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人生で二度と食べたくないと思ったものin北京

その昔、中国の北京で日本語を教えていた頃の話。

中国人の知り合いと一緒に昼ごはんを食べるため、あるレストランに入った。ちょっと珍しいものを食べようかということになり、オーダーは全てお任せした。

しばらくして、あめ色に輝く肉料理が運ばれてきた。見た目は豚肉の角煮みたい。おいしそう!

私は喜び勇んで、口にした。しかし、すぐに後悔が体の奥底から波打ってきた。

この味は何?味というよりも匂いか。これは、まるでまるで・・・・・・

動物園の匂い!

独特の臭みが口の中で満ち満ちていた。おいしそうに見えたのに・・・この究極のギャップは何???しかし、口に入れたものは、責任を持って飲み込まなければ。食材にも調理してくれた方にも悪い。そんな罪悪感にかられながら、決死の覚悟で飲み込んだ。

知り合いは、飲み込むことすらできず、打ちひしがれている。私は、今までに出会ったことのない、この肉の正体を聞いた。

何と、ラクダだったのだ!

あの砂漠で大活躍する、こぶがあるラクダ。その中でも、足の裏の肉球部分を煮込んだもので、珍しい料理の一つだそうだ。

食の大国・中国で、別に珍しい料理に遭遇することは、不思議ではない。むしろ、スリリングなことだ。これまで一応、私は出されたものはおいしくいただき、特に苦手なものはなかった。

でも、ラクダだけはどうしてもだめだった。挑戦する気持ちがゼロ。これ以上は、お箸ストップ状態。(もちろん、そのほかの料理はおいしく食べた)完全にラクダに白旗である。

このときから、二度と食べたくないと思ったものリストに「ラクダ」が入ってしまった。

日本語学校の授業で、留学生たちにこの話をしたとき、中国の学生はもちろん、だれもラクダを食べたことはなかった。

そう考えると私は忘れがたい、貴重な経験をしたことになる。だから、

「ありがとう!ラクダさん」

そして最後まで食べられなくて「ごめんなさい。ラクダさん」なのだ。


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