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「〈ユーザー〉としての生」とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


「〈ユーザー〉としての生」 【ゆーざーとしてのせい】

 「象徴的に述べるとすれば、現代において、もはや〈生活者〉はいなくなったのである。ここで人間は例外なく〈社会的装置〉の〈ユーザー〉になったのであって、言ってみれば「〈生活者〉としての生」は、ここで「〈ユーザー〉としての生」へと移行したのである。」

上巻 155

 「〈生〉の三契機」の実現を「市場経済」「官僚機構」「情報世界」を核とした〈社会的装置〉に委託することによって成立する〈生〉の形式で、「〈生活者〉としての生」に対置される概念。

 「〈ユーザー〉としての生」が成立すると、自発性や自己決定の機会と幅が拡大し、近代的価値(〈ユーザー〉としての「自由」と「平等」)が実現していくように見える。他方で、〈生〉を成立させている物事つながりや意味の文脈が不可視化され(「〈生〉の不可視化」)、それが個々の人々には、〈生〉を実現することに対するリアリティや、等身大の〈生活世界〉の喪失として感受される(「〈生活世界〉の空洞化」)側面がある。

 また「〈ユーザー〉としての生」を拡大させるためには、〈生の自己完結化〉〈生の脱身体化〉が条件となり、多くの矛盾を孕むことになる。

上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

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