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#17 雨窓の行進 / March: Rainy Day, by the Window




I. 久しぶりのシャッフル曲

もうじき大学を卒業するので,最近はノート類の整理をしている.卒業した途端に教科書を売り払ってノートを処分する人が余りにも多いが,私は違う.高1のときからずっと行きたいと思って体調を崩しながらも死に物狂いで吐いた大学である.この4年間で学んだことを投げ捨てようなんて気にはとてもならない.

しかしノートがたくさんあると嵩張るのは事実.そこでノートを自炊することにした.自炊というのは,ノートを細かく千切って水に浸してふやかして火にかけて……ということではなく,本を裁断してスキャンして画像データ化することを指す.

大体半日かけてスキャンをし終えた後は,そのスキャン結果を1つずつざっと確認する作業になる.すべて大丈夫であればノートは処分することになる.

そこで見つけたのが昨年6月のノートである.このページを見た途端当日のことが一気に頭蓋に具現化された.朝から天気が悪く,雨の降っていた日だ.

2コマ連続の授業でいったん休憩に入ったときのことである.何気なく外を見ると,我先にと地面へ身投げをする雨粒たちの中,屋根や窓枠に着地してしまった雨粒たちが急にその速度を緩め,大きな水滴となってのんびりと地面へ再出発する様子を見た.

この様を見て胸裡に湧き上がってきた旋律を,私は次のように書き取った.(大まかな表記については前回を参照.基本的に3連符しか使わないので上括弧は全部3連符扱いである.)

このメモが出土(?)したのである.このノートを見るまですっかり忘れていた.このフレーズは今回の曲のイントロ部分にあたる.

久しぶりにこの旋律を目にして,そして初めて実際に音にしてみて感じたのは,雨の陰鬱さと,少し稚い童謡っぽさであった.思い浮かんだのは小学校の頃の雨天の帰り道である.雨の日の3時過ぎ頃,外に目を向けると小学生や中学生が帰路に就いている.

舞妓のように傘をくるくる回す者がいて,水たまりを蹴飛ばして友達の足下を濡らす者がいて,左手に自分の傘を持ちつつ右手には意識している異性と思しき相手の傘を持っている者がいて,傘を忘れたのかランドセルを頭に乗せながら全力疾走する者がいた.

窓に,ベランダの手すりに,雨樋に,ぽつぽつと落ちてきてはゆっくりと,それぞれの速度で,それぞれの大きさで,地面に落ちていく雨粒の1つ1つのように,彼ら彼女らもまた,自らの家という目的地へ,三者三様に駆けていく.これに今回は「雨窓(うそう)の行進」と名付けることにした.

今回は歌モノっぽい書き方にしてみた.あまりになきむしが好評なためである.イントロがあって,Aメロがあって,Bメロがあって,サビがあって,ここまでをもう1セット繰り返した後に間奏を入れて,Cメロを入れて,またサビを入れて,最後にアウトロで締める,普通の歌モノっぽい構成である.

ハ長調や変ニ長調,変イ長調辺りでもよかったのだが,あの雨の日の鈍色を感じるのは直感的に変ロ長調だった.

今回に関しては解説する事項も然程多くないので解説部分もこの節に入れてしまうことにする.全体的には,長前打音気味の弱拍の音を,いやらしくなり過ぎない程度に聴かせるのが良い.面倒だからといってすべてルートに合わせてしまっては面白みに欠ける.

[B]のB♭7(11)→E7/Bはお気に入り.ここを弾くと余りの気持ち良さに絶頂してしまう.24小節目の内声でB♭7のラ♭を拾いに行くのもドえっち(自画自賛)

[E]は44小節目と,51小節目の後半以外はペダルを踏まないので要注意.2番はAメロを反復して[F]を追加している.[F]を挟まず直接[G]に突っ込むと伴奏の兼ね合いでガチの行進曲感が出過ぎてしまうためだ.[I]は2拍3連が続くので走り過ぎないように.


II. #01~#10までのアルバムを配信しているという話

実は#01「天空都市パンドラ」から#10「Cafuné」の音源をzipにまとめて配布しているのだが,noteでの告知のタイミングを逸し,lit.linkの下の方にひっそりと掲載していた程度で,今回はあとがきのネタが思いつかなかったため,ここで掲載する.

配布ページ

収録曲は以下の10曲である.

  1.  天空都市パンドラ

  2.  地底都市エルピス

  3.  海上都市オケアノス

  4.  古代都市クロノス

  5.  未来都市ヘラクレス

  6.  終末都市プロメテウス

  7.  始原都市ガイア

  8.  幻、桜花に酔ふ。

  9.  なきむし

  10.  Cafuné

だるいタグ入力もちゃんとやった.タイトルは「Croquis I」としたが,果たしてIIをまとめる日は来るのだろうか.

配布ページには5つzipファイルがある.楽譜はpdf (croquis_1_pdf.zip),音源はmp3 taglessmp3flacwavの4種だ.音質・サイズ的にはmp3 tagless<mp3<<flac<<<wavとなっている.wavは音質こそ良いものの,使用する再生ソフト/アプリや環境によってはタグを読み込まない場合があるため留意されたい.それぞれの出力設定は以下のような感じである.

mp3 tagless (croquis_1_mp3_tagless.zip)
→ 並音質 (192kbps)・非可逆圧縮・タグなし・サイズ小
mp3 (croquis_1_mp3.zip)
→ 良音質 (320kbps)・非可逆圧縮・サイズ中
flac (croquis_1_flac.zip)
→ 高音質 (44.1kHz/16bit)・可逆圧縮・サイズ大
wav (croquis_1_wav.zip)
→ 高音質 (44.1kHz/16bit)・非圧縮・サイズ超大

mp3はストリーミングの音質,flac/wavはだいたいCDの音質と考えてよい.ただ,普通の人の耳だったら192/320kbpsでも十分高音質に聞こえるはずだ.

taglessは極力サイズをコンパクトにするために,音質を落とした上でタグを剥がしているため,端末に取り込んでも曲の情報が表示されないようになっている.逆に言えば他の3形式はタグを付けているため,端末に取り込めば曲の情報が表示されるはずだ.(wav形式は先述の通り環境によっては表示されない場合がある.)迷ったらタグありのmp3 (320kbps) が無難だろう.カバー画像は例によってぱくたそ(www.pakutaso.com)から拝借した.

配布ページ


III. 楽譜&音源配布

ここに書いてあるルールを守ってくれれば使途は問わない.今回は何かのBGMにも使えそうな感じがしたので使いやすいようリバーブ(反響)を切ったバージョンも載せておく.

《楽譜ファイル (PDF)》

《高音質音源ファイル》
WAV形式のCD音質 (44.1kHz/16bit, 1411.2kbps)

《並音質音源ファイル》
MP3形式のストリーミング音質 (320kbps)

《高音質音源ファイル・リバーブなし》
WAV形式のCD音質 (44.1kHz/16bit, 1411.2kbps)

《並音質音源ファイル・リバーブなし》
MP3形式のストリーミング音質 (320kbps)


IV. クレジット

作曲・浄書・執筆: kyoka (@kyoka20011218)
動画編集: Noah
見出し画像: フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

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