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『あのひととここだけのおしゃべり』 よしながふみ

意味がわからないけど、すごいことが書かれているのはわかる。だから食らいついてみよう、ということが時々ある。「『やおい』は男同士だけではない。女同士でも男と女の間でもある。『やおい』の定義とは」えっと・・・やおいってBLと同じものじゃなかったの?え、ごめんどういうこと?

『きのう何食べた?』『大奥』と底力のあるマンガを描かれるよしながふみさんの対談集。対談相手は萩尾望都さん、羽海野チカさん、三浦しをんさんなどそうそうたるメンツ。彼女たちがマンガ(特にBL)、創作について恐ろしく深い洞察とともに語る内容。冒頭で触れた「やおい」論もその一つ。

私はマンガ読みだが、「24年組」は数冊しか読んでいないし、BLについてはほぼわからない。(10代の時に試されるように『BRONZE』を貸されたことがあるが、よくわからなかった)医者たちが症例を検討するように、エンジニアが最適なプログラミングを展開するように、マンガ剛の者たちが読破してきたマンガを共通言語として、作品、登場人物、シーンを読み取り、そして描き手のテーマについても高度に、熱を帯びて論じている。これだけディープな話をできる相手ととことん話をするのはさぞかし快感だろう。

「ジャンプは主人公を勝たせるためならルールを変える」といった話、読んだことのある『NANA』『ハチミツとクローバー』『のだめカンタービレ』(ナナとハチ、千秋とのだめ、ハチクロのあの人とあの人の関係も「やおい」といえるという)といった知っている作品のところについてだけは、私も彼女たちの高度な話を理解できる。1/10くらいの引用タイトルしか私はわからないのに、それだけでもものすごい情報量で「この人たちすげぇや」と嘆息する。

中には『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』の羽海野チカさんとよしながさんの対談がある。彼女たちは『SLAM DUNK』の同人誌を描いていたころからの知り合いだそうだが(読んでみたい…)、初めて友人に紹介されたとき、そしてその後も会うと朝までファミレスで語りあかす間柄だそう。マンガの読み取りだけでなく、マンガを創作していくことへの悩みや、心がけていることなどについても語られる。マンガを愛し、日々考え、手を動かしていく彼女たちの思想は、深く、そして磨き抜かれている。

彼女たちの対話についていくには相当なマンガ知識が必要。でもほんのちょっとでもわかるところがあれば、そこからおびただしい情報と熱量が垣間見える。マンガを好きな人はぜひ。

174.『あのひととここだけのおしゃべり』 よしながふみ

●よしながふみさんのマンガ

2020年読んだ本(更新中)
2020年読んだマンガ(更新中)
2019年読んだ本:77冊
2019年読んだマンガ:86冊
2018年読んだ本:77冊
2018年読んだマンガ:158冊

#あのひととここだけのおしゃべり #よしながふみ #マンガ #読書   #読書感想文

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