「社会的制度」とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』
「社会的制度」 【しゃかいてきせいど】
人間存在が、自然生態系の表層に形成した「人為的生態系」(社会環境、ないしは「社会的なもの」)の一成分。
近代において成立した「市場経済」と「官僚機構(近代的な)」はその典型例であるが、伝統的な社会に見られる慣習や、インドのカースト制度などもこのなかに含まれる。
「人為的生態系」には、他にも物質的な成分として、人間が自然物に関与すること形成した「社会的構造物」、非物質的な成分としてわれわれが物事を認識し、理解するための概念や意味の基盤(解釈の枠組み)をなす「意味体系=世界像」が含まれている。
T・パーソンズの社会システム理論などを含む社会学理論では、ここでの「社会的制度」と「意味体系=世界像」が区別されておらず、両者がどのように区別されうるのかはひとつの議論になり得る。
本書が両者を分けているのは、伝統的な社会を成立させていた「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉と近代以降に成立した〈社会的装置〉の違いを説明する際に、この方が有効であったためである(前者においては、三つの成分が分離しがたく結合していたが、後者においては、「意味体系=世界像」の成分が矮小化し、「社会的構造物」と「社会的制度」の成分のみが突出したと理解されている)。
このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。
(現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。