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ラスボスを見せよ


はじめに

前回にひきつづき「ナッジ」について。

「ナッジ」とは、おおざっぱにいうと、
「人間の心理を利用して行動を促すさりげない仕掛け・優しいテクニック」
を指す。

バンクーバー(カナダ)のとあるスーパーでは、買物客に
「持ち歩きたくないようなウルトラ恥ずかしいデザインのレジ袋」
を販売している。
これにより、レジ袋を買い求める客が減り、エコバッグ持参が促進されている。
持っている人も恥ずかしいが、それを見た人も「エコバッグを持参しよう」と、意を新たにするらしい。

そういう「さりげない誘導」がナッジだ。
ナッジは、人々の選択や行動を微妙に方向づける手法のことを指す。

アンカリング

今回のテーマは、「アンカリング」。

アクセサリー店の場合

アクセサリー店などでは、しばしば、店の奥に高価な宝飾品を飾り、来店客に見えるようにしている。
店側にそれを販売する気は、じつはあまりないことが多い。
実際に売れていくのは店頭の入口に近いところに並ぶピアスやネックレスだ。
店の奥に高価な宝飾品が鎮座しているからこそ、客は入口に近いところに並ぶピアスやネックレスを魅力的に感じる。

この例は「アンカリング」というナッジの一種。

アンカリングとは、
「人が最初に接する情報(この場合は高価な宝飾品)が、その後の判断や評価に大きな影響を与える」
という現象を指す。

店の奥に高価な宝飾品を配置し、それを目立つようにする。
来店客はその「ラスボス的な商品」を基準にものを見るようになるため。入口近くのピアスやネックレスの価格を比較的手頃に感じやすい。

協会の場合

このテクニックは協会の運営にどのように応用できるだろうか。
いくつか挙げてみよう。

★高度な認定資格の展示
協会のウェブサイトで、最も高度な資格を目立つ場所に展示。
これにより、基礎や中級の資格取得への関心を高める。
 (詳細を後ほど述べる)

★セミナー料金のアンカリング
高額な特別セミナーを案内した後に、一般的なセミナーの案内をすることで、そちらの参加意欲を高める。

★高価な資料や教材の展示
高価な教材や資料を目立つ場所に展示し、他の教材の価値を相対的に高める。

★エリート会員プログラムの設置
特別なエリート会員プログラムを設定し、そうでない通常会員への登録をより魅力的に見せる。

★高度なプログラムの案内
高度で専門的なプログラムを紹介した後、基本的なプログラムの案内をする。

★寄付のアンカリング
大口の寄付者を紹介後、小額寄付の呼びかけを行い、参加しやすくする。

★会員特典の階層化
特別な会員特典を設け、一般会員への登録を促進する。

なぜ上級講座を作るのか

たとえば協会の養成講座が
「初級・中級・上級」
という3段階あるとしよう。

講座の内容や性質にもよるが、ごく一般的な数値をあげると、

  • 初級受講者が中級に進む確率は1割

  • 中級受講者が上級に進む確率は1割

というのが平均だ。
ただし、講座の性格や受講料の設定などにより変わるため、バラツキは多い(=標準偏差は大きい)。

とはいえ
「なんだ、1割しかないのか。だったら、上級講座なんて作らなくてもいいじゃないか」
と思うかもしれないが、そうではない。

多くの場合、上級講座はアンカリングの役割を果たしている。
店の奥に高価な宝飾品が鎮座しているからこそ、客は入口に近いところに並ぶピアスやネックレスを魅力的に感じる。
これと同様に、
奥のほうに上級講座があるからこそ、初級講座に受講者が集まる。
という現象がある。

もし上級講座の存在がなければ、初級講座の受講者はがくっと減る可能性が大きい。
したがって、上級講座が存在していることをウェブサイトにきちんと載せておくことには、しっかり意味がある。





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