シャーロック・ホームズ アメリカへ行く そしていきなり最後の事件
Rafferty's Last Case:
A Minnesota Mystery Featuring Sherlock Holmes
「ラファティ最後の事件:featuring シャーロック・ホームズ」
Larry Millett
April 2022 (University of Minnesota Press)
シャーロック・ホームズである。
うむ。シャーロキアンというほど熱心なファンではないが、ホームズとはそれなりのお付き合いになる。
たぶん、さいしょは子どものころ読んだ児童書のシャーロック・ホームズ・シリーズ、みたいなものだったと思う。あんまり覚えていないけど、焦げ茶色のしぶい表紙だったような気がする。
そのあとは、NHKでやってたイギリスのテレビドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』を見た。ジェレミー・ブレットが主演の。露口茂の吹き替えがすごく合ってたなぁー。ワトソン役は、デビッド・バークはあんまり覚えていなくて、エドワード・ハードウィックのイメージがつよい。
何度も再放送をしていたから、ひまなときに見たり見なかったり。『ジェシカおばさんの事件簿』同様、テキトーに見るのにちょうどいいドラマだった。
あとは、『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』っていう映画も見たなー。学生のころのホームズとワトソンが古代エジプトの謎に挑む、という話で、製作総指揮がスピルバーグ。いまネットで画像を見ると、若いワトソンがハリー・ポッターみたい。
あとは、アニメで『名探偵ホームズ』というのがあった。なぜかみんな犬のキャラクターになってた。あんまり覚えていないから、見てなかったのかも。でも、いま調べると初期の監督・演出は宮崎駿だったらしい。
そこからしばらくごぶさたで、ロバート・ダウニー・ジュニアの映画『シャーロック・ホームズ』と、イギリスのテレビドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』で、2000年代の新しいシャーロック・ホームズを楽しんだ。
竹内結子主演の『ミス・シャーロック Miss Sherlock』もおもしろかったな。竹内さんが生きておられたら、シーズン2もあったんだろうか。とても残念だ。
でもまあそのぐらい。たいして熱心でもない私でも、この程度はみている。
『シャーロック・ホームズ』の映画化やドラマ化のほかに、『ヤング・シャーロック』みたいな、パロディーというか、関連作品も入れたら、小説、マンガ、アニメ、映画、ドラマなど、きっといままでにたくさんの作品が作られてきただろう。
さて、今回紹介するのは、そんな『シャーロック・ホームズもの』のひとつ。2022年4月に刊行された本書は、シリーズ第9作目にして最終巻。シャドウェル・ラファティというのが主人公らしいが、探偵なのかな。
第1作は、2011年の『シャーロック・ホームズと赤い悪魔』Sherlock Holmes and the Red Demon。
この物語は、はじまりがおもしろい。1994年に、鉄道経営者のジェームズ・J・ヒルの歴史的邸宅を修復していた職人が、長いあいだ知られていなかった隠し壁のなかの金庫を偶然見つけるのだ。その金庫の中には、なんとジョン・H・ワトソン医学博士の署名入りの手書きの原稿が!
原稿には、鉄道王のジェームズ・J・ヒルと彼のグレート・ノーザン鉄道を脅している”赤い悪魔”とよばれる凶悪放火犯を追って、ホームズとワトソンがミネソタにやってきた話が記されていた。
じっさいに1894年にミネソタ州の松林で発生した大ヒンクレー火災を背景に、ホームズとワトソンがミネソタで大活躍するらしい。ちなみに鉄道王のジェームズ・J・ヒルも実在の人物で、グレート・ノーザン鉄道の最高経営責任者だ。このへん、巧妙に虚実とりまぜているあたりが、アメリカの読者を引きつけたんだろうなぁ。
でも、この第1作の解説の部分には、シャドウェル・ラファティはでてこない。いったいラファティとは何者か。しかたがないので、各作品の解説をぽつぽつ読んでいった。
じっさいに本を読まないで、解説だけで内容を把握しようとするのって、かぎられた制約のなかで推理する”安楽椅子探偵”みたい?
でもないか。。。
第1作と同じ2011年に刊行されている(おそらく第2作目?)『シャーロック・ホームズと氷の宮殿の殺人』Sherlock Holmes and the Ice Palace Murdersの解説によると、シャドウェル・ラファティは、「社交的な酒場の主人」gregarious saloonkeeperで、「パートタイムの私立探偵」 part-time private investigatorと書かれている。なるほど。地元でバーをやってて、たまに探偵のまねごとみたいなことをしている変わり者ってところか。
それにしても第9作まであるってことは、それなりに人気があるってことだよね?
それに第9作目にして最終巻は、そのシャドウェル・ラファティが殺されてしまっているのだ。ラファティを殺した犯人をつきとめるため、ホームズとワトソンはまたしてもミネソタにやってくる。
けっこうおもしろそうだと思うけどな。
翻訳作品がないのかと思っていたら、2016年に原書房から『シャーロック・ホームズ アンダーショーの冒険』デヴィッド・マーカム編というのがでていて、そのなかに「魔笛泥棒」ラリー・ミレット、をみつけた。あ、ラリー・ミレットっていうのが、この全9作のホームズものミステリーを書いた著者ね。『シャーロック・ホームズ アンダーショーの冒険』は、ホームズもののパロディというかそういう作品を集めたアンソロジーらしい。
どんな作品か、今度読んでみようかな。
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