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ザ・三島由紀夫な写真集

Yukio Mishima:
The Death of a Man

「三島由紀夫写真集:男の死」
photo by Shinoyama Kishin
October 2020 (Rizzoli)

三島由紀夫没後50年である。
あの衝撃の割腹自殺から50年。
その節目ともいえる年に、三島由紀夫の写真集が刊行された。
撮影は篠山紀信。撮影されたのは、三島の死の数か月前。
長らくお蔵入りになっていたらしい。

写真集のタイトルがThe Death of a Man, 男の死、である。
なんとも衝撃的ではないか。中身も相当に衝撃的だ。

三島ファンには申し訳ないのだが、私は三島由紀夫にほとんど興味がなかった。読んだ作品は「命売ります」ぐらい。熱心なファンの多い作家ほど、みんなが読んでるなら、じゃあ私は読まなくてもいいかな、と思ってしまう。

「耽美」なものが苦手なので、たぶん食わず嫌いというのもあるだろう。谷崎潤一郎も読んだことがなかったが、何年か前に「細雪」を読んだら、めっぽうおもしろかった。オースティンの「高慢と偏見」みたいじゃん。

というわけで、私の三島由紀夫に対するイメージは、かなり貧弱なステレオタイプのそれだと思う。

この本は、珍しくサンプルページが事前に送られてきた。ふだん扱ってる学術書ではなく、写真集だからか。
うーん。かなり。すごく。私のイメージする「三島由紀夫」だ。「ザ・三島由紀夫」なのだ。

三島は1963年に「薔薇刑」という裸体写真集を出しているが、それに近いのかも。なんというか、裸体が多い。鍛えあげた肉体美を惜しげもなく披露している。ただ、今回は、すべてが「死」の場面だ。フェンシングの剣が胸に刺さっていたり、海辺で(全裸で)溺れていたり、(全裸で)吊るされていたり、そして、包丁で切腹していたり。。。

後半は、「盾の会」だろうか。軍服姿の男性たちを従えた三島由紀夫。うーむ。「ザ・三島由紀夫」だなぁ。

じつはちょうど、三島由紀夫を読もうかと思っていたのだ。というのも、最近好きになった作家である平野啓一郎さんが、三島由紀夫を好きで、近々「三島由紀夫論」みたいなのを出すらしいのだ。平野さんは、20代のころに「英霊の声」論という三島由紀夫についての論文を書いており、いつかはまとまった三島由紀夫論を書きたい、と思っていたらしい。

平野さんが好きというなら、これは読まねば。。。と思っていた矢先の衝撃の写真集である。ああー、やっぱ苦手かも~

この写真集のサンプルページで、日の丸を背景に、ふんどしをキリリと巻いて、日本刀をたずさえて直立する三島由紀夫のとなりで、なぜか学生服の横尾忠則が、だらしなく片足を投げだして猫背で座っている写真があり、ものすごい違和感なのだが、なぜかほっとする。

洋書の写真集や画集は、日本の出版社から日本語版が出ると、日本国内では販売権がなくなってしまう。いちおう、版権が日本の出版社のものになるかららしい。とはいっても、Amazonなんかもあるから、日本語版が出ても、英語版が買えないってことはないのかもしれないけど。今のところ、日本語版がでるかどうかは未定らしい。

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