薬と再生医療―③次世代の医療「個別化医療」―
こんにちは!
きょうです!
今回は
私の研究の専門分野であるお薬について
特に「個別化医療」をトピックに
お話しようと思います。
この記事は5分で読めます!
これからの薬や医療は
どんなふうに開発・展開されていくのか、、
分かりやすく説明しようと思いますので
是非、読んでみて下さいね。
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目次
1.個別化医療ってなに?
2.個別化医療のメリット
3.個別化医療を実現する薬や検査
4.個別化医療の課題
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1. 個別化医療ってなに?
個別化医療とは
一人ひとりの体質や病気の種類に合わせた
治療を行うことです!
例えば、患者さんの体質や病気に関連している
遺伝子をより細かく調べて、
個々の患者さんの体質や病気のタイプに
合わせて治療を行うことを指します。
英語では
「パーソナライズド・ヘルスケア(PHC)」
「パーソナライズド・メディシン」
とよばれています。
また、一人ひとりに合わせた治療、
という意味で
「オーダーメイド医療」
「テーラーメイド医療」
「プレシジョン・メディシン(直訳すると精密医療)」
のように言われたりしますね。
これまでの医療では、
同じ病気と診断された患者さんには、
同じ治療が行われてきました。
しかしながら、同じ治療方法でも、
患者さんの体質によって
治療の効果や副作用の現われ方に個人差があります。
近年研究が進むにつれ、
このような個人差には患者さんの遺伝子が
関わっていることがわかってきました。
また、これまでひとつの病気と考えられていた
病気を遺伝子やタンパク質などの分子レベルで調べた結果、
いくつかのタイプがあり、
全く同じではなかったということがわかりました。
そこで、同じ病気であっても、
それぞれの患者さんにあった治療ができないだろうか、
という発想から生まれたのが個別化医療なんです。
個別化医療では、
治療を始める前に遺伝子などを検査して
患者さんの体質や病気のタイプを調べ、
効果がより高いと期待できて、
副作用がより少ないと考えらえれる薬を投与します。
最近では、個々の患者さんの遺伝子情報を
より詳細に調べることで、
一人ひとりに合わせた最適な治療を行う取り組みが始まっているんです。
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2.個別化医療のメリット
個別化医療によって、
より効果が期待される治療を選ぶというだけでなく、
効果が見込めない治療を避けることで
副作用リスクを減らすという選択肢も出来るようになりました。
合わないかもしれない治療をいくつも試さずに、
早くから自分に合った方法で
治療を行うことができれば、
早く社会生活に戻ることにつながり、
早期の仕事復帰もできるようになりますよね。
このように個別化医療は患者さん自身にも、
家族や周りでサポートする人たちにも
メリットがあるんです。
また、医薬品の開発においてもメリットがあります。
個々の病気では臨床試験が難しい場合でも、
同じ遺伝子の特徴をもつ複数の病気をまとめることで
臨床試験が可能となり、
効率的に新しい薬の開発が進むケースがあります。
総じて医療の発展にもつながると期待されています。
個別化医療は、現在、特にがんの領域で研究が進んでいます。
がんの発生は、個別化医療の応用に
合っていることが背景にあります。
私たちのからだは細胞でできています。
一つひとつの細胞の中には遺伝子があり、
この遺伝子によって細胞のさまざまな働きが保たれているのです。
がんは、正常な細胞の遺伝子が変化してがん細胞となり、
どんどん増殖する病気です。
この遺伝子の変化のことを、
「遺伝子変異」って言ったりします。
がんの発生には多くの遺伝子が関わっていることがわかっています。
そして、どの遺伝子に変異が起こるかは、
患者さんごとに異なっています。
これと同時に、
ある遺伝子変異に対して、効果のある治療薬の開発が
進みました。
そのため、患者さんの遺伝子のタイプを調べること
(遺伝子解析)によって、
治療薬の効果が期待できる患者さんを
特定できるようになったのです。
こんな感じで患者さんに合わせた個別化医療がさらに発展しました。
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3.個別化医療を実現する薬や検査
個別化医療では、
患者さんの病気の進行における遺伝子の変化などを調べて、
その遺伝子変異に対応する治療薬が使われます。
このような治療薬の一つが、「分子標的薬」です。
また、特定の薬剤の効果を予測するために
「コンパニオン診断薬」という検査薬が用いられます。
コンパニオン診断では、使用したい薬の効果に関連する
一つの遺伝子変異の有無を調べて、
患者さんにその薬の効果が見込めるかどうかを検査します。
また2019年からは、がん治療の分野で「遺伝子パネル検査」
という検査も行われるようになりました。
遺伝子パネル検査では、病気に関わるたくさんの
遺伝子変異を一度に調べることができます。
分子標的薬
従来の薬は、異常な細胞だけでなく
正常な細胞にも攻撃的に作用してしまうのに対し、
「分子標的薬」は、病気の原因に関わる特定の分子だけを
選んで攻撃するという特徴があります。
従来の抗がん剤には、がん細胞の活発な増殖を抑える
作用の薬がありますが、がん細胞だけでなく、
正常な細胞の増殖も抑えてしまうため、副作用がおこります。
胃腸や皮膚、血液をつくる骨髄の細胞は細胞分裂が活発なので、
吐き気や皮膚のしびれといった抗がん剤の副作用が
出やすくなるのはこのためです。
コンパニオン診断薬
ある治療薬が患者さんに効果があるかどうか、
治療の前にあらかじめ検査することを、コンパニオン診断といいます。
その診断のために使う薬が、コンパニオン診断薬です。
コンパニオンとは「ともなう」という意味で、
コンパニオン診断薬と治療薬は原則として1:1で対応しています。
個別化医療の治療薬の有効性を高め、
より安全に使うためには、
患者さんがその治療薬を使う対象であるかどうかを
正しく見極める必要があります。
例えば、ある治療薬が特定の遺伝子Aに
変異がある病気に有効とします。
遺伝子Aに変異のない患者さんには効果が
期待できないので、
あらかじめ患者さんの遺伝子変異の有無を調べておきます。
このとき使われるのがコンパニオン診断薬です。
遺伝子パネル検査
技術の進歩により「次世代シークエンサー」とよばれる
遺伝子の高速解析装置を用いて、
病気の原因となる多数の遺伝子を一度に
まとめて調べることができるようになりました。
この遺伝子パネル検査によって、
これまでわからなかった遺伝子変異が発見されることもあります。
また、患者さんの遺伝子変異の組み合わせから、
より適切な治療を選ぶのにも役立つと期待されています。
遺伝子検査を行っても、患者さんの遺伝子変異に
対応する治療薬がまだ開発されていない場合など、
特定の治療が見つからないことも多くあります。
その場合は分子標的薬ではなく、
一般的な治療を続けるなど、別の方法が検討されます。
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4.個別化医療の課題
その他、倫理的な問題や社会整備も課題となっています。
個別化医療は、がん以外に、
呼吸器や神経系などの病気の治療にも広がりつつあります。
しかし、これまでの医療とは違った検査方法や治療薬を用いるため、
実施できる施設や専門的な人材が不足しているのが現状です。
また、検査は保険適応の範囲が限られています。
検査ができても対応する治療薬がまだ見つかっていないことも多く、
新しい治療薬や診断薬の開発が求められています。
加えて、遺伝子検査の品質や精度を確保するための基準の策定や、
解析結果の正しい解釈の方法なども検討する必要があります。
また、社会的な課題もあります。
遺伝子検査を行うことで、まだ治療法が確立していない
病気になるリスクが見つかったり、
遺伝性の病気の場合は家族にも検査結果が影響したりすることもあり、
倫理的な課題があります。
そのため、遺伝カウンセリングなどのサポート体制の充実が必要です。
また、遺伝子検査結果などの情報は、
本人や家族にとって非常に大切な個人情報です。
個人情報保護の観点からは、遺伝情報を扱う施設の
セキュリティや、データを扱う専門家の育成なども
社会的な課題といえます。
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今回は以上です。
この記事を読んで
少しでも、
「薬の開発って面白いな」
と思っていただけたら嬉しいです。
ありがとうございました!
きょう
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