美大生×官僚 共創デザインラボについて
はじめまして!美大生×官僚 共創デザインラボです。
このプロジェクトは、美術大学生を中心とした学生と官僚有志による、デザインコミュニティーとしてスタートしました。
「デザインラボ」という名前には、「実験をするようにトライアンドエラーを繰り返して、デザインで様々なチャレンジをしていきたい」 という想いが込められています。
今までお互いのことを全く知らなかった、真逆の存在とも言える、「美大生」と「官僚」。
グラフィックデザインや建築など美大生が持っている技能と、官僚の知識や経験を組み合わせ、「共創」を進めていくのがこのコミュニティーの柱です。
政策やコミュニケーションなど官僚が抱える様々な課題に、学生視点・デザイン視点でアイディアを出していくことで、新しい可能性を探っていきます。
主な活動として、美大生と官僚が参加するデザインワークショップを開催。
初年度となる2020年度は、3回の開催を予定しています。
このnoteでは、ワークショップなどの活動報告を、参加美大生2人が記事にしていきます。
共創デザインラボ発足のきっかけ
2020年7月末、2人の美大生と講師が経済産業省を訪れたことから、この共創デザインラボは始まりました。
訪ねた先は、デザインに興味を持ち、現在の省庁のあり方に課題意識を抱えている、3人の官僚。
「週一官僚」の小菅隆太と、講師の田中先生が知り合いだったことから繋がった、偶然の産物とも言える場でした。
「日本のデザインは下請け的・専業的になっているのではないか」
「海外のように、日本でもデザインで行政の課題を解決していくことができるはず」
「能力を持っている美大生も、どんどん社会に出ていくべきだ」
正反対の存在にも思えた美大生と官僚ですが、話し合いをする中で、お互いの感じている課題に共通点が多くあることがわかってきました。
コラボレーションをすれば、新しいことができるのではないか。数時間のうちに、そんな機運はどんどん盛り上がっていきました。
そしてこの動きをコミュニティー化し、同じ意識を持った人達をつなげたいという流れも、この話し合いのうちに自然と出てきました。
研究会のようなコミュニティーを作りたい、デザインの実験ができるラボのような存在にしたい。
美大生と官僚の出会いによって出発した共創デザインラボは、最初に思い描いた場を実現するべく、成長を続けていきます。
官僚と美大生、それぞれの課題意識
発起人美大生 塩谷雄大
(多摩美術大学グラフィックデザイン学科4年)
日本は社会課題解決、社会変革へのデザインの活用が圧倒的に遅れている。
これは私が去年アメリカのデザインスクールへの交換留学で感じた危機感です。
日本の大学では一般的に食品の新聞広告を想定で作るなど、媒体が設定された課題を個人で制作をしますが、留学先では「市議会議員と街の住みやすさや魅力を高めるデザインを考える」や「環境問題に対しての社会ムーブメントをデザインする」など本質的な課題をチームで、リサーチや議論を通して発見、構想し、映像、アプリ、建築まで様々な解決方法を提示するというものでした。
その時私は多くの社会課題を抱える日本においてこそ、美大生がデザインを本質的な課題解決に実践する場所が必要なのではないかと感じました。
そしてこの想いが、帰国後に偶然が重なり出会った官僚の皆さまの熱い想いと合わさり、この共創デザインラボを立ち上げるに至りました。
発起人官僚 半澤 彩
(大臣官房グローバル産業室係長)
中央官庁で働く国家公務員、いわゆる官僚と呼ばれる我々の仕事は皆さんの生活をよくするための政策を考え、理解してもらい、使ってもらうことです。
しかし、役人の作る資料はわかりにくい、また、政策手法が必ずしも適切ではないという声もよく聞きます。
政策を考えながら、本当に伝えたいことが伝えたい人に届いていないのではないか、必要な人が使えない政策になっているのではないかという課題意識を抱えていました。
その裏には、政策立案におけるデザインの重要性が職場において十分に理解されていないという実情もありました。
そこで、美大生という、物事を伝え方や本質的な課題を解決する仕組みをデザインすることが得意な方々と一緒に社会課題を検討することで、政策立案の新たな形につなげていけないかと考え、今回共創デザインラボを立ち上げました。
日常で交わることのない我々官僚との交流で、無限の可能性を秘めた美大生の皆さんに
デザイン×社会課題といった新たな視点や経験を提供したいという想いもあります。
長期的には、省内外で共感してくれる人を巻き込み、教育・医療・働き方といった幅広い分野でデザインの事例を政策に取り入れていきたいと考えています。
まだこのプロジェクトは始まったばかりですが、将来的にデザインで社会を創っていく未来への大きな1歩になる可能性を秘めていると確信しています。
共創デザインラボの目的
そもそもデザインは、ブランドの価値や競争力の向上、そしてイノベーションの手段としても、世界的に注目されています。
デザインとは本来、目標設定など問題解決のスタート地点から、最後のビジュアル化の段階まで、全てを設計することを指します。その対象は広告やパッケージ、製品を飛び越え、コミュニティや教育にも広がりつつあります。
ビジネスだけではなく、政策立案や社会課題解決、まちづくりなどに、デザインやデザイン思考を取り入れ、正解のない問題に対してアプローチしようとしているのです。
一方日本では、デザインと言うと広告やプロダクトのイメージが強く、装飾的・表層的なものと誤解されがちです。
美術大学も例外ではなく、多様な学生が問題意識を持ってデザインに取り組み、社会と関わりながら課題解決を実践している海外の大学に、大きく遅れをとっている現状があります。
こうした状況を官僚の皆さんと共有し、デザインの可能性を発信していくのがコミュニティーの目的のひとつです。
美大生と官僚は、日本が抱える様々な課題を解決することができる大きな可能性を、それぞれ持っています。
しかし現実として、美大生はただ絵が上手い人・変わり者の印象が強く課題解決とは縁遠い存在に思われたり、官僚も堅いイメージを持たれがちで省外に出ていきづらかったりと、その可能性を十分に生かし切れていません。
共創デザインラボにおけるコラボレーションでそうしたマイナスイメージを少しでも取り除き、課題解決の選択肢を増やしていきたいと考えています。
活動内容
共創デザインラボでは、主な活動として、以下の3つを行っています。
◯ヒアリングとリサーチ
まず現状を知るために、官僚へのヒアリングを行っています。テーマに詳しい官僚から、課題や期待している点などを直接伺うほか、美大生の率直な疑問をぶつける場にもなっています。
並行して、美大生自身が関心領域や海外の事例などリサーチを進め、ワークショップに向けて準備をしていきます。
◯テーマの絞り込みとワークショップ設計
ヒアリングやリサーチで広げた知識をもとに、よりデザインが活用できるテーマ設定へ絞り込んでいきます。
また、美大生と官僚双方がアイディアを出しやすいワークショップの進行を組み立てます。
絵を描きながら考えていったり、オンラインツールを活用したり、アイディアを形にするために様々なアプローチを取り入れていきます。
○ワークショップ開催、アイディアの可視化
デザインワークショップ当日は、美大生と官僚がチームに分かれてテーマについて自由に発想を広げていきます。
そこで出たアイディアの中からいくつかを選び、美大生が「デザインプレゼン」という形で可視化します。完成したデザインプレゼンは、次回のワークショップでお披露目されます。
組織構成
共創デザインラボは、有志の美大生と経産省官僚によって構成されています。
コア参加者として、ヒアリングやリサーチ・ワークショップ準備など全面的に関わるメンバーの他、ワークショップのみ加わるスポットメンバーなども参加しています。
ワークショップ開催時は、美大生約10名と官僚約10名がチームに分かれてディスカッションを行っています。
参加メンバー
美大生
塩谷 雄大(多摩美術大学グラフィックデザイン学科4年)
秋丸 かすみ(多摩美術大学グラフィックデザイン学科修士1年)
伊波 航(横浜国立大学建築・都市環境系学科2020卒業/同大学院2021入学予定)
安富 奏(多摩美術大学グラフィックデザイン学科2年)
三枝 響子(東京藝術大学音楽環境創造科1年)
前田 大地(多摩美術大学グラフィックデザイン学科3年)
道 日向子(多摩美術大学グラフィックデザイン学科2年)
伊藤 音愛(武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科1年)
新名 さくら(武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科1年)
省庁職員 (官僚)
海老原 史明(経済産業省)
半澤 彩(経済産業省)
水口 怜斉(経済産業省)
アドバイザー
田中 美帆 (株式会社cocoroé・ソーシャルデザイン論 講師)
注目ポイント
1. 美大生と官僚がいる!
正反対の存在として見られがちな両者が、それぞれの特性を生かしてコラボレーションしていきます。
2. WSで出たアイデアが可視化される!
ワークショップ終了後、美大生がアイディアをビジュアル化し、次のワークショップで発表します。目に見える形になるのも、美大生が関わっているからこその魅力です。
3. 継続的かつ広がりのあるコミュニティー
デザインや政策の可能性をたくさんの人に知ってもらえるよう、活動を続けていきます。
今後のスケジュール
初年度はまず、3回のデザインワークショップを行う予定です。
官僚と美大生でチームを組み、3回それぞれ異なるテーマについて一緒にアイディアを出し合っていきます。
また、アイディアを出すだけではなく、デザインで可視化し発信していくことも大きな目的です。
noteの記事ではもちろん、様々なメディアを通して、たくさんの人に活動を知ってもらえるよう頑張っていきます。
今後の展望・意気込み
共創デザインラボでは、来年以降も継続して活動していくことを予定しています。
他省庁、メディア、企業、NPOなどたくさんの人達を巻き込みながらコミュニティーの輪を拡大し、デザインの持つ可能性を広く社会に発信していきたいと考えています。
ここまでお読みいただきありがとうございました!引き続きワークショップの報告記事などもアップする予定ですので、そちらもよろしくお願いいたします。
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