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京子先生の教室10「団らんのすすめ」

 家庭科の時間に「安全に衛生的に団らんの準備をしよう」と言う単元がありました。さて、子ども達はどんな姿を見せたのでしょうか。

「えー、今日から新しく『安全に衛生的に団らんの準備をしよう』と言う勉強を始めます。みんな、『団らん』ってわかりますか?」

「団らん・・・?」
「何だろう」
「『家族団らん』って、聞いたことがあります。」
「そうね、仲のいい人達が集まって楽しく時間を過ごす事かな。その時、お茶とかお菓子とかあると、もっと和やかな雰囲気になりますね。」
「いいねえ~。」
「楽しそう」

「それで、今日からの勉強はグループで団らんする計画を立て、実際にやってみることにします。」
「えっ!ということは、先生!お茶とかお菓子とか食べながら、おしゃべりする時間があるということですか!?」
「はい。みんなで団らんしましょう。」
「やったあ~~!」
パチパチ、パチパチ。

 さあ、学習が始まりました。
 まず、お茶を入れるための勉強です。ガスレンジを安全に使う知識と実技を学んでお湯を沸かす練習をします。
 次に、お茶を入れる基本的な勉強。お茶に種類があることやその種類によって入れ方が違うこと、お湯の温度が関係することを学びました。
 次は、ケーキや羊かんを切ることを考えて、包丁の使い方です。握り方や切り方、そして包丁の渡し方、しまい方など、ここで学ぶことが全ての調理実習に役立っていきます。

 いよいよ団らんの計画に入りました。テーブルを飾る工夫をしたり、どんな湯呑みやお菓子皿がいいか話し合ったり、当日のおしゃべりのテーマを決めたり、楽しく団らんをするための話し合いが進んでいきました。

 当日です。子ども達はワクワクしています。
「コンロのガス栓OK。火をつけていいよ。」
「いくよ。」カチッ。

「ロールケーキ切っとくね。」
「不公平にならないようにしてよ。」
「わかっとる、わかっとる。」

「お湯湧いたよ。」
「よし、じゃあ、少しさまそうか。」

「準備ができました!」

「では、班ごとに始めて下さい。」
「いただきま~す。」

 お茶とお菓子を頂きながら話がはずみます。
「修君は、小さい頃何になりたかったの。」
「おれ?おれは・・・大工さん。」
「私はお花屋さん。」
「だいたい、小さい頃ってそうよね。」
「おれは、宇宙飛行士だった。今じゃ、無理だってわかるけどね。」
「たしかに~、ハハハ。」

 家庭科室には、甘いお菓子とお茶の香り、みんなの笑顔と共に、おだやかでゆったりとした何とも言えない幸せな空気が流れていきました。

「先生、団らんっていいですね。また、授業で団らんしたいです。」
お茶とお菓子で楽しくおしゃべり・・・ちょっとしたことなのですが、誰だって楽しいですよね。団らんの学習がよほど楽しかったのでしょう。この後、子ども達は、年度末のお楽しみ会の中にも「団らんタイム」という時間をもうけることになります。

 さて、家庭科の学習はここで終わりではありません。学んだことを実生活の中にどれだけ生かせるかが大切です。
 次の展開は、家庭で団らんの計画を立てて実践することです。子ども達は、週末を利用して家族と団らんの時間を計画しました。
 いつだったらみんながそろうか、どんなお菓子を用意するか、みんなでどんな話をするのか等、計画してそれぞれで実践しました。家庭で「団らん」を実践した後、家の人からいろんな言葉を頂きました。

「家族そろっておいしいものを食べ、とても幸せな気持ちになりました。これからも家族で楽しい時間を作っていきたいですね。」

「今日は休日で家族が全員そろい、久しぶりにトランプをしました。こんな時間は大切ですね。」

「みんなでたこ焼きを作りました。チーズやチョコのトッピングをして楽しく団らんができました。亡くなったおじいちゃんの思い出話をしたり、兄弟の小さい頃の話をしたり、本当に楽しい時間になりました。」

「お茶を飲みながら、家族で夏休みの計画を話しました。夏休みが楽しみになりました。団らんの準備をがんばってやってくれました。」

 学校で学んだことが実生活で生きていきました。

 子ども達が中心になって、家族団らんの時間が持たれ、家族に幸せな時間が流れたことは本当にうれしいことです。
 現代は、子ども達が安心して育っていけない家庭環境があったり、家族全員がそろうことが難しかったりと、家族にとってなかなか厳しい社会です。だからこそ、こんな学びが子ども達の中にほんわかと火をともしていてくれたらいいなと思います。
 みなさん、家庭や仲間内でこの「団らん」の時間を計画してみませんか。お茶とお菓子でなにげないおしゃべり。意外な新しい発見があるかもしれませんよ。

                         おしまい

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