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Gaspillage Alimentaire食品ロス問題について①

さて今期の通訳コースのテーマは「Gaspillage alimentaire=食品ロス問題」です。世界では、およそ10億人が栄養失調で苦しんでいるというのに、年間で生産製造される食品の1/3を無駄にしているという、異常とも言える問題を解決すべく各国が対策を進めています。

廃棄食材No.1は野菜。食品ロスは環境問題や家計の無駄使いにも直結。


フランスでは、まだ食べられるにも関わらず廃棄されている食品が年間1000万トンで、そのうち25パーセントは果物やパンを抑えて「野菜類」なのだそうです。そしてこれらの無駄は、食品だけではなく水やエネルギー源といった環境にも影響を及ぼしています。例えば、25%の水は廃棄される食物を栽培するために無駄に使われているし、大型スーパーなどで十分すぎる食糧を並べるために農地が乱開発されています。また、廃棄食品を処理する段階で生産されるメタンガスの地球温暖化係数は二酸化炭素の21倍もあるそうです。
食品ロスは環境問題だけでなく、家計の無駄にも繋がっています。フランスでの年間の食品ロスをユーロに換算すると160億ユーロに上り、各家庭では一人あたり年間159ユーロ(23,458円)を毎年捨てている計算になります。消費段階のみならず、生産、加工、流通など全ての段階で無駄を出しています。その割合は、生産業で30%、加工業で20%、流通で15%、消費で33%となっています。消費者によるロスは年間で20億トン、一人当たり年間20から30キロになります。この問題を解決するには、関わる全ての業者や消費者が問題意識を持ち、食に対する振る舞いを変えて行く必要があります。そのための一歩として、学校教育では食に対する正しい知識を広める食育活動(cours de sensibilisation)が進んでいます。

フランスでの取り組み

生産や流通の段階で廃棄される野菜や果物は、多くの場合、その形やサイズが基準に満たしていないことが原因です。基準(critère de calibrage)を緩めたり、2016年以降は400m2の大型スーパーで有効期限の切れた食品を慈善団体に譲るよう協定を結ぶことが義務付けられています。また、大型スーパーなどで廃棄となった食品には漂白剤をかけて(javelliser)再利用できないようにしてきましたが、それを禁止する法律も制定されました。いかにもフランスらしくて面白いアイディアだと思ったのは、街中や学校の寮へ設置されているfrigo solidaire(連帯冷蔵庫)です。各個人が食べ切れなくなりそうな食品をダメになる前にこの冷蔵庫に入れると、別の誰かがそれを食べられるという仕組みになっているそうです。

Frigo solidaireにも持っていけないまでに傷んでしまった食品は、コンポストすることが勧められています。生ごみ処理機を利用することで、有機栽培用の肥料に変えることができます。

個人ができる取り組み5箇条


日常生活において食品ロスを減らすためには、正しい知識と工夫やアイディアが必要です。最後に、誰でも毎日取り組める5つの対策をご紹介します。
① できるだけ家で食事をする(量のコントロール、節約)
②必要な分量だけを購入したり調理する(余分に買わない)
③食材を正しく保存・管理して長持ちさせる
根菜類は冷蔵庫に入れず新聞に包んで風通しの良いところで保管すれば数ヶ月持つ。サラダ菜は洗って乾かして、湿ったキッチンペーパーに包んでジップロックに入れ(またはサランラップできっちり覆う)冷蔵庫で保存する、など。
④消費期限と賞味期限の違いを認識する
DDM=Date de durabilité minimale → à consommer de préférence avant…
DLC=Date limite de consommation →à consommer jusuqu'au…
⑤余った食品の再利用(例えばピザにする、など)

賞味期限が切れたものや、長らく冷蔵庫で保管していたためによれよれになった野菜、余ってしまったお惣菜など、日常的に食品を廃棄していることに慣れきってしまっているのが異常だと理解すると、不思議と食に対する態度は変わってきます。環境問題、そしてお財布の節約のためにも真剣に取り組んでいきたい課題です。


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