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学びの本質としての探究学習

前回、探究学習とは、自ら課題を発見し、その課題を解決するためのプロセスを体験しながら実社会に役立つような資質・能力を身につける学習のことだといいました。
そのプロセスとは、
課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現→振り返り→次の課題設定→・・・
というサイクルです。

「小学校学習指導要領 総合的な学習の時間編」(2017年)

そうです。探究学習はサイクルになっているのです。
探究とは物事の意義や本質を見きわめようとする思考や行動ですから、終わりはありません。一つの問いに答えを出せば、必ず次の問いが生まれます。いや、探究の過程でどんどん問いは増えていくでしょう。
これは大人になっても続きます。ふつう、なかなか物事の本質を極めることなどありませんから、天才でもない限り、一生探究し続けることでしょう。これが本当の学びだと思います。

ちょっとした疑問は、今どきはスマホでググれば(ChatGPTに質問すれば)、とりあえずの答えは出ます。そして、その答えによって、とりあえずの判断と、とりあえずの行動はできるでしょう。あくまで「とりあえずの」です。

でも、もっと個別具体的で難しい疑問にぶち当たったらどうなるでしょうか。スマホやAIからはヒントはもらえるかもしれませんが、適切な答えは得られないでしょう。そうなると、スマホやAIだけではなく、本を読んでみたり、実際のモノを見に行ったり、実験をしてみたり、人に聞いてみたりと、できる限り様々な方法で情報収集をして、十分考えて、答えを出すでしょう。大人が仕事をする場面では、当たり前にこういう行動をとっています。これが学ぶということだと思います。

このように学ぶことで、大人は仕事の質を高めていきます。
仕事上では、難しい問題に早く的確に答えを出すことが求められるため、過去の類似した経験を活かして問題解決にあたります。仕事をしながら学ぶことで、だんだん仕事が早く的確になり、より複雑で難しい問題に答えられるようになっていくということです。

大人でも仕事が早くて的確な人もいれば、逆に仕事が遅くて間違いが多い人もいます。それは、この探究的な(問題解決的な)学びのスキルとコンピテンシーを体得しているかどうかの差です。学生までの学びが受動的(教えてもらう)だった人が、大人になってもそのまま受動的な学びを続けていたら成長しません。

以前は、日本企業にも余裕がありましたから、新入社員として採用してから研修等で育成をしてくれました。しかし、いまはどこの会社もそんなことをしてくれません。上司や先輩が教えてくれるのを待っている社員なんて会社は求めていないのです。

そうなると、大学や高校で探究学習の態度とスキルを身につけておかなければなりません。
高校においても本格的な探究学習の経験が必要です。それが「総合的な探究の時間」が誕生した背景です。

私は学びの本質は探究だと思います。自ら問いを立てて、自らその問いの答えを求めるのです。
従来型のレクチャースタイルの学びは、基礎知識の習得のためには必要ですが、現代の高校においては、それだけでは不足しているのです。

また、高校で本格的な探究学習をするためには、小学校や中学校でその学び方の基本を学ぶ必要があります。それが「総合的な学習の時間」です。探究には探究のお作法があります。そのことは次回に。

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