見出し画像

テキカカでシードルをつくる🍏その1

画像1

リンゴのテキカカ🍏
シードルに使うので丁寧にカゴに"収穫"しています。

画像2

画像3

リンゴの花が受粉すると上の写真のようにわさわさと実が膨らんでくるのですが、これをリンゴ同士の間隔を空けるためと栄養分の集中&肥大のために8割方落とします。この作業を「摘果」と言い、摘果によって摘まれた実を「摘果果」と言います。
摘果は摘果でも、6月には様子を見ながら「荒摘果」を、7月中には「仕上げ摘果」を済ませます。

ただ、美味しい生食リンゴを作るためには必要な作業だけれど、見方によってはお金と時間を捨てているとも言えましょう。

リンゴの生産現場は”捨てる”作業が大部分。
摘果然り、草刈りや不要枝などもそうです。

画像4

戦後、栄養失調問題を解決するため、リンゴは重宝され、高く取引されました。
果物単体で健康機能食品を名乗れる果物は指折りです。
ゆえにリンゴは”復興”の象徴ともされています。

ですが、現代では豊かな食とともに供給過多となり、わざわざリンゴを摂らずとも生きていけるように成りました。

栄養を摂ることより、見た目が重要視されるようになり、より丁寧な管理栽培が求められるようになりました。
ところが、薬かけが多くなり、労働時間は増えるものの、取引価格はそれに見合わない。
支出が多くなるばかりでやればやるほど赤字になっていくという負の連鎖。

今後も気候変動による温暖化で産地が北上していくことでしょう。
リンゴは基本的に冷涼産地の産物で、暑さに弱い果物です。

その分、虫が多くなり、病気にかかるリスクも増え、薬代がよりかかるようになります。
台風で傷が付いたり落ちるリスクも増え、一瞬にして努力が水の泡になることもありうるでしょう。

ビジネスにならなければやる人もいない。NPOであるならまだしも。
新規でリンゴ畑をやるというのは、実はとてつもなくハードルが高いのです。

産業の衰退は町の衰退にも繋がるわけですが、
産地を保護するためには、行政のサポートも欠かせないわけです。
むしろリンゴにおいては補助金でサポートして「準第三セクター」のような形にしないと、次第に衰退していくばかりという危険性を孕んでいます。

画像5

陸前高田市ではリンゴは歴史ある大きな産業ですが、市の中でも米崎町という地域での「米崎リンゴ」のブランドがあります。
ただ、地域が限定されているため、絶対量が少なく、ゆえに市場価格を上げようにも難しいものがあります。

市としては、補助金を出しているのは一部の”生食用”のリンゴの品種のみで、近年大いに需要が高まっている紅玉やあかねといった加工向け品種にはサポートがありません。
”補助があるからリンゴを管理している”という兼業リンゴ農家は少なからずいます。つまり裏を返せば”補助がなければやらない”のです。

上記に述べたように、市が生食用リンゴでどう将来を見据えているのだろうということは甚だ疑問です。
加工品種の導入や高密植栽培といった現代に合わせたやり方をしないと廃れるばかりです、と何度も市にお願いをしていますが、いつも曖昧な返事をされて終わります。
もうコトが起こってからでは遅いのです。

画像6

私がシードル自体を造ることには、そうしたメッセージ性も込めていますが、摘果果シードルを作ることには「摘果果は捨てるものだ」「摘果果は美味しくない」というリンゴに対する概念に問題提起をし、今一度産業やまちづくりを見つめ直そうという”裏テーマ”があるわけです。

そもそも、日本では瑞々しく甘い大きなリンゴを作ることに技術を集約し、歴史を成してきましたが、シードルを作るリンゴは本来ゴルフボールより少し大きくらいで、管理も楽です。見た目も気にしません。
ちなみに、次の写真は、シードルの銘醸地フランス・ブルターニュのシードル用のリンゴです。摘果とは、と言った感じですね。

画像9

摘果果シードルにおいては、「こんなに酸が高くて苦味のあるリンゴでお酒を造っていいの?」という生食=大正義の考え方に”加工”という道を提示することができればと思っています。
「むしろ加工用という道もあるんだよ」、と。

画像7

ただ、この摘果を使うためには薬を制限してあげる必要があります。
というのも、農薬規定で薬をかけてから何日以内は販売したり使ったりしてはいけないことになっています。
これは薬毎に違いますがほぼ30日です。

そのため「薬をかけない」というリスクが伴い、生食用リンゴを作っている農家からすればわざわざ摘果果のために薬をかけない期間を設けるということは普通考えられません。

摘果果シードルはリンゴ農家の所得向上に繋がればいいなという思惑もありますが、そこは調整が必要ですね。
現時点では自社農園で栽培管理したリンゴのみを用いているので、思うようにコントロールできている面もあります。

"間引く"作業自体はリンゴだけではなく農作物全般に言えますが、この摘果リンゴは酸が高くビター。ほぼ甘味はないですが、香り高く奥行きが生まれるためシードル用のリンゴとしてはむしろもってこい。

そもそも生食用リンゴはほぼ作るつもりが無いので、シードル用にはシードル用の栽培を、ということで。

摘果果シードルは初めての取り組みなので、6月初めに薬をかけたっきり病気にやられないかハラハラしていましたが、やはり全然大丈夫なことがわかったので、安心でした。

画像8

まずは絞ったところ、Brix7.4、搾汁率は約50%でした。
思ったよりも香り高くタンニンも程よく奥に甘味もほんのり見つけられます。

とりあえずは試作品として、やってみます。


私のnote、読んでくださってありがとうございます。 もしも「いいな」と思っていただけたら、感想と一緒にRTやシェアしていただけると嬉しいです。