見出し画像

『フルーツバスケット』 全23巻 高屋奈月

そのマンガを知ったのは2003年。イギリスで、イタリア人の女の子から『Fruit Basket』の名を聞いた。私はそのマンガを知らなかったけれど、日本好きだという彼女が楽しそうに話していてうれしかったから覚えている。ロベルタは結婚し、イタリアは『ロミオとジュリエット』の街ヴェローナに住んでいる。時は流れ、2020年。ひょんなことから『フルーツバスケット』の名を聞いて、本好きの人のお墨付きもあったので読んでみることにした。

「このマンガ、入り込めるかな…」と恐る恐る読み始める。いかにも「少女マンガ」という絵で、ずいぶん前にそういう時期を過ぎてしまった私には可愛すぎてしまう。そして主人公の「透(とおる)くん」があまりにいい子で美少女なので、「けっ」と思う。親を亡くしても、けなげにニコニコし、いつも敬語で話す少女は、男子も、女友達の心も掴んでいる。

自分の性格の悪さを感じながら読み進めていくと、登場人物たちの暗い過去が徐々に明らかになっていく。今でこそ「トラウマ」「毒親」といった言葉が一般的になったが、連載していた1998年から2006年にはそれほど市民権を得ていなかったのではないだろうか。傷ついた子どもたちと透くんは普通の毎日を一緒に過ごしていくことで、少しずつ傷が癒えていく。話が進むにつれ透くんもただの純朴な娘ではなく、敬語で話すことになった経緯、悩み、弱さが明かされ、それでも前向きでいようとする彼女に、私はもう完全に謝るしかなくなる。ごめん、意地悪な目で見てしまって。あなたすごいよ。

多かれ少なかれ、人は過去に受けた「呪い」の影響を受けて生きている。親から、友達から、教師から上司から他人から言われた言葉やふるまい、見えないルール、自己規制によって傷ついて、その後のびのびと生きられなくなっていく。そして自分も意識的・無意識的に誰かに「呪い」をかけてしまう。「呪い」はかけたり、かけられたりするもの。それをどうやって解いていくか。(ふと、私も最近とらわれている呪いに気づいた。なんで私、嫌いな人に評価されようとしてるんだ?)

鍵は、くさいようだけど「愛」だと思う。無から生みだしたり、自分だけで完結させるのではなくて、誰かから受け取って初めてわかるものだと思う。少年たちが透くんから受け取ったように。透くんがお母さんから受け取ったように。

重苦しくもなく、説教くさくもないマンガ。隣でわちゃわちゃしている『フルバ』メンバーをただ見ているうちに、憎めなく、好きになってしまっていて、彼らの気持ちに寄り添ったりしているうちに、自分も緩んでいって心に閉じ込めた「アレ」が出てくる。そして封じ込めてきた「アレ」を今ならケアできるかなあ、なんて勇気が出てくる。そんな人たちが世界中にいたから、世界累計発行部数が3000万部を突破したんだろう。日本ではない国で『フルバ』に出会った女の子と、私は出会い、そして20年弱経った今、作品と出会う。『フルバ』、ありがとう。

そして2020年には『フルーツバスケット』アニメ2nd Seasonも開始。マンガよりアニメが得意な方はこちらをそうぞ。ちなみに私は紅葉くんが好きだな❤️

マンガ374-396.『フルーツバスケット』 全23巻 高屋奈月

2020年読んだ本(更新中)
2020年読んだマンガ(更新中)
2019年読んだ本:77冊
2019年読んだマンガ:86冊
2018年読んだ本:77冊
2018年読んだマンガ:158冊

#フルーツバスケット #フルバ #高屋奈月   #マンガ #読書   #読書感想文

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?