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【詩】種

気付いたら

わたしは種で

気付いたら

わたしは地面に根を張っていた

根を張る場所を選ぶこともできず

降りそそぐ 強い陽の光や

激しく振り続ける 雨を受け

それでも

種でいることをやめられず

ただ 根を深く深く のばした

あるとき  

わたしの枝が折れた

その枝の先には つぼみがあった

わたしは つぼみを失い

花を咲かせることができなかった

しばらくして 

別の枝に つぼみができた

それは すくすく育ち 

きれいな花になった

けれど

花が散る前に わたしの花は

通りかかった子ども達に

もぎ取られてしまった

わたしは

気付いたら 

種で

気付いたら

根を張っていて

どうやっても

この運命から

逃げることもできない

花を咲かせ

花を枯らし

綿毛を飛ばす

そうやって

種から種へ 

繰り返していく

逃げることはできない

この連鎖のなかで

わたしは 

種から芽を出し

枝を伸ばし

花を咲かせる

枝が折れても

花をもぎとられても

わたしはわたしでしかいられない

それが

わたしの花なのだ

ならば

咲かせよう

美しい花を

雨風にさらされても

強い陽の陽の光にさらされても

それがわたしの 儚い 命なのだから

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