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デフォルトの力で人を動かす

ひきつづき「ナッジ」について。

「ナッジ」とは、おおざっぱにいうと、
「人間の心理を利用して行動を促すさりげない仕掛け・優しいテクニック」
を指す。

たとえば、

「住民なのに地元の観光地を良く知らない」という地域は日本にも多いと思われる。
他国での話だが、地元の観光名所を紹介する短い動画を流し、
「ここはどこでしょう?」
と視聴者に当てさせるシステムを導入したところがある。
正解の場合、その観光名所の公式ページにアクセスできる。
こんなことで何が変わるのか?と不思議に思う向きもあるだろうが、これで地元民の観光名所訪問が増えたという。

「場所の名前を当てて入力する」という小さな行動をすることで、その後の「実際にそこへ行く」という大きな行動につながりやすくなる。
そういう「さりげない誘導」がナッジだ。

ナッジは、人々の選択や行動を微妙に方向づける手法のことを指す。

今回のテーマは、「デフォルト」。

健康診断を受ける人がなかなか増えないことに悩むある自治体。
かつてはアンケートなどに「受信しますか? はい いいえ」という項目があり、「はい」の場合に次を案内していた。

それを、「受診する場所のみ」を選んでもらうことに変えた。
「受信しますか? はい いいえ」を消し、「はい いいえ」に答える手間を省いてしまった。
受診をデフォルト(既定路線扱い)にしていきなり場所を選んでもらうようにした。

すると、受診日を決めて検診予約をする住民が増えた。
これをデフォルトナッジという。

デフォルトナッジは、人間には無意識に「楽なほう=何もしない」を選ぶ傾向があることを利用したもの。
人々の選択や行動に影響を与えるために、特定の選択肢をデフォルト(既定の選択肢)として設定するやり方だ。

このテクニックは協会の運営にどのように応用できるだろうか。
いくつか挙げてみよう。

会員登録時のデフォルト設定
新規会員登録時に、ニュースレター購読やイベント参加などをデフォルトで選択済みにする。
なにもしなければ了承したことになる。
断りたい人だけが断る手間をかけて断る。

継続会員の自動更新
会員の年会費更新を自動的に設定し、「オプトアウト方式※」で選択させる。

講座のデフォルト選択
講座の申込みフォームで、人気のある講座をデフォルトで選択済みにする。

寄付のデフォルト設定
会費の支払い時、小額の寄付をデフォルトで含める。

アンケートの回答促進
アンケートで、いくつかの質問に予め回答が入力されている状態。

資料請求の容易化
資料請求を自動的に送付し、不要な場合にのみオプトアウトを選択させる。

※「オプトアウト」とは、Noの場合に意思表示が要求されるもの。
=なにもしなければ勝手にYes扱いになる。
「サイレントイエス」とも呼ばれるらしい。
サイレントニャーみたいだな。

この反対が「オプトイン」で、Yesのときだけ意思表示が必要となる。
=なにもしなければ勝手にNo扱いになる。

デフォルトナッジは、過度に使用すると反発や不信感を招く可能性もあるので、節度が必要だ。
業界によってはデフォルトナッジが規制されている場合もある。

それほどデフォルトナッジが強力だという裏返しでもある。

反発や不信感を招かないためには、
「なぜその選択がデフォルトになっているのか、理由を説明できる」
ようにしておくのが望ましい。




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