『その着せ替え人形は恋をする』 1 福田晋一
かわいい女の子は人を元気にする。先日、居酒屋に入ったら女の子の店員さんがかわいくて、女友達とつい「店員さんがかわいい…」と確認しあった。というか私は時間を過ごすなら、かわいくて（素敵）前向きな気持ちになる人と一緒にいたい。男でも女でも。スタバでラテを渡してもらうなら、素敵なバリスタに渡してほしい。「海賊王に俺はなる！」という意気込みで、そういう人になろうと最近心掛けている。で、書店の試し読みで「うわーかわえー」と思ってついついレジまで持っていったのがこちら。『その着せ替え人形は恋をする』。
雛人形職人の家に育ち、雛人形職人を目指す男子高校生 海夢（友達はいない）と、スクールカースト上位の人気者ギャル新菜とのラブコメ。このギャルは実はコスプレを愛好していて、男子高校生に衣装を作ってもらうというお話。このギャルが天真爛漫で、コロコロ表情が変わってかわいい。女子高生の可愛さを煮詰めて蒸留し、綺麗な香水瓶に入れたような感じ。「なにもいらない、君が笑ってくれれば、尊い…」みたいに同性の私もなるくらいだ。異性ならどうなってしまうのだろう。
でもな。そんなかわいくてスタイル抜群なギャルが、エロゲが好きでって都合がよくないか？いきなり家にやってきて水着で採寸させてくれるのか？それ…男のファンタジーじゃん…んなわけねえだろ…とうっすら思い始める。空から美少女は落ちてこないし、転校生が美しく成長した幼馴染だったりすることはあんまりない。「ダメよ、現実に戻らないで！作品に熱中して！ほら新菜ちゃんかわいいじゃない」と幻想と現実のはざまで揺れ動く。
「自分がこうなるパターンは他にもあった」というのは『ガイシューイッショク』（色白好）。かわいい女の子が家に転がり込んできて、エロい対決を重ねるような展開になっていく。医者マンガで、ヒーローが根拠なくするすると魔法の手で死にかけの病人を救っていたら？サッカーマンガで一人だけ重力を無視した超絶シュートを放ち勝ち上がっていくストライカーがいたら？ドラマや面白い見せ方がなければ、特に読む必要がない。ありえなかったり、都合がよすぎるシチュエーションがあってもいい。でも、それだけでなく別の要素でそれを盛り固めてほしい。私は女だから、ヒロインがかわいいだけじゃ酔えない。
男子高生が古来から女の子の厄払いとしてつまり女の子の幸せを願う雛人形作りを目指すところ、コスプレってリアル「着せ替え人形だよね」というところなど、うまく構成されていると思う。主人公とギャルには「人になんと言われようと好きなものを表現する」という共通のテーマがありそう。2巻以降、どう表現されているのでしょう。
320.『その着せ替え人形は恋をする』 1 福田晋一
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