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『チ。―地球の運動について―』1-4集 魚豊

先の見えない山道を登っていて、ふと目の前が広けることがある。映画や壮大なPRGのオープニングに、音楽に、心が広がって軽やかになることがある。このマンガには「それ」がある。

ストーリーは拷問から始まる。そういうシーンが苦手なので「読まなきゃよかったかも」と思う。C教に叛く異端思想とされる研究資料の在処を吐かせるために拷問が行われている。C教は地動説をとっており、地動説はもってのほかなのだ。

世間で正しいとされていることが、真理ではないと薄々気づいてしまう。そんな声をあげてしまったら糾弾され、拷問され、火炙りにされてしまう。あまりの恐ろしさに身がすくむ。でも、それよりも真理をを知りたい。この世界はもっと美しいらしい。

この気持ちが、読んでいるこちらの胸を打つほどに伝わってくる。既刊4巻。何人もの観測と考察、そして思いを経て地動説が固まっていく。今、感想を書くために1巻を読み返したら、ある伏線が貼られていたことに気づく。ああー。

私も学校で地動説を習った。だからこのマンガの結末はわかっている。地動説は正しいとされ、後世当然のこととして広がる。でもそこに至るまでどれだけの犠牲があったのだろう。自分の命が絶えようとも、死後地獄に行くと言われようとも、自分が命懸けで行なった研究が誤っているかもしれなくても、その時正しいと思ったことを戦いながら貫き、繋げようとした大勢の人たちがいたのだ。

『チ。―地球の運動について―』1-4集 魚豊

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