カゴを渡せ
はじめに
前回にひきつづき「ナッジ」について。
「ナッジ」とは、おおざっぱにいうと、
「人間の心理を利用して行動を促すさりげない仕掛け・優しいテクニック」
を指す。
たとえば…
これはナッジの1つだ。
ナッジは、人々の選択や行動を微妙に方向づける手法のことを指す。
カゴは人のためならず
前置きが長くなったが、今回のテーマは「選択のアーキテクチャ」。
スーパーマーケットなどでは、店内いたるところにカゴが置いてある。
カゴのあるなしで、売上が変わるからだ。
単に客への親切心からカゴが置かれている、と思っている人もいるかもしれないが、実際には購買意欲を解放するのが最大の目的となっている。
ある研究によれば、カゴやカートを持った客が使った金額は、持たなかった客の3倍だった。
別の研究によれば、
カゴやカートを持った客が何も買わない確率は1/4しかない。=3/4は何かしら買っている。
カゴやカートを持たなかった客の2/3は何も買わなかった。=何かを買った人は1/3しかいない。
ある衣料品店では、店内にカゴを置いただけで、売り上げが2倍になった。
つまり、カゴやカートを持つかどうかで購入行動は大きく変わる。
カゴやカートを持たないと、自然に購買意欲が抑制される。
逆に、カゴを持つと、目に入った商品をついついカゴに入れてしまう。
このことをよく知っているから、店内にはあちこちにカゴが設置されている。
この発想をさらに一歩進めるならば、
「店に近づいた客には、どんどんカゴを渡すべきだ」
ということになる。
この、カゴを渡す行為に該当するものを「選択のアーキテクチャ」という。
カゴ理論
このテクニックは協会の運営にどのように応用できるだろうか。
スーパーマーケットの場合:来店した客にカゴを渡し、購入意欲を高める。
協会の場合:ウェブサイトを訪れた人に、「カゴに相当する何か」を渡し、講座への受講意欲を高める
こう考えたときに、「カゴに相当する何か」とは何だろうか。
いろいろ考えられる。
いくつか挙げてみよう。
診断ツール
検定ツール
体験講座
メールマガジン
どれもそれぞれ「カゴ」の役割を果たす。
ただし、使い方に注意。
このうち、最初の3つ(診断・検定・体験)は性質が似ている。
効力が1回きりだ。
診断は1回やれば終わる。
検定も1回性のものだ。
2回やる人はあまりいない。
体験講座も、2回受ける人は少ないだろう。
つまり、その1回が重要になる。
いわば、時間が来たら溶けてなくなるカゴみたいなものか。
いっぽう、メールマガジンは継続する性質があるため、ある意味、ゆっくり行う。
相手にずっと持ってもらうカゴ、とでも言えるかもしれない。
持っているカゴを手放すかどうかは相手の自由なので、カゴを手渡す側は
「手放さずにずっと持ってもらうにはどうしたらよいか」
を考える必要がある。
境内理論
余談だが、協会総研では、かねてから
「境内理論」
というものをよく使っている。
神社の境内になぞらえてナッジを進める手法だ。
ほとんどの日本人は、いったん神社の鳥居をくぐったら、必ず賽銭箱にお金を入れる。
つまり賽銭を増やしたければ、人々に鳥居をくぐってもらうとよい。
これは今回のカゴの話とよく似ている。
カゴを受け取った人の多くが購買するのと同様、鳥居をくぐった人の多くが賽銭箱にお金を入れる。
あなたの協会にとって
*「カゴ」に該当するものは何か
*「鳥居」に該当するものは何か
これを考えてみることを今回は推奨したい。
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