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協会のジャンブルテクニック

前回にひきつづき「ナッジ」について。

ナッジ

「ナッジ」とは、おおざっぱにいうと、
「人間の心理を利用して行動を促すさりげない仕掛け・優しいテクニック」
を指す。

有名な例では、

ごみ箱に「地球を救おう」というメッセージが書かれていると、人のリサイクル行動が促進される。

これがナッジ。

足跡を模した黄色いステッカーを、ごみ箱に向かうように地面に貼りつけておくと、ポイ捨てが半減したという実験がある。

これもナッジだ。

ナッジは、人々の選択や行動を微妙に方向づける手法のことを指す。

ジャンブル

今回のテーマは、ナッジの1つ、「ジャンブル」。

商品を陳列するとき、整然と並べるより、多少雑に並べられたほうが、人はその商品を買いやすい。

これを「ジャンブル」という。

このアイデアはとくに新しいものではなく、以前から店頭のマーケティングでよく見る。

例をあげると、

あるところに、単体で整然と並べていたときにはあまり売れなかった高級食器があった。
あるとき発注のミスでたくさん入荷してしまったため、しかたなく一斉に雑然と並べてみた。
すると、どうだろう。
その雑多感が買いやすさを生み、次々と売れましたとさ。
値段が変わらないにもかかわらず。

これを「ジャンブル」という。

「ジャンブル」とは、商品をゴタ混ぜにし、カゴやワゴンに放りこむ陳列方法を表す。

客としては買いやすさを感じるとともに、商品の山から見つけ出す楽しみも味わえる。

「ジャンブル」のすごいところは、
値段を下げなくても、買いやすそうに見せることができる
という点だ。

通常、高いものが安っぽい見せ方で陳列されていたら、
「安っぽいのに、値段だけ高い」
という印象になり、敬遠されやすい。
つまり、割「高」感が出る。

そんなことにならないよう、高額商品を販売するときは、

  • いかにも高そうなパッケージにする

  • 陳列棚にカギをかけるなど、高そうに見せる

要は「手の届かない商品」にみせる工夫をするのがふつうだ。

ところが「ジャンブル」の場合、雑多にしているにもかかわらず、割高感が出ない。
その反対で、割「安」感が出る。

買い手が、買いやすく感じてしまう。
値段を下げることなく、高額商品を「手の届く商品」に見せる。

たとえが適切かわからないが、
「芸能事務所が、有望なタレントを、手の届かない高嶺の花として売り出す」
これは、ふつうの高額商品の売り方。

「雑多な集団にして、親しみやすい、手の届くグループとして売り出す」
これはジャンブルに近い。

じつは、日本ではこのテクニックを使う例をあまりみかけない。
だがアメリカのアパレル業界ではよく見る。
値段を下げずに「買いやすさ」だけを強調するテクニックとして使われている。

このテクニックを協会の運営にどのように応用できるだろうか。

ありとあらゆるところに応用できるわけではないが、たとえば、

  • 協会の資格制度や講座を、これまでの整然とした見せ方ではなく、多様で探索的な見せ方にするとか。

  • 講座のカタログをテーマ別や難易度別に分類するのではなく、さまざまな講座をわざと一緒に混在させて提示するとか。

このアプローチは、参加者に探索の楽しみを提供し、未知の講座に興味を持たせる。

ウェブサイト上で資格の情報を表示する際、わざと一覧にせず、ユーザーがあちこちクリックして詳細を見つけるような形式にすることで、発見の楽しさを提供し、関心を高めることができるかもしれない。

ジャンブルは使える場合と使えない場合が、もちろんある。

使えるのは、協会が familiarity すなわち親しみやすさを重視したコミュニティを目指している場合だ。

いっぽう、エリート集団のようなプライドを共通項として成立するコミュニティを目指す場合は、このテクニックは向いていないかもしれない。




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