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星の王子さまのコンサート

 今月のゴールデンウィークは例年ならラフォルジュルネを開催していた有楽町の国際フォーラムに、「ピアノ×サンドアート×朗読で紡がれる名作、星の王子さま」のコンサートを聴きに行った。
 ピアニストの広瀬悦子さんによるピアノ演奏とプロジェクターで映し出される砂のアート、そして朗読によるコラボレーションでファンタジー溢れる素敵な舞台。3人とも卓越した能力のアーティストなので、それぞれの個性が合わさると想像していたよりさらにずっしりと聞き応え見応えがあり、充実した演目だった。

 星の王子様には、実にたくさんの人物が登場するのだけれど、朗読の田中 研さんは実業家、ガス燈をつける人、キツネ、王様、など次々と声色や口調を変えながらその人物になりきって感情移入をし、時には目に涙をうかべて語りかけてくるほど豊かな表現力に心を揺さぶられた。

 サンドアートの伊藤花りんさんによる砂の絵はまるで手品のようで、音楽と朗読に合わせて様々な人物や光景が描かれていった。万華鏡のように絵が動いていくので、気がついたら催眠術にでもかかったかのようにしばしスクリーンに見惚れていた。

 広瀬さんのピアノは華やかで美しく、物語に沿ってたくさんの小品が散りばめられていた。選曲も彼女が担当したそうで、アルカンの「鉄道」など彼女らしいヴィルトゥオーゾピースを所々に入れながら、全体的にはフランス絵画のような色彩感豊かな曲や抒情的な曲が並び、作品の雰囲気を軽やかに情緒的に演出していて素晴らしかった。

 広瀬さんとは終演後に久しぶりにお会いできて、気がついたらお喋り弾んで4時間以上も過ぎていた!10代半ばから同じ先生に習ったり、モスクワや台湾に一緒に行ったり、パリ音楽院で同期だったり、、、かれこれもう30年来のお付き合いだねっとちょっとビックリだけれど、ようやくコロナ規制も緩和された銀座での楽しいひと時だった。

(追記)

星の王子さまは、学校の宗教の時間に題材となったのをきっかけに、子どものころから翻訳や原語で何度も読み返していて、馴染みが深い作品の一つ。フランスがまだユーロではなくフラン札だった時代は、50フラン札に作者でありパイロットであったサン=テグジュペリが星の王子さまと一緒にプリントされていて、1番可愛いくて人気のお札でした。

20フラン札はドビュッシーでした。そんなわけで、赤い薔薇を見ると今でもまだ「王子さまが大切にしている悩ましい薔薇」を連想してしまいます。⬇︎


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