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【話題の新刊】『変動帯の文化地質学』 文化の基盤としての地質を視る

本日は夏至ですね。夏至といえば、イングランド南部にあるストーン・ヘンジとのかかわりが有名です。巨石の方向が夏至の日の日の出の方向と一致することから、当日は大勢の人が集います。ヨーロッパの石文化を象徴するような光景ですが、実は日本でも知られざる石の記憶があるのです。

「木の文化」として語られることが多い日本ですが、「石」を通して見るとどんな文化が見えるでしょうか?

人と石の関わりは、石仏や城郭の石垣などのように素材としての利用にとどまりません。自然石を信仰対象とする「岩石信仰」、文学作品に登場する岩石や鉱物、人々を魅了する奇岩、大地が生み出す農産物。米国の地質学者エルドリッジ・M・ムーアズが述べたように、Geology underlies everything(すべては地質学を基盤にしている)、とくに地震や火山などの災害と隣り合わせに生きる日本人にとって、地質は自然環境の基盤としてのみならず精神文化の基盤としても相即不離な存在なのです。

本書はそんな人と地質の関わりを問う「文化地質学」を題した日本で初めての成書です。

環状列石や磐座などの岩石信仰、仏教寺院における結界石、山岳霊場、磨崖仏、石仏、石塔、城の石垣、江戸時代の防獣柵「シシ垣」、近代建築物の国産石材、宮沢賢治をはじめとする近代文学への影響、観光・教育への展開まで、本書で示された多種多様な地質文化は、日本文化の根底に広がる大きな岩盤と言えるかもしれません。

大地の上に住む私たちの在り方を問う壮大な試みを、ぜひお読みいただけれ
ばと思います。


京都大学学術出版会 編集部より
2024年6月21日


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