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『アメリカーナ』 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

私はアメリカに行ったら「黄色人種」になり、「人種」を発見する。ナイジェリアからアメリカにわたり、自分が「黒人」になり「人種」を発見した本作の主人公を、自分に置き換えたらそうなる。

友人が読んでいて面白そうだったので図書館で予約したが、対面した本の分厚さに驚いた。厚さ4cm、二段組みの本を読み終えることができたのは、やっぱり、面白かったからだ。

主人公イフェメルはナイジェリア生まれ。父が失業したり母が宗教にはまったりと家庭環境は完璧とは言えないが、中学生の頃引っ越してきたオビンゼとよき友人として、恋人として共に過ごしていく。大学生になって彼女は渡米し、そこで「アメリカ」という国を「黒人」、さらに「アフリカンアメリカン」(生まれも育ちもアメリカの黒人とはカルチャーが違う。私はネイティブ日本人として渡米した場合、現地の根付いた日系移民とは違うだろう。見た目は同じアジア人でも。)として見つめていく。

学生として渡米した彼女は、お金もないがワーキングビザもない。仕事に応募しても採用されなかったり、顔かたちの違う黒人のIDカードを共有して働いたりと、学生アルバイトをするだけでも大変な労力が必要とされる。白人の彼氏ができたとして、二人の間に人種的違いを感じなくとも、一緒に外へ出れば自分だけに向けられる視線がある。恋人はそのことに気づくこともあれば、気づかないこともある。そのすべてを彼と共有して明らかにすべきか。場合によっては彼氏に考えすぎ、被害者意識と言われてしまうこともある。

日本で就職活動をする時、染めた茶髪でなく地毛の黒髪を良しとする風潮がある。アメリカにいる黒人の場合は自然に生えているカーリーな髪を薬を使って(体を痛めて、お金を使って)ストレートにすることが良しとされるらしい。(ミシェル・オバマのヘアスタイルも自然な髪の毛ではない)こうした、人によっては気づかない、違和感すら感じられないような、言葉にしにくいようなエピソードがふんだんに盛り込まれている。

「人種」という根深いテーマを扱いながら、ボリュームたっぷりな本作をついつい読ませてしまうのは、上記のようなエピソードの書き出しだけでなくて、恋愛ものとしても優れているからだ。知性豊かで魅力的なイフェメルが、人種の異なる男たちと恋をし、そしてナイジェリアに戻る。さぁ初恋のオビンゼとの再会は?恋人のこういうところが気に障って関係がダメになる、昔の恋人を思い出して心がうずく、といったことは人種とは関係なく人類共通のことだろう。

オバマが大統領になることの重大さを、この本ですこし分かったような気がする。人種の違いと、人間として同じ気持ちをとらえなおせる本。

187.『アメリカーナ』 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

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