第1回ワークショップ「まだ見ぬ人との共創を生むコミュニケーションデザイン」
2020年12月5日、ついに第1回共創ワークショップを開催しました。
テーマは「まだ見ぬ人との共創を生むコミュニケーションデザイン」。
霞ヶ関の経済産業省内にある未来対話ルームで行われ、
集まった官僚の皆さんは、なんと参加希望者多数の高倍率のなか来てくださったとのこと。(!)
1回目ということもあり、美大生も官僚もどこか緊張しつつ、ワクワクしながらのスタートになりました!
タイムテーブル
デザインブリーフィング
まず、全体に向けてリーダー塩谷によるデザインブリーフィングが行われました。
ふだんデザインに触れる機会の少ない参加者の方に向けて、デザインでの課題解決について、事例を交えながら説明がありました。
今回は、社会の問題にデザインが貢献した例として、田中美帆先生からミルトン・グレイザーの「I♡NY」ロゴのエピソードも紹介されました。
美大生による作品紹介
美大生が日頃の制作物を官僚に向けて1人1分でプレゼンしました。
グラフィックデザイン、イラストレーション、建築、クリエイティブイノベーションなど、様々な専門分野の9人の美大生の作品が一気に披露されました。
初めて美大生の作品を見た官僚も多く、プレゼン内容をメモしたり写真を撮ったりする様子も多く見られました。
作品のクオリティや美大生の課題意識に刺激を受け、ワークショップに向けて全体の熱量も上がっていきました。
テーマ設定 ー官僚が出会いたい「まだ見ぬ人」とは誰なのか
今回のテーマ「まだ見ぬ人との共創を生むコミュニケーションデザイン」は、美大生と官僚の対話から生まれました。
記念すべき第1回目のワークショップ、美大生の良さが生かせて官僚も気後れすることなく加われる、広すぎず狭すぎないテーマ設定とは何なのか...?
互いのイメージをすり合わせ、何度も原点に立ち返りながら、話し合いが進められました。
官僚が抱える、コミュニケーションについての課題を解決するツールという大まかなテーマを決め、
内部のやり取り・外部に向けた発信・企業や学生へのアプローチなど、様々な課題を洗い出す中で「まだ見ぬ人」というキーワードが飛び出しました。
現在、官僚が新しいことを始めようとしても、人づてにつながっていく以外の方法はありません。
経産省の外側にいる人にとっては、官僚と言うと冷たくてロボットのようなイメージで、官僚に対して提案や発信をすることは、どうしてもハードルが高くなってしまいます。
官僚側も、特定の企業や担当者と話す機会が多く、興味関心が合う人と出会う機会はなかなか無いとのことです。
問題意識を持ったとしても、一緒に働いてくれる「誰か」に出会えるかどうかは、完全に運任せ。外に出てたくさんの人と出会いたくても、「霞ヶ関の内部に閉じ込められている」かのような現状があります。
そこで今回考えたのは、官僚に対するハードルを下げて「まだ見ぬ人」と出会うためには、デザインに何ができるのか?ということ。
問題意識を持っている人、官僚を遠い存在だと思っている人、何かしたいと思いつつどう動けばいいかわからない人ー新しい共創につながる可能性を持った人は、世の中にたくさんいるはずです。
まだ出会えていない、でもたくさんの可能性を秘めている存在。
それが官僚にとっての「まだ見ぬ人」。
経産省の外で意欲を持っている人と官僚との共創につながるような、出会いを仕掛けていけるアイディアを、デザインの力で。
悩みながらも、美大生・官僚双方の可能性が感じられるテーマになりました。
アイディア出しとワーク ー各チームの様子
いよいよここからは各班に分かれてアイデア出しをしていきます。
まずは、官僚から美大生に向けて課題を伝えるインプットトークから始まりました。美大生が用意した3つの質問に、各チームの官僚が順番に答えていきます。
3つの質問
Q1あなたにとって、「まだ見ぬ人」とはどんな人ですか
Q2「まだ見ぬ人」と出会えたら、一緒にどんなことをしたいですか
Q3「まだ見ぬ人」と出会えていない原因は何と思われますか
そこで浮かび上がった課題を解決するためのアイデアを、約1時間のワークの中で考えていきます。
Aチーム
Aチームにとっての「まだ見ぬ人」は、子どもたちや普段経産省の仕事で関わる相手以外の人。もし出会えたら、官僚としてだけではない、1人の人間として全く新しい視点を得たい、普段と全然違うことをしてみたい。出会えていないのは、今している仕事の範囲での交流にとどまってしまい、全く知らない分野の人に話を聞きに行く機会や時間が足りないからでは、という声がありました。
そこから、官僚の働き方や、職場の雰囲気、服装などについて話題が広がり、官僚の堅いイメージを柔らかくし、まだ見ぬ人との接点を生むアイデアを探っていきました。趣味が入り口になるのでは、まずは服装から変えてみるとよいのでは、官僚が子どもたちのいるところに出張してみるのはどうか…など、様々な方面からアイデアが出ました。
Aチームは和やかな雰囲気の中、アイデアが次々に生まれ、美大生がどんどん模造紙に絵を描いていくのが印象的でした。
Bチーム
Bチームの「まだ見ぬ人」は現場で政策を使う人や、新しい価値観を持ったZ世代。普段仕事で会う人の種類が限られていて、政策に関して肯定的な意見しかもらえないという悩みがあり、もしまだ見ぬ人に出会えたら、本音の意見を聞きたいということでした。
政策を必要としている人が官僚にアクセスできる・課題意識を共有する仲間を見つけられるなどの方法を考える中で、オンラインで本音で話すには?肩書きよりもその人の課題意識が目に見えるような方法はあるか?など、どんどん考えが深まっていきました。
Bチームは、外部の人が官僚の今までやってきたことや、これからの課題を知ることができるポートフォリオを作りたいというアイデアを詰めていく中で、政治家や官僚のプロフィールが掲載された「政官要覧(せいかんようらん)」という本が出てきたのがひとつのきっかけになっていました。これがアイデアにどうつながっていくのでしょうか?
Cチーム
Cチームの「まだ見ぬ人」は、「立場は違えど共通の課題意識を持っている人」。似た課題意識を持って個々で行動している人とつながることができれば、様々な可能性が広がりそうです。立場を背負っているためなかなか本音で話せない状況をどうするかが課題でした。また、このチームは他省との連携についても考えました。
そこから、経産省が人と人とがつながる場所になったら良い、そのためにはどんな空間があればいいかに話が広がり、現在の経産省のロビーや食堂を活用する具体的なアイデアが出ました。また、立場ではなく個人が見える方法として、オンラインのアートボードを活用したプロフィール作りなど、ワクワクするアイデアがたくさん生まれました。
Cチームは、官僚の「こうしたい!」を元に、次々と現実的なアイデアが生まれていくのが印象的でした。
アイディア発表
ワークショップのまとめとして、話し合いで出たアイディアをチームごとに発表しました。
Aチームは、1番多い4つのアイディアを提案。
1つ目のアイディア「〇〇好き集まれ!!〜共創型政策形成に向けて〜」は、官僚がインカレサークルを作り活動する案。
アニメ、アウトドア、スポーツなどの趣味や興味分野を共有し、「まだ見ぬ人」と出会う場にしようというアイディアです。
ちょっと変なネクタイを官僚がつけることで、官僚の堅いイメージを変えていきたいというのが、2つ目のアイディア「ヘンなネクタイの日」。
男性官僚が毎日つけているアイテムに変化を加えることで、挑戦しやすくなるようにしています。
3つ目のアイディア「こども官僚〜僕が官僚になったら〜」は、文字通り「もし自分が官僚になったら何をするか?」という子どものアイディアを、官僚が実現化するというもの。
子ども達に官僚を身近に感じてもらえそうですが、逆に官僚は試されることになりそうです。
官僚の人間味を知ってほしいという狙いで提案されたのは、4つ目のアイディア「情熱官僚」。
経産省職員の裏側を特集することで、「冷たくて怖そう」な官僚へのイメージの払拭を狙います。
Bチームが提案したのは、「シン・セイカンヨウラン」。
現在、官僚について知ることができる数少ない手段が「政官要覧(せいかんようかん)」です。
国会議員や一部の官僚について、来歴や政策などのデータを見られる書籍ですが、官僚に関しては一定の役職についている人しか載っていない上、あまりの分厚さに、正直手に持っただけで挫けそうです...。
そのデメリットを解消すべく、データに落とし込んで、気軽に閲覧できるように考えたのがこのアイディア。
共創によって、美大生が使うようなポートフォリオサイトと、マッチングアプリを掛け合わせたイメージに辿り着きました。
Cチームは、「プロジェクトボードのジグソーパズル」と「カフェ」という2つのアイディアを提案しました。
1つ目は、様々なプロジェクトやそれに関わる官僚のプロフィールを、ジグソーパズルのように組み替えて表示できるオンラインツール。
2つ目は、経産省入り口横のロビーに、交流やプロジェクトの拠点になるカフェを作るアイディアです。
習い事や外国語講座など様々な人の特色を生かしたイベントを開くことができたり、カフェにいる人のプロジェクト情報がリアルタイムでスクリーンに投影されたり、ワークショップで出たアイディアがギュッと詰まっています。
各チームの発表後は、参加者による投票タイムが設けられ、アイディアに評価シールが次々と貼られました。
まとめ ーワークショップを終えて
美大生×官僚 共創デザインラボの初めてのワークショップは、盛り上がりと共に終了しました!
ワークショップで生まれたアイディアのうち、票が集まった「ヘンなネクタイ」「シン・セイカンヨウラン」「カフェ」は、美大生によってデザインで可視化されることになります。
今後への期待も盛り上がりつつ、美大生も官僚も笑顔で終わることができた、大成功のワークショップになりました。
次回ワークショップ
次回のワークショップは、「空飛ぶクルマ」がテーマ。
エアモビリティ政策室の皆さん、そして実はエアモビについて詳しくは知らない...という官僚の皆さんと、日本の空の未来について妄想していきます!
次回の記事もぜひ、読んでいただけると嬉しいです。
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