。ありがとう。またどこかで。


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